全社戦略
社会的価値を追求することで経済的価値を拡大し、
企業としての新たな成長軌道を描いていきます。
取締役
代表執行役副社長
最高執行責任者
青山 真二
取締役
代表執行役副社長
最高執行責任者
青山 真二
Hondaは、「Transcend」「Augment」の2つの提供価値を「環境負荷ゼロ」かつ「絶対安全」で実現することで、電動化時代においても自由な移動の喜びを創造し、「意志を持って動き出そうとしている世界中のすべての人を支えるパワー」となる存在であり続けたいと考えています。
環境・安全目標の達成はモビリティカンパニーの責務であると捉えていますが、「環境・安全に対する取り組みにより経済的価値を犠牲にする」というトレードオフの考え方ではなく、「社会的価値を追求することで経済的価値を拡大し、企業としての新たな成長軌道を描いていく」というトレードオンの思想のもと、取り組みを強化しています。
私たちの目指す「自由な移動の喜び」を創造していくためには、全社として重点的に取り組むべき課題と目標を明確に定め、 Hondaで働く一人ひとりがそれを道標として、同じ方向に向かって全力で進んでいくことが必要です。この観点から、グローバルブランドスローガンの再定義を通して明確化した私たちの「めざす姿」や「提供価値」、またHondaを取り巻く環境の急激な変化などを踏まえ、これまでマテリアリティマトリックスをベースに定めてきた最重要課題を改めて整理することとしました。今後特に注力していく重要テーマとマテリアリティ、それに紐付く目標を改めて整理することで、施策の実効性とスピードのさらなる向上を図っていきます。
新たな重要テーマは、持続可能性の観点から網羅的に抽出した社会課題をHondaの目指す方向性に照らし、優先順位を付けた上で選定しています。具体的には、従来より経営の重要テーマとして掲げてきた「環境」と「安全」に加え、Hondaの成長の原動力である「人」と「技術」、またすべての企業活動の総和ともいえる「ブランド」の5つの非財務領域を重要テーマとして選定し、財務戦略と連携させることで社会的価値・経済的価値の創出を実現していきます。さらに、非財務指標においては各テーマにおいて取り組むべきマテリアリティを定義することで、「めざす姿」に向けて注力していく領域を明確化しています。
また、これらのマテリアリティを達成していくためには、変化が激しく不確実性が高い環境下においても足元の状況変化に捉われすぎることなく、中長期的な視点で戦略策定と資源配分を実行していく必要があります。この観点から、これまで3年ごとに定めてきた中期目標を廃止し、5年・10年スパンでの達成目標を設定することとしました。2025年、2030年のそれぞれのフェーズで成し遂げるべきマイルストーンをKGI・KPIとして明確に定め、経営メンバーが施策の進捗を定期的にモニタリングすることで経営ガバナンスの強化を図るとともに、マテリアリティの達成に向けて実効性のある施策をスピーディーに展開していきます。
SDGsの目標、GRIスタンダード、SASBなどの開示基準、DJSIなど外部評価の設問を基に社会課題を網羅的に抽出
STEP 1で抽出した社会課題を「自由な移動の喜びの創造」というHondaが目指す方向性に照らして優先的に取り組む領域を特定し、重要テーマを決定
それぞれの重要テーマにおいて特に注力していくべき課題をマテリアリティとして定義し、その達成度を測る指標と目標値を設定
マテリアリティごとに設定した目標値の達成に向けた具体的な施策、取り組みを策定
重要テーマ | マテリアリティ | 管理指標 (KGI※1) |
目標値 | 考え方・取り組みの方向性 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
2025年 | 2030年 | ||||||
財務 指標 |
経済的価値の向上 | ・資本効率の向上 ・キャッシュフローの持続的な成長 |
ROIC | 全社 | ー | 10%以上 | これまで公表してきた2025年ROS目標に対して、2030年ROIC目標を設定し、事業体質の強化によりキャッシュ創出力を高めるとともに、変革に向けた戦略的な資源投入と株主還元の最適なバランスを保ち、持続的な成長と資本効率の向上を目指します。 |
ROS | 7%以上 | ー | |||||
非財務 指標 |
ブランド価値の 向上 |
・一貫したブランドマネジメントの強化 | グローバルブランド価値 (インターブランド社) |
全社 | (非公開) | 質の高い商品・サービスを通じてHondaの目指すブランド価値を体現していくことはもとより、その他のあらゆる企業活動においても一貫したブランドマネジメントを徹底することで、ブランド価値の向上を目指します。 | |
環境負荷ゼロ 社会の実現 |
・気候変動問題への対応 ・エネルギー問題への対応 ・資源の効率利用 ・生物多様性の保全 |
企業活動CO2削減率 | 全社 | ー | 46% | グローバルで存在を期待される企業であり続けるために、地球環境の保全に徹底的に取り組んでいきます。 「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」の3つを柱として掲げ、製品の電動化等を通じて2050年にライフサイクルでの地球環境負荷ゼロを目指します。 |
|
製品CO2総量 | 全社事業 | (非公開) | |||||
廃棄物総量削減率 | 全社 (BAU※2比) |
ー | 14.5% | ||||
取水総量削減率 | ー | 14.5% | |||||
交通事故ゼロ 社会の実現 |
・人の意思をとらえ補完・拡張する技術の開発 ・安全教育・啓発活動 ・交通エコシステムの構築 |
日米四輪関与事故死者数 | 全社 | (非公開) | モビリティ社会で暮らすすべての人の安全を追求するという思想のもと、先進安全技術の進化や安全教育の拡大等を通じ、2050年に全世界でHondaの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロの実現を目指します。 | ||
