CRF Stories

2002CRF450R

21世紀の4ストローク・モトクロッサーとして
誕生したCRF

1990年代後期は、レーシングマシンも環境保全に配慮し、将来的には2ストロークエンジンに比べ排出ガスの有害物質が少ない4ストロークエンジンへの転換が求められるようになりました。
一方でHondaの2ストローク・モトクロッサーは、1972年に市販したエルシノアCR250Mから約40年近くにわたり、多くのモトクロスファンに愛用されるとともに、世界の主要レースで多くのタイトルを獲得してきました。
こうした輝かしい2ストロークの歴史を踏まえつつも、新たな時代の要請に応えるべく、Hondaは、2ストローク・モトクロッサーと同等のポテンシャルのある4ストローク・モトクロッサーの開発に着手しました。4ストロークエンジンの開発は、ゼロベースからの挑戦でした。

21世紀の新しい時代を見据えた新開発エンジンは、コンパクトかつ軽量、そして高出力を両立させた、水冷4ストローク・OHC・4バルブ単気筒449cm³に決定しました。

ポテンシャルを確認するため日本で世界デビュー

開発チームは、モトクロスレースにおいてライバル車と比較しながらマシンのポテンシャルを測るため、全日本モトクロス選手権の最高峰クラスへの出場を決めました。
出場レースは、2000年10月に埼玉県桶川市にあるホンダエアポートライダーズパークで開催される、MFJ全日本モトクロス選手権最終戦の日本グランプリです。
クラスは、激戦が予想される国際A級の250ccで、2ストローク250ccと4ストローク450cc以下の混走が認められたレースです。
ライダーは、1998年のモトクロス世界選手権250ccクラスでチャンピオンを獲得したフランス人のセバスチャン・トーテリ選手。2000年シーズンは、CR250Rでアメリカのモトクロスレースに参戦し、好成績を挙げているトップライダーです。
急遽来日して、Hondaの4ストローク・モトクロッサーを世界初デビューさせることになったのです。
セバスチャン・トーテリ選手は、少ないテスト走行にもかかわらず、ヒート1で優勝。
ヒート2は、スタート直後のクラッシュに巻き込まれて、最後尾からのスタートになったものの、2位でゴールし総合優勝を獲得しました。
日本のトップライダーや海外で活躍している招待選手が多く出場する中、鮮烈な世界デビューを果たしたのです。
マシン名や排気量の詳細、そして市販化の計画は非公表でしたが、Hondaの4ストローク・モトクロッサーの完成度の高さから、市販を待ち望む声が広がりました。
開発チームの決断により実施された実戦でのポテンシャル確認は、成功とともにモトクロスファンの期待を高めることにも寄与したのです。

セバスチャン・トーテリ選手と開発中の4ストローク・モトクロッサー

手前のゼッケン2番は、TEAM HRCの熱田孝高(あつた よしたか)選手とワークスマシンRC250M。
奥がセバスチャン・トーテリ選手と4ストローク・モトクロッサー。
Hondaの4ストロークと2ストロークの戦いが繰り広げられました。

再び実戦でテストを重ねたCRF450R

2001年は、全日本モトクロス選手権の国際A級250ccクラスに、TEAM HRCから小田切一剛(おだぎり かずよし)選手が、開発中の4ストローク・モトクロッサーでフル参戦。
マシンの名称は、CRF450Rに決定しました。
市販化に向けて、さらに信頼性を向上させるために、厳しいレースでノウハウを吸収していきました。
小田切選手は、CRF450Rのデビューシーズンで、通算3ヒート優勝し、年間ランキングは2位を獲得。マシンの高いポテンシャルを証明しました。
ランキング1位は、同じTEAM HRCの熱田孝高選手で、マシンはワークス仕様で2ストロークのRC250Mでした。

2001年、待望のCRF450Rが発売

2001年11月、ついに日本においてCRF450Rが発売されました。
モトクロスレースで培ったノウハウを反映した新世代の4ストローク・モトクロッサーの名称は、2ストロークのモトクロッサー「CR」に4(Four)ストロークのFを付けたCRFと命名しました。

2001年 CRF450R

エンジン

CRF450Rに搭載した新開発エンジンは、水冷・4ストローク・OHC・4バルブ単気筒449cm³。最高出力は、41kW(55PS)/9,000rpmで、ライバルとなるCR250Rの、43.4kW(59PS)/8,500rpmと同等レベルを実現しました。

CRF450Rのエンジン外観

バルブ駆動システムには、Honda独自技術のユニカムバルブトレインを採用しました。
このシステムは、1本のカムシャフトにより吸気バルブを直押しで作動。排気バルブをロッカーアームで作動させることで、一般的なOHCに比べて、高回転・高出力化が可能となり、シリンダーヘッドのコンパクト化にも寄与します。

エンジン透視図

ユニカムバルブトレイン

排気系は、エキゾーストパイプに軽量なチタン素材を採用。アルミ製のサイレンサーは、グラスウールの交換が可能な構造としました。

チタン製エキゾーストパイプ

アルミ製サイレンサー

冷却系は、放熱効果の高いデュアルラジエーターを採用しました。

左右に分割されたデュアルラジエーター

車体

フレームは、2002年型のCR250Rで採用されたセミダブルクレードルのツインチューブをベースとし、CRF450R用に最適化。
フロントサスペンションは、CR250R用をCRF450R用のセッティングを施しています。
リアサスペンションは、CRF450R専用のスイングアームにプロリンクを組み合わせた信頼の構成としています。

CRF450Rの車体構成

CRF450Rは、2ストロークのCR250Rとともに、2002年シーズンのモトクロスレースで多くのライダーに支持されました。
CRF450Rの誕生によって、Hondaのモトクロッサーは2ストロークから4ストロークへの移行が積極的に行われることになります。

2001年 CRF450R

2001年 CR250R