上司力研修
成果発表会 2018
ダイバーシティ時代の上司のあり方を考え、実践的に学ぶ上司力研修。
実施初年度となる2018年度の受講者が集まり、
好事例の共有を目的とした成果発表会を実施した。
多様なメンバーがやりがいを感じ、
主体的に動ける組織をつくる
自身のマネジメント課題を明確化。
現場でメンバーとともに実践する
上司力研修の特徴は、学びと実践がセットになっている点。講演でダイバーシティマネジメントのヒントや気づきを得て、研修と3回のゼミで「上司のあり方」「チームビジョン」「組織デザイン」「現場を応援する仕掛け」のテーマを現場に持ち帰り、受講者がメンバーを巻き込み実践してきた。
成果発表会は、受講者がどのような状況下で取り組み、生じた葛藤や障壁をどう乗り切ったのかを共有することで、各自のマネジメントに活かしてもらうための場である。
成果発表会
「ベテラン」と「若手」。
年齢構成の二極化に悩むリーダー
生産本部 埼玉製作所生産業務部エンジン技術課
課長 大杉晃広
年齢構成的に若手とベテランが二極化し、「若手は活力がない」「ベテランは動かない」など、互いのスキルを決めつけている傾向。また仕事の兼務が多く、個々人の業務内容も属人化して見えにくくなっており、業務のスピード感にも大きな課題がありました。
動機付けることで
3人のグループリーダーが主体的に
研修で得たやり方を3人のグループリーダーにレクチャーし議論してもらいました。自分が考えた内容とは違う新しいキーワードも飛び出し、最終的に骨太のビジョンを描くことができたように思います。部下たちと組織課題やビジョンを話すことで、他責的な会話ではなく、前向きで主体的な議論ができるようになりました。
現場を応援する仕掛けとして現在取り組んでいる「スキルマップ」では、業務の流れと必要なスキル、工数を時系列に可視化すること、そして個人のスキルについて、グループリーダー主導で2way(面談)を実施し項目・段階別で自己評価、客観評価、目標値をマップ化。業務の最適化と、個人のスキルアップへの動機付けに手応えを感じています。
若手の新鮮なアイデアとベテランの豊富なノウハウが融合した組織づくりを目指し、マネジメントして部下を応援し続けたいと思っています。
職場の半数が50代以上。
率いるは海外かぶれ?のリーダー
生産本部 埼玉製作所エンジン工場パワートレイン品質課
課長 長濵雅弘
4年半のアメリカ駐在から帰任してすぐ課長職に。人種も価値観も多様なアメリカの現場から、50代以上が54%、70人中女性は2人だけの現場への異動です。私の現場では、「業務の多様化への対応」「ベテラン層の活躍」「コミュニケーションの活性化」がマネジメント課題でした。
使える手立てを総動員!
やってみる!チャレンジングな風土
50~65歳が圧倒的に多い現場ですが、まずは若手主任たちと課題に取り組みました。研修時に私が思いの限りを詰め込んだ「チームビジョン」「組織デザイン」を添削してもらう中で、個人が感じている自分への評価や会社への不満、Honda社員でいることの誇りなど、普段聞くことのできなかった思いや新しい一面を発見することができました。
また、「社内チャレンジ公募」を利用して多様なキャリアをもつ人材を呼び込み、組織のカンフル剤としての役目を担ってもらっています。
その他、スキルアップの機会が減っているベテラン層を対象にした研修の実施や、2way(面談)で周りの人から聞いた良いところをフィードバックするなど、成功も失敗もありますが、使えそうな手段はどんどん使って、とにかくやってみています。いろんなトライをすることで、現場としても意見が出やすい雰囲気になったように思います。
先輩の見よう見まねでやってきた
マネジメントスタイルに疑問?!
人事・コーポレートガバナンス本部 人事部給与厚生課
課長 松山哲也
マネジメントする立場になっていくつかの現場を任されてきました。その中で中国駐在時のマネジメントには悔いが残っています。いろんな理由をつけて動かない部下を育てるより、自分でやってしまった方が早いとプレイヤー化。結果、人材育成できないまま帰国することになりました。
マネジメント層の本懐は
やっぱり人材育成
今回の研修は、これまで先輩の見よう見まねでやってきた自分のマネジメントスタイルを振り返る絶好の機会となりました。部下とのコミュニケーションが一部の相手に固定化していたという反省から、まず部下個々人の深層把握のために課内の31人全員と2way(面談)を実施。全員と話し終えた後、それまでいかに表層的にしか部下のことを見れていなかったか、深層を理解できていなかったかに気づき…反省です。部下とのコミュニケーションを重視し、戦略的なジョブローテーション計画の立案と実行に活かしています。
人材育成が、私の仕事であると再定義。部下の心に寄り添いながら、ひとりひとり丁寧にスキル・持ち味・本人の意向等を確認したうえで、部下のやる気を引き出す「目的共有」×「有能感」×「自己統制」×「上司支援」を意識したマネジメントに徹していきたいと思っています。
自分でやってしまいがちなリーダーと
モチベーションの上がらない部下
(株)本田技術研究所 オートモービルセンター統合制御開発室 第1ブロック 主任研究員 田上裕
チーム内のモチベーションが不足し、十分に活躍できていないメンバーがいることに懸念を抱いていました。メンバー間のコミュニケーション不足や管理職と現場の意識レベルのギャップが埋まらぬまま、上司である自分があらゆる場面で「自分ならこうする!」を提示してリードしなくてはならないと思っていました。
やる気がないと思っていた、
でも実は、やる気に満ちていた!
