カーボンニュートラルの実現
燃料電池アプリケーション拡大技術 燃料電池定置発電機
Hondaは、水素を電気とともに有望なエネルギーキャリアとして位置づけています。
Hondaは今後、コア技術である燃料電池システムの搭載・適用先を、自社の燃料電池自動車(FCEV)だけでなく、社内外のさまざまなアプリケーションに拡大していくことで、社会のカーボンニュートラル化を促進し、水素需要の喚起に貢献していきます。
近年、クラウドやビッグデータ活用の広がりにより、データセンターの必要電力が急伸し、BCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)の観点でも非常用電源へのニーズが高まっています。電源領域のカーボンニュートラル化に貢献するために、2024年7月に日本で発売されたCR-V e:FCEVの燃料電池システムに改良を加えた燃料電池モジュールを搭載したクリーンで静かな発電機の研究・開発に取り組んでいます。
自動車用燃料電池を転用した定置型電源ソリューション

カーボンニュートラルの実現に向けて、電源分野における脱炭素化は喫緊の課題です。特に、データセンター向けの非常用電源では、現在も多くがディーゼル発電機に依存しており、温室効果ガスの排出が懸念されています。
燃料電池は、水素と酸素の化学反応によって電力を生成するため、CO2やNOxといった排気ガスを排出せず、再生可能エネルギーなどによって生み出された水素を使用する場合は、クリーンで静かな電力供給が可能です。
一方で、燃料電池発電機を普及していくためには、燃料電池は起動時間の短縮化やシステムの小型化といった課題に取り組んでいかなくてはなりません。
高効率パッケージ技術による省スペース化

限られた車両スペースに効率的にパッケージングする技術を磨いてきたHondaは、その技術を燃料電池定置電源にも活用しています。
燃料電池や電源制御装置、冷却システムなどをすべて輸送用コンテナに収納し、優れた省スペース設計を実現しました。これにより、敷地が限られた場所でも柔軟な設置が可能です。
また、4基の燃料電池を並列接続し、250kWの出力を持つモジュール化された電源ユニットにしています。このユニットを複数連結することで、スケーラブルかつ信頼性の高い電力供給が可能になります。
FCEVエネルギーマネジメント技術の応用による起動時間の短時間化

CR-V e:FCEVのエネルギーマネジメント技術を応用し、4基の燃料電池モジュールとバッテリの協調制御を実現しています。
ベース出力や負荷変動が緩い時は燃料電池の電力を主に使用し、急激な負荷変動にはバッテリからの電力で補えるようエネルギーマネジメントすることで、負荷変動に対する耐性を高めています。
また、燃料電池は立ち上がり時間が比較的長いという問題があります。停電発生時にはまずバッテリで急激な電力需要に対応し、その間に燃料電池を立ち上げることで、起動時間(停電から電圧確立までの時間)を短縮することができます。
これにより、燃料電池発電機であっても起動時間10秒以内を実現し、ディーゼル発電機と同等の応答性を持つ非常用電源として機能することができます。
燃料電池のさらなる進化が定置電源の普及を加速する
現在、ディーゼル発電が主流となっている非常用定置電源を、温室効果ガスが発生しないクリーンなエネルギー源へと置き換える需要は、今後急速に高まることが予想されます。
燃料電池システムの高効率化、低コスト化、長寿命化が進むことで、ディーゼル発電機のTCO(Total Cost of Ownership:総保有コスト)に近づき、燃料電池定置発電機の普及が加速することが見込まれます。
さらに、非常用発電機の置き換えに留まらず、常用発電機としての活用も広がることで、不安定な再生可能エネルギーとの組み合わせによるクリーンかつ安定した電力供給が可能となり、電力供給の平準化にも寄与することが見込まれます。