人的資本 経営の進化 |
・従業員の内発的動機の喚起と多様な個の融合 ・事業上の重点領域の人材の量的・質的充足 |
従業員エンゲージメントスコア | 全社 | 50%以上 | 60%以上 | 「夢」を原動力として挑戦する多様な個の融合がHondaの目指す提供価値の創造につながるという考えのもと、さまざまな取り組みを推進します。 また、すべての企業活動において人権侵害が生じることのないよう取り組んでいきます。 |
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(肯定回答率) | |||||||
独創的な技術の創出 | ・注力領域における競争優位性の確立 | 知財創出力 | 全社 | (非公開) | モビリティの進化に向けて当面注力していく5つのキーファクターを定め、技術開発を推進します。 |
重要テーマの一つである「独創的技術の創出」においては、当面注力すべき技術領域を以下の5つのキーファクターとして定義しています。
・パワーユニットのカーボンニュートラル化(電動化/水素)
・リソースサーキュレーション
・エネルギーマネジメントシステム
・AD / ADAS※1
・IoT /コネクテッド
それぞれの領域において先進的かつ独創的な技術を追求することでモビリティの付加価値を高めるとともに、各領域で生み出された技術のシナジーによって、お客様一人ひとりのモビリティライフに寄り添った継続的な価値の提供を目指します※2。
世界的な環境意識の高まりやパワーユニットの電動化、ソフトウェアの進化などのさまざまな変化にともなって、モビリティを取り巻くバリューチェーンのあり様は大きく変化しています。特にEVにおいては、バッテリーの安定的な生産・調達に加え、原材料となる重要鉱物の確保、コストの削減、さらなる次世代電池の技術開発など、従来にないさまざまな課題に迅速に取り組んでいくことが必要となります。また、サステナブルマテリアルの活用をはじめとしたリソースサーキュレーションの取り組みは、重要鉱物の安定的確保のみならずCO2排出量の削減にもつながることから、今後その重要性がいっそう高まっていくものと認識しています。
このように取り巻くビジネス環境が急激に多様化、複雑化する時代においては、Honda自前の技術やノウハウを中核に置きながらも、Hondaとは異なる強みを有する他企業との協業による強固なバリューチェーンを形成することでシナジー効果を生み出し、新たな価値創造に向けた取り組みをさらに加速していく必要があると考えています。
すでにバッテリー生産や資源調達、水素事業、エネルギーサービスなどの領域で多くの他社協業を進めていますが、今後もさらなる戦略的パートナーシップを積極的に展開することで、サステナブルで競争力のある事業基盤の構築を進めていきます。
電動化・デジタル化の急速な進展にともない、モビリティの価値転換が進みつつあります。これまでの「ハードウェアの売り切り」というビジネスモデルにおいては、新車購入時が最も価値が高く、経年で価値が下がっていくという考え方でした。しかしながら、自動運転や安全運転支援システム、デジタルサービスに代表されるソフトウェア領域のニーズ等が高まるなかにおいては、モビリティは購入後のソフトウェアアップデートによって価値が増幅されていく、という考え方に変化しつつあります。
IoT・コネクテッドの技術を通じ、モビリティが他のモビリティや交通インフラとつながっていくと、交通事故の未然防止のみならず、パーソナライズされた最新のデジタルサービスを提供することが可能となります。つまり、今後のモビリティは「お客様とともに成長する」ことができるようになります。
また、モビリティは単なる移動手段にとどまらず「エネルギーストレージ」としての新たな価値を生み出すことが期待されています。家庭充電や公共充電など、電動モビリティの電力供給能力を活用したエネルギーサービス領域の取り組みにより、移動中でなくても、さまざまな局面で人々の生活に役立つ存在へと進化していきます。
ハードウェアとソフトウェアの融合により、長いライフサイクルでお客様に価値を提供し続け、パートナーとして共に成長できること。「移動」だけでなく、さまざまなシーンでお客様一人ひとりの生活に寄り添い、パーソナライズされた多様な価値を継続的に提供すること。この2つの価値により、長期視点でのライフタイムバリューの向上を目指していきます。
取り巻く環境が大きく変化する中、経営戦略における重要課題も非常に高度化、複雑化しています。Hondaは先述の5つの重要テーマに注力することでモビリティの進化とビジネスの転換を目指していきますが、この大きな変革に向けてスケールの大きな取り組みを迅速かつダイナミックに推進していくためには、経営オペレーションそのものをさらに高度化していく必要があります。この観点から、期初に設定した全社の重点課題は経営メンバーが直接指揮を執る「部門横断タスクフォース」を組成して推進することとし、経営直轄でスピーディーにPDCAを回せる体制を整備しました。
また、今期は「電動事業開発本部」の新設に加え、コーポレート領域および地域本部についても組織を大きく再編することで経営資源の全体最適化を図るとともに、執行役員制度を廃止し、各事業・機能の担当役員を執行役に一本化することで執行責任の所在を明確化しました。加えて、先述の「Hondaをハブとした強固なバリューチェーン」の構築に向けて、他社との円滑な協業の展開を支える社内のアライアンス推進機能の強化を進めています。
Hondaが「存在を期待される企業」であり続けるためには、個人の内発的動機を起点とした多様な「夢」と、それを技術やアイデアで具現化する「スピード」の2つが何よりも重要であると考えています。一人ひとりの夢の力を最大化し、スピーディーに提供価値へと結び付けることのできる企業運営を目指して、これからもさらなる経営オペレーションの高度化を追求し続けたいと思います。