生産現場でも育休は取得できる
早めの相談と提案がカギ
製作所としての難しさがある中、取得の前例がない職場で、どのように準備を進めたのか? 生産現場におけるリアルな声をご紹介します。
四輪事業本部 生産統括部 鈴鹿製作所 完成車第一工場 合成樹脂モジュール スタッフエンジニア※インタビュー当時
バンパー塗装ユニットで、品質リーダーとして、四輪車のバンパー塗装における不具合の分析や対策を行う
家族構成は、妻と子供3人(8歳と6歳と2歳)
■育休取得タイミング/時期
3人目が生まれた後の1ヶ月/2020年6月
まず今のお仕事について、簡単に教えてください。
葉坂さん:育休前はパンパー塗装のチームリーダーをしていました。復職後の職場は一緒ですが、品質のリーダーという立場で、品質に特化した仕事をしています。四輪車のバンパー塗装における不具合の分析や対策を行っています。具体的な不具合として、一番多いのはゴミですね。塗装した後にゴミが付いたときに、「じゃあそのゴミってどこで付いてるの?」や「そのゴミってなんなの?」という分析をし、施策を打っています。チームリーダーが2人いて、その内、製造ラインの稼働や人の配置などをみています。
育休期間を1ヶ月にした理由を教えてください。
葉坂さん:1ヶ月にしたのは、極力職場に迷惑をかけたくない思いがあり、また、妻と赤ちゃんの体調が安定するまでの期間として、家庭と仕事のバランスを考え1ヶ月に決めました。
製作所という職場の特徴から、長期の取得は難しいのでしょうか?
葉坂さん:うーん……難しいところはあると思います。1人欠けると代わりの人が必要になるので。私のときは、1ヶ月間、マイナス1名のままでメンバーが頑張ってくれましたが、例えばそれが半年、1年という期間となると、マイナス1名を続けるわけにはいきませんから、その難しさはあるのかなと思います。
葉坂さんは育休を取る意思はもともとあったのですか?
葉坂さん:ありました。出産したばかりで、上の子も含めて家事も育児も1人で全部するのは無理だと思い、3人目は育休を取ろうと考えてました。妻から「取ってほしい」という希望もあり取得しました。
当時は職場で他に取っている方はいましたか? また職場での育休への温度感はどうだったでしょうか?
葉坂さん:前例がなかったので、取れるかどうかを一度上司に相談しました。即答で「いいよ」と言ってくれました。普段から一緒にいる上司なので、フランクに話はできたので、代わりはこの人が良いなど、自分が抜けたときのプランを提案する相談の仕方をしました。
取っていいかという感情的なものよりも、抜けたときの心配に対する不安の方が大きかったですか? また、いつごろ相談したのですか?
葉坂さん:相談はかなり早めに、半年くらい前にはしたと思います。家庭のことも考えると、取らないといけない状況だったので、取っていいかの相談というより、取らせてくださいというスタンスで相談しました。とはいえ前例がなかったので、自分の思いだけで取りたいと言うのではなく、抜けている間どうする?というところまで、しっかり考えた上で相談することを心掛けました。単に「育休は権利だから取りたいです」と言うのではなく、責任感と言いますか、抜けたときの対策を事前に考えた上で相談しました。私自身もチームリーダーという、どちらかというとマネジメントの立場でもあり、職場のことをだいぶ考えました。
逆に、半年くらい前から育休の相談をすれば、なんとかなるということですか?
葉坂さん:なんとかするしかないのですが(笑)。いきなり言われたらやっぱり厳しいと思います。来月から6ヶ月育休取りますって言われても、替えが効かなくて困ってしまいます。あらかじめ半年前などに、ここから取りたいですよという話があれば、早めに打ち明けることが大事です。その半年間で、代替の人を育てるとか検討できます。準備期間があり、人さえいれば、引継ぎはできると思います。
復職後、1ヶ月間休んだことに対して周りの反応いかがでしたか?
葉坂さん:リアルな状況はわかりませんが、迷惑をかけたところは少なからずある中で、大きなトラブルも起こさずに、生産がつながったことはよかったと思います。私の代わりを務めていただいた方から、貴重な経験ができて良かったよという言葉もかけてもらって、すごいありがたかったです。中には「育休は1ヶ月でいいの?」と言ってくれる方もいて、そんな言葉をかけてもらえるとは考えてなかったので、嬉しかったです。
育休中ご家族と過ごす中で仕事のことが気になったりしましたか?
葉坂さん:少なからず気にはなりました。育休が半分経過した頃、上司が「1回ちょっとお茶でも飲むか」と会いに来てくれて、「今こんな感じだよ」とか「戻ってきたらこうなりそうだ」という話をしてくれました。それで職場の状況がわかりましたし、戻ってからもスムーズに復職できたので、声をかけてくれたことは非常にありがたかったですね。

