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第80回 都市対抗野球大会 Honda 鈴鹿硬式野球部

3回戦

第80回都市対抗野球大会

8月28日(金) 11:00
試合会場:東京ドーム

チーム名 1 2 3 4 5 6 7 8 9
Honda鈴鹿硬式野球部 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1
ヤマハ 0 1 0 0 0 0 0 0 1x 2
バッテリー Honda鈴鹿 ヤマハ(浜松市)
投手:杉本-中須賀-前橋

二塁打
三塁打
本塁打

チャンスはあったが…、Honda鈴鹿サヨナラ被弾に泣く

 先発杉本が先制を許すも、4回、早川のヒットから4番大西のタイムリーで同点に追いつく。
 両チーム追加点が奪えぬまま迎えた9回裏、三番手で登板した前橋が相手の4番バッターにサヨナラホームランを浴び惜敗した。


 この試合は皇太子殿下がご観戦に来られるということで、試合開始前の東京ドームはいつもとは少し異なる緊張感で包まれていた。そんな中でプレーボールとなった試合である。Honda鈴鹿としては東海地区予選でもあたり、そのときは負けている浜松市のヤマハが相手だけに、「同じ相手に予選と本大会と二度も負けるわけにはいかない」という思いでリベンジを誓っての出陣だった。

 Honda鈴鹿の先発は、初戦でセガサミーを3安打1失点の抑える好投をした藤本瞬(今治南→徳山大)と同期入社で、「藤本の好投はいい刺激になりました」という杉本政紀(大井川→中京大)だ。腰痛が完治しておらず必ずしもベストという状態ではないものの、それでも大事なマウンドを任された責任感は十分だ。
 そんな杉本を助けたい打線は初回、早川辰徳(東海大相模→東洋大)がいきなり相手失策で出塁してラッキーなスタートかと思われたが、続く具志賢三(平安→立命館大)はいい当たりだったが一塁手へのライナーとなってしまい併殺。もらった好機はあっさりと潰れてしまった。
 その裏、杉本は三者凡退で切り抜けてまずまずの立ち上がりだったが、ボールが先行して高目に浮いているのが少し気になったところだった。そして2回、その心配が当たってしまい、四番佐藤に少し高目に入ったストレートを左翼スタンドに運ばれた。この佐藤選手はブラジル出身で“ツギオ”という登録名でヤクルトでプレーしていた選手でもありパンチ力には定評がある。
 この一発で動揺したのか杉本はさらに連打を浴びてピンチを招くが、その後は何とか抑えた。そして、3回からはコーチ兼任の西崎和成捕手(尽誠学園→大阪学院大)が、持ち球のフォークボールなど変化球を主体としたリードに変えてきてこれが功を奏した。

 杉本が粘りの投球を見せている間に何とか追いつきたいHonda鈴鹿はちょうど一巡した4回、先頭の早川が中前打で出塁するとワイルドピッチで二塁へ進み、具志の丁寧なバントで1死三塁。期待された平手敬介(春日丘→中京大)は一塁ライナーに倒れたものの、四番大西正人(春日丘→中京大)が中前にはじき返して同点。さらに、中東信二(広陵→近畿大)も左翼フェンス直撃の二塁打で逆転の好機を作る。結局、後続が抑えられて、逆転できなかったことが結果的にはあとで響くことになる。
 こうして、試合は次の1点を争う投手戦の展開となっていった。
 3回からすっかり立ち直った杉本は、西崎捕手の好リードもあって、自分のリズムで投げていたが、ヤマハの岡本投手もテンポよく投げ込んでくる。7回に先頭打者に四球を与えて、バントで1死二塁となったところで、與本敏弘監督は二番手としてJR東海から補強した中須賀諭(西条→亜細亜大→JR西日本)を送り込むと、これがピシャリとあたり後続を抑える。さらに、8回からは新人の前橋泰輔(浜松工→八戸大)を投入。1-1の投手戦は、一発が勝負を分けそうな雰囲気も十分に感じられる展開となってきた。
 中軸に回る9回、Honda鈴鹿はその期待もあったのだが、三者凡退に終わる。
 そして迎えたその裏、三振で1死としたあと、四番佐藤にこの日2本目の本塁打を打たれ、これがサヨナラ弾となった。前橋投手のスライダーが少し甘く高めに入ったところを狙い打たれたのだが、コースも打球方向もほとんど同じところへ放り込まれた。結局、Honda鈴鹿は元プロのブラジルパワーの前に屈したという形で涙を飲んだ。

 試合全体の流れとしては、Honda鈴鹿の方がむしろ若干押し気味でもあったと思える展開だった。それだけに、よけいに悔やまれる試合となってしまった。二番打者として、この日2本の送りバントを決めた具志主将も、「壁を破るためには、もっと個人のレベルアップをしていかなくてはいけないと思います」と、悔しそうに唇を噛み締めた。
 試合後、與本監督は悔しそうな面持ちで重い口を開いた。「うーん。ウチの方がチャンスも多く、内容では勝っていたような気がしますが、あと一本が出ませんでした。4~5点の争いになるかと思っていたのですが、相手の投手が思った以上によかったし、杉本も状態が悪いなりによく投げてくれました」と振り返った。そして、「9回は当然相手の一発を警戒する場面です。それでも、そこ(相手の打てるコース)へ投げさせられてしまったということは、相手が一枚上だったということです」と、相手の佐藤選手を称えながらも、「ただ、こういう試合をものにできないということは、何かが足りないのだと思います。ここで厚い壁に当たることで、試練を与えてくれたのだと思います。この壁を越えられるように、また鍛え直したいと思います」と、この先の日本選手権、さらには来年を見据えていた。