2021.12.24 update

Hondaの「進化型CVT金属ベルト用エレメントの新せん断加工法の開発」が、
第37回 素形材産業技術賞「経済産業省製造産業局長賞」を受賞。
独自の製造技術で四輪車の更なる燃費向上に貢献。

 Honda 四輪事業本部 ものづくりセンターと生産統括部は、新たに高度なプレス加工(せん断加工)成型技術の開発することで、従来より動力伝達効率を向上させた進化型CVT(無段変速機)を実現。自動車の更なる燃費向上、CO2削減を達成しました。この新たな「せん断加工法の開発」は、日本の素形材産業の技術水準の進歩向上に著しく貢献した技術として認められ、第37回 素形材産業技術賞において経済産業省製造産業局長賞を受賞しました。

Hondaの「進化型CVT金属ベルト用エレメントの新せん断加工法の開発」が、第37回 素形材産業技術賞「経済産業省製造産業局長賞」を受賞。

 Honda 四輪事業本部 ものづくりセンターと生産統括部は、新たに高度なプレス加工(せん断加工)成型技術の開発することで、従来より動力伝達効率を向上させた進化型CVT(無段変速機)を実現。自動車の更なる燃費向上、CO2削減を達成しました。この新たな「せん断加工法の開発」は、日本の素形材産業の技術水準の進歩向上に著しく貢献した技術として認められ、第37回 素形材産業技術賞において経済産業省製造産業局長賞を受賞しました。

素形材産業の技術水準の進歩向上に著しく貢献した技術の開発者を表彰する「素形材産業技術賞」

 素形材製品とは、金属素材に鋳造や鍛造、プレスなど熱・力を加える加工を施して作られる製品のことを指し、エンジンブロックやギア、バルブなどの自動車用部品をはじめ、エレクトロニクスから航空宇宙産業まで幅広い分野の部品・製品に、この素形材製品が活用されています。

 一般財団法人素形材センターが主催する「素形材産業技術賞」は、優秀な素形材産業技術の開発により日本の素形材産業の技術水準の進歩向上に著しく貢献した技術の開発者を表彰する表彰制度です。去る11月5日には第37回となる2021年度の受賞者が発表され、本田技研工業(株)四輪事業本部 ものづくりセンターの取り組みである「進化型CVT金属ベルト用エレメントの新せん断加工法の開発」が経済産業省製造産業局長賞を受賞。この取り組みを推進した矢ヶ崎徹・隅田聡一朗・申雨根・重松英樹ら6名が表彰されました。

「進化型CVT金属ベルト用エレメントの新せん断加工法の開発」の概要

 本田技研工業(株)四輪事業本部 ものづくりセンターは、Honda四輪製品の研究・開発を担うHondaのR&D部門です。同センターにおいて、四輪製品の燃費向上、CO2排出量削減は恒常的かつ重要なテーマであり、今回の取り組みは、その中でもCVT(無段変速機)の高効率化、つまりエンジンの力をより無駄なく高効率で駆動力に変換する進化型CVTの開発によって、更なる燃費向上、CO2排出量削減を図ろうという取り組みでした。

この進化型CVT開発の障壁となったのが、CVTの中で動力伝達に重要な役割を果たす「金属ベルト」の構成部品である「エレメント」です。進化型CVTを実現するには従来より高精度なエレメントが必要となりましたが、従来の成型(せん断加工)技術では高精度エレメントを成型できないことが分かり、同センターでは独自に新たなせん断加工技術の開発に着手。「スリット溝材・せん断加工」「段付メインパンチによるせん断加工」「ファンネルフロー型せん断加工」の3工法を開発し、高精度エレメントの量産化技術を確立。進化型CVTの開発を成功させました。

> 技術概要(PDF)

「新せん断加工法」開発の成果と今後の展開

 新せん断加工法を用いて開発した進化型CVTの搭載車第1号は、2019年にタイで発表された新型CITYです。この進化型CVTは同車の燃費向上(120g/km→100g/km)とCO2排出量削減に貢献し、同車は低燃費・低公害の小型車製造事業に優遇税制を適用するタイ第2期エコカー政策適用モデルとなりました。
 現在、インドネシアでは10万台分の進化型CVT用金属ベルトを生産しています。また、ファンネルフロー型せん断加工法は日本とインドネシアをあわせて125万台分生産するなど、技術の展開拡大が進んでいます。

 ガソリンエンジン車だけではありません。この新せん断加工法は、今後ますます拡大が進む電動車(ハイブリッド車や電気自動車など)の重要部品であるモーターコアなどの精密プレス加工にも適用が可能であり、電動車の性能向上にも貢献する技術として期待されています。