上に幼稚園児2人がいたため、育休取得は必須でした
改めて今回、3番目のお子さんで初めて育休取得されましたが、なぜ、第3子で育休を取ったのでしょうか?
葉坂さん:上の2人がすでに幼稚園に通っていましたので、送り迎えも含めて、出産したばかりの妻1人で、子ども3人を見るのは難しいことや、3子出産のときは上の子たちが年長さんと年少さんで2人とも幼稚園に通っていましたので、2人の送り迎えも必要なので、育休を取得しました。
育休期間を生まれた後約2週間後から1ヶ月間にしたのはどんな理由でしょう? 6月ということは夏休み前ですよね。
葉坂さん:夏休みの間ではなく、幼稚園へ送迎の必要があるときに育休を取ったほうが良いという判断でした。上の子2人の送迎を妻が赤ちゃんも連れて……というのは、さすがにそれは無理だろうと思って、育休を取りました。
育休中、お子さんたちが幼稚園行っている間はどのように過ごされたんですか?
葉坂さん:食料品の買い出しや料理、家事全般ですね。幼稚園へ9時に送っていって、それから買い物して、昼ごはん作って、14時には迎えにいかなければいけないので、もうあっという間でしたね。
幼稚園短いですもんね。帰ってきたら上のお子さんたちと過ごしてましたか?
葉坂さん:そうです。ただ、幼稚園からまっすぐ帰ってしまうと上の子が騒いで妻も赤ちゃんも大変だろうと思って、公園で上の子2人と遊んだりして時間をつぶしてから帰ってましたね。外で元気に遊んでもらった方が妻も赤ちゃんもゆっくり休めるだろうと思って。
葉坂さんと上の子たちが外で遊んでいる間、パートナーは一番下のお子さんのケアに専念、身体を休めることに専念すると。もともと家事は料理などもされていたのですか?
葉坂さん:いや、あまりやっていなかったです。1人暮らしのときに料理はしていたのであまり苦にはならなかったのですが、普段はやっていなかったので、育休期間中は頑張りました。妻と話し合って上の子の面倒と家事は私がやる、下の子の面倒は妻が見る、という形で分担しました。
お2人で話し合って分担したんですね。お仕事に専念されていた時と比べて、上の子2人を見て家事もワンオペでされたのはいかがでしたか?
葉坂さん:新しい経験ばかりで楽しんでやれましたね。料理も洗濯もそんなに苦にはならなかったです。幼稚園のお迎えは、たまに行くと子供も喜ぶんですけど、毎日だと「ママがいい」って言われたりとかはありましたが(笑)、幼稚園で過ごしてる姿を見られるのは新鮮で、育休を取って良かったなと思いました。

個人のためにも、会社のためにも、先入観なく育休を
育休取った後にお仕事に対する意識の変化は何かありましたか?
葉坂さん:やっぱり極力無駄な時間を減らして早く仕事を終わらせるように心掛けています。育休前も子どもが2人いたので帰れるときは早く帰れるようにしてましたが、その意識が強まりました。家では食事を作るのも時間がかかりますし、買い物も行かなきゃいけないので、今はテイクアウトも活用しています。また、今後、育休取得が当たり前となる時代に先駆けて経験できたことで、部下から聞かれた時も対応できます。これは取得して良かったことの一つですね。
現在、男性育休取得の推進を、Hondaの中でもすごく力を入れていますが、必要なことだと思いますか? また取得することでプラスの影響があると思いますか?
葉坂さん:必要だと思います。もし育休という制度がなかったら、私も3人目の子どもを持つという選択をしていなかったかも知れないですし、育休があることによって、安心して出産できるとか、子育てできる人がいるはずなので、いい制度だと思います。
今、個人にとってプラスなことをお話しいただきましたが、職場や会社全体にとって男性育休取得を推進していくことは、製作所ならではの難しさがあると思います。それでも推進していくことの意義はあると思いますか?
葉坂さん:製造現場だから育休を取れないとか、チームリーダーだから取れないとか、男性だから取れないってなってしまうと、今後この職場、この会社で働きたいという人が、もしかしたら減ってしまうかもしれないです。将来を考えたときに、育休を推進する取り組みは必要だと思います。今後、部下やチームメンバーが育休を取りたいと言ったときには、本当にウェルカムですし、全面でサポートしていきます。
これから取得される方へのアドバイスをお願いします
葉坂さん:育休を取得して良かったと思っています。男性だから取れないとか、今の立場だと取れないという先入観をなくして、育休について考えてもらえたらと思います。



※インタビュー当時
最近、男性育児参画がニュースなどで取り上げられる中、Hondaでもハンドブックなどを通じ、会社として促進する機運があり、私自身に戸惑いや不安はありませんでした。本人へのまわりから思われ方に対し、どうフォローしていくかは、少し悩みました。幸い、現場の皆さんの理解があり、何も問題はありませんでした。
NGを出す理由はなく、当時のアシスタントチームリーダーがコミュニケーション能力に優れ、チームリーダーの代行としてすぐに交替勤務が可能と考え、また、期間的に1ヶ月だったため、私もフォローできると判断しました。
部門で初めての育休取得者だったこともあり、何か悩んでいないか、顔を見て様子をうかがいたく、また、賞与の時期でもあり、会って話をしました。夏場で、真っ黒に日焼けした本人を見て安心した記憶があります。また、葉坂さんは、当時、チームリーダーをしていたため、復帰後、すぐに業務を行えるように状況の共有もしました。
早めの打ち上げはもちろんのこと、マネジメントが育児をどれだけ理解してくれているか?がとても重要です。「仕事が一番!」と考える方もおり、今のままでは、育休を取得出来ても、それ以上の理解を得ることが難しいのではと思います。マネジメントが、育児についての知見を深め、部下の両立に対し、理解が必要です。

※インタビュー当時
要員は、平常勤務の方を交替勤務に変更し、葉坂さんの代行を立て、現場を回しました。
その中で、葉坂さんの業務は(葉坂さんの)チームの方にも協力してもらいました。
育児は、奥さん一人では大変ですから、葉坂さんが育休を取られたことはとても良かったです。
葉坂さんが不在の間、トラブルなく安全に業務が推進できるよう、周りとのコミュニケーションを意識しました。
今回、葉坂さんのチームの方とも良い関係を築け、チーム力が向上したことは、貴重な経験となりました。
葉坂さんのような育休の取得に賛成しています。
相談はかなり早めにしました