グループリーダー1人と入社2~3年目の若手2人に「チームビジョン」の作成を任せました。ゴールの見えない議論が続き、つい口を出したくなるのを堪えるのは本当につらかった…。しかし、部下に任せることで自分が考えた案とはまったく別の良案が出た時には、「聴く」「待つ」ことで得られる「大きな価値」を実感することができました。
チームメンバーひとりひとりの良いところを探し、キャッチフレーズをつけることにしました。でも、すぐに良いところが浮かばない人物も・・・。「無駄な検証会やりたくない」「残業いやです」といった発言をしてきた部下でした。しかし、良いところを探そうと強く意識することで、ネガティブに感じていたその発言は、効率性を意識するがゆえの裏返しだったことが見えてきました。実際は、向上心が高くITが得意な人。そう認められるようになってから、積極的な提案や、他メンバーとのコミュニケーションが増えるなど、本人自身変わっていくのを目の当たりにしました。
研修終了後に異動。新天地での
ダイバーシティマネジメント実践を決意
(株)本田技術研究所 HRD Sakura 第2ブロック
マネージャー 矢野修二郎
今の部署には研修終了後まもなくの異動でした。前の部署でメンバーと「チームビジョン」を議論し策定したり、「現場を応援する仕掛け」を立案・実行したりする中で、特にビジョンの共有は“やってもやりすぎることはない”と思えるほど、大切さを実感。新しい部署でも、やってみよう!と取り組みました。
チームビジョンをつくってみる。
プロセスから共有することの意義
着任前に「チームビジョン」の共有を先行して行うことにしました。まとまった時間をとることが難しかったので、研修で学んだ内容をカスタマイズし、例えば「チームビジョン」を「使命」と言い換え短時間でも伝わる言葉にしたり、用意したワークシートにいろんな企業の場合で記入した事例を作り、参加メンバーにこれからやろうとしていることのイメージを伝えました。
一緒に議論を進めることで、認識の差が出やすい細かいニュアンス部分まで認識の揃った、みんなが腹落ちしたビジョンになりました。作ったビジョンはもちろん大事ですが、ビジョンを導くプロセスを共有することがとても大事でした。
「上司としてのあり方」を見直し、「相手の価値観を尊重する」「真心で接する」「工夫とコミュニケーションを惜しまない」という私のマネジメントの根本原則を確立。今後のマネジメントに役立てていきたいです。
グループディスカッション
無意識の思い込みが蔓延!?
ダイバーシティマネジメントの阻害要因
成果発表後、「Hondaの人材多様性の進化・拡大における課題」をテーマでグループディスカッションを実施。開始と同時に、どのテーブルでも活発なやりとりが始まった。勤務地も業務内容も部下も異なる参加者であっても、同じマネジメントを担う立場。参加者が共通して抱く危機感があった。
「Hondaには、無意識のうちの思い込みや偏見が蔓延している」
無意識の偏見を完全に拭い去ることは難しいが、それぞれが自分自身に無意識の偏見があることを認めることで、コントロールすることはできる。多様なものを決めつけや一様なものの見方で片付けてはいけない、ダイバーシティを進化させるうえで、ありのままを受容することが大切であるという意識の高まりが会場全体から立ち上っていた。
今回の上司力研修参加者は、ダイバーシティマネジメント施策の第1期メンバー。
各職場の部下たちにはもちろん、ベンチマークマネジメントとして全社への波及が期待される。
ディスカッション後、「明日から実践すること」と題されたシートには、
決意とも言える、各自の強い意気込みが綴られていた。
参加者のコメント
フォトギャラリー
人事部多様性推進室から
普通のマネジメント研修とどう違うの?そんな質問が飛び出す中、「多様なメンバーの個性や強みを活かした組織づくり」を職場で実践してもらいました。研修進行と共に受講生の手応えが感じられ、成果発表会は自分たちが周囲に影響力を発揮していく気概に溢れていました。ダイバーシティマネジメントの伝道師としての活躍を期待しています。