  • エンジンの動力をタイヤに伝達する重要な役割を果たすCVT(無断変速機)の金属ベルト。赤丸の部分が今回の開発テーマとなった「エレメント」。

    エンジンの動力をタイヤに伝達する重要な役割を果たすCVT(無断変速機)の金属ベルト。赤丸の部分が今回の開発テーマとなった「エレメント」。

  • エレメントを生産する「プレス工程」。今回、新たなせん断加工技術として「スリット溝材・せん断加工」「段付メインパンチによるせん断加工」「ファンネルフロー型せん断加工」の3工法を開発し、高精度エレメントの量産化技術を確立した。

    エレメントを生産する「プレス工程」。今回、新たなせん断加工技術として「スリット溝材・せん断加工」「段付メインパンチによるせん断加工」「ファンネルフロー型せん断加工」の3工法を開発し、高精度エレメントの量産化技術を確立した。

  • プレス工程で製造されたエレメント。現在、インドネシアでは10万台分の進化型CVT用金属ベルトを生産しており、日本でも一部この新せん断加工を用いた金属ベルトを125万台分生産するなど、技術の展開拡大が進んでいる。

    プレス工程で製造されたエレメント。現在、インドネシアでは10万台分の進化型CVT用金属ベルトを生産しており、日本でも一部この新せん断加工を用いた金属ベルトを125万台分生産するなど、技術の展開拡大が進んでいる。

  • 進化型CVTの搭載車第1号となった、2019年発表の新型CITY。同車は低燃費・低公害の小型車製造事業に優遇税制を適用するタイ第2期エコカー政策適用モデルとなった。

    進化型CVTの搭載車第1号となった、2019年発表の新型CITY。同車は低燃費・低公害の小型車製造事業に優遇税制を適用するタイ第2期エコカー政策適用モデルとなった。

  • 本田技研工業株式会社 四輪事業本部 ものづくりセンター パワーユニット統括部 パワーユニット開発二部 矢ヶ崎 徹

    「この度は、経済産業省 製造産業局長賞という大変栄誉ある賞をいただくことができました。製品の進化にとって仕様と製法は両輪であり、仕様は製法によってはじめて生まれることができます。日本は世界で最も金属ベルト式CVTが普及している国であり、その国において、その製品が必要とする製法が進化できたことは歴史的にも意義があることと思います。新たなせん断加工法は金属ベルトのエレメントだけではなく、他の製品にも適用可能であり、幅広い製品の進化に貢献していきたいと考えています]
    本田技研工業株式会社 四輪事業本部 ものづくりセンター パワーユニット統括部 パワーユニット開発二部
    矢ヶ崎 徹

  • 本田技研工業株式会社 四輪事業本部 ものづくりセンター パワーユニット開発統括部 パワーユニット開発二部 隅田 聡一朗

    「この技術は、車両のCO2排出量を低減させる新開発CVTに必要な製造技術です。領域関係なくワンチームで試行錯誤することで、高い壁を乗り越えることが出来ました。CVTを搭載するような既存車両で環境に貢献することは、新興国をはじめ電動化時代を前にして非常に大きな意味を持ちます。今後もHondaの総力で、世の中に貢献できるよう頑張っていきたいと思います」
    本田技研工業株式会社 四輪事業本部 ものづくりセンター パワーユニット開発統括部 パワーユニット開発二部 隅田 聡一朗

  • エンジンの動力をタイヤに伝達する重要な役割を果たすCVT(無断変速機)の金属ベルト。赤丸の部分が今回の開発テーマとなった「エレメント」。
  • エレメントを生産する「プレス工程」。今回、新たなせん断加工技術として「スリット溝材・せん断加工」「段付メインパンチによるせん断加工」「ファンネルフロー型せん断加工」の3工法を開発し、高精度エレメントの量産化技術を確立した。
  • プレス工程で製造されたエレメント。現在、インドネシアでは10万台分の進化型CVT用金属ベルトを生産しており、日本でも一部この新せん断加工を用いた金属ベルトを125万台分生産するなど、技術の展開拡大が進んでいる。
  • 進化型CVTの搭載車第1号となった、2019年発表の新型CITY。同車は低燃費・低公害の小型車製造事業に優遇税制を適用するタイ第2期エコカー政策適用モデルとなった。
  • 本田技研工業株式会社 四輪事業本部 ものづくりセンター パワーユニット統括部 パワーユニット開発二部 矢ヶ崎 徹
  • 本田技研工業株式会社 四輪事業本部 ものづくりセンター パワーユニット開発統括部 パワーユニット開発二部 隅田 聡一朗