Safety Interview 産学連携が生んだ新しい交通安全のかたち 三宅心愛さん 馬越美佳さん 小室美涼さん

ノートルダム清心女子大学×JAF岡山の挑戦 産学連携が生んだ新しい交通安全のかたち

女子学生らしいデザインが特徴的な「かぶりたくなる自転車ヘルメット」の数々。これらは岡山県のノートルダム清心女子大学がJAFと連携して取り組んできた交通安全プロジェクトによって誕生しました。本特集では、学生の視点を取り入れて地域の交通安全に対する意識改革を目指す、その活動内容と携わった人々のストーリーを紹介します。卒業を間近に控えたプロジェクトメンバーがキャンパスに集い、連携活動を振り返りながらそれぞれの交通安全への思いや将来について、輝く笑顔で語ってくれました。

三宅心愛さん
人間生活学部
人間生活学科4年
三宅心愛みやけ ここあさん
馬越美佳さん
文学部
日本語日本文学科4年
馬越うまこし美佳みかさん
小室美涼さん
文学部
現代社会学科4年
小室美涼こむろ みすずさん
濱西栄司さん
地域連携・SDGs推進センター長
文学部現代社会学科教授
濱西栄司はまにし えいじさん

※学年は2026年3月の取材時点

学生の力を地域へ──プロジェクトの幕開け

ノートルダム清心女子大学はJAF岡山と2023年度から交通安全に関する連携活動を続けてきました。同大学の地域連携・SDGs推進センターが全学から参加者を募集し実施している学部・学科・学年を超えた社会連携活動は「清心コラボ」と呼ばれ、学生たちに多彩なフィールドで活躍する機会を与えています。JAF岡山との連携はその一環であり、センター長を務める文学部現代社会学科教授の濱西栄司先生は「このプロジェクトが想定以上にうまくいって、他の清心コラボの活動においてもモデルになったんです」と語ってくれました。
学生たちの具体的な活動内容としては、自転車利用者のヘルメット着用率向上のためにヘアカタログを作成し、姉妹校である清心女子高等学校と連携して効果測定を実施。さらには、学生服メーカーとコラボしてかわいい制服とヘルメットの組み合わせを考案したり、かぶってみたいと思わせるおしゃれなヘルメットをデザインして、ヘルメットメーカーの協力のもとオリジナル作品を制作したりと、実に女子学生らしいアイディアの取り組みが注目されました。
大切なことは、いかにより多くの人に「交通安全」に目を向けてもらうか。そのために話題性が必要なことを彼女らは意識し、自分たちの持ち味を活かすべくプロジェクトに全力で挑んできたことが活動成果からも伝わってきます。4月から社会人として新たな舞台へとステップアップしていく3人に、卒業式前の学び舎で恩師とともに自身の活動について振り返ってもらいました。

学生の力を地域へ──プロジェクトの幕開け

もうすぐ卒業という多忙な時期にお時間をいただきありがとうございます。在学中、自転車ヘルメット着用率向上のための活動に取り組んできた皆さんにお聞きします。まずは、このプロジェクトに参加したきっかけを教えてください。

三宅 私は在学中に何か産学連携活動に参加してみたいなと思っていた時、学内の案内でJAFさんとのコラボのお話があることを知りました。2年生で春休みに自動車運転免許を取得したばかりだったこともあり、交通安全というキーワードがすごく身近なものになっていたんです。それで興味を持って参加しました。このプロジェクトは半年ごとに期間を区切って参加メンバーを募るシステムなのですが、私はプロジェクトが始動した初期から携わっています。

馬越 私は他の学外活動で、大学から推薦された数名で行っている岡山県警察の広報スタッフを2年間やらせていただいていたのですが、その広報活動の中で岡山県に貢献できることにもっとチャレンジしたいという思いが強くなりました。大学とJAFさんとの連携はすでにスタートしていて、交通安全のプロジェクトであれば自分の行動を県民の方々の安心・安全につなげていけるのでは、と参加を決めました。

3人とも岡山県出身だそうですね。地元に対する思いが強く感じられます。県民の安心・安全を10代、20代から意識されているというのはすばらしいことだと思います。

馬越 岡山県が本当に好きで、大学の志望校は国立も私立もすべて県内でした。2018年7月に岡山県倉敷市の真備町で記録的な豪雨による浸水被害があったのですが、クラスメイトが被災してしまいました。何も助けてあげられなかった悔しさが強く残って、身近な人々のために私にできることが何かあるんじゃないかと。地域と連携した貢献活動について模索していたので、本学の取り組みは渡りに船でありがたかったです。

文学部日本語日本文学科の馬越美佳さん
文学部日本語日本文学科の馬越美佳さん
Q.馬越さんはどんな人?
A.「社会人相手でも良い意味で物怖じせず、ちゃんと芯を持って人とやりとりできるところが魅力的だと思います」
(三宅さんが回答)

小室 私は濱西先生のゼミ生で、大学では自分で授業の時間を組み立てることができるので、時間を作って何かの活動をしたいと思っていた時に先生に相談しました。JAFさんの取り組みがあることを教えていただき、私自身がそれまで実はヘルメットをあまりかぶりたくないと思っていたので、逆に面白そうだなと興味を抱いて参加しました。

濱西 本学の学生さんは本当に皆さん熱心なんです。一般的に産学共同プロジェクトというのは、途中で空中分解してしまうことがよくあると聞きます。さまざまな理由があるのでしょうけれど、私自身がある企業の担当者に聞いた話では、単位を取得するために参加している学生が多いと積極的に取り組んでもらえず残念な思いをしてしまう、と。企業が学生との連携に対してマイナスのイメージを持ってしまうことは少なくないそうです。本学での自転車ヘルメットの取り組みが非常に理想的な成功モデルとなったのは、学生と企業の双方がともに熱意を持っていたことが大きいと思います。JAF岡山さんの本学に対する信頼感と非常に行き届いた対応、それに応えたいという学生の気持ちですね。このプロジェクトは授業の一環としてではなく学外のボランティア活動になりますから、私としては応募してくれる学生さんはいるだろうか?という不安もありましたが、すばらしい皆さんが手を挙げてくれて感謝しています。

身近な問題として自転車に着目

連携活動の始まりは、JAF岡山からNPOセンターを経由してノートルダム清心女子大学に打診があったと伺いました。当初から「自転車ヘルメットの着用率向上」を目指すプロジェクトにしたいという要望があったのでしょうか?

濱西 いえ、JAF岡山さんからの企画書には「ぜひ交通安全というテーマでやりたい」とあって、具体的には決めずそこから検討させてみようと全学に参加者を募りました。馬越さんと小室さんは参加する前の話になりますが、三宅さんを含む初代メンバーでディスカッションを重ねて、対象を学生に設定した上でどういった活動なら交通安全に関心を持つか、という視点で考えているうちに自転車ヘルメットというテーマが出てきたんです。

学生メンバーが考案した自転車ヘルメットのデザイン画。手書きで細やかな指示が書き込まれている
学生メンバーが考案した自転車ヘルメットのデザイン画。手書きで細やかな指示が書き込まれている

三宅 自転車ヘルメットの他にも、各地の学校で交通安全教室を実施するとか、地元のサッカーチームとコラボして交通安全を広めようとか、いくつかの案を資料化してJAF岡山さんとの初めての話し合いに持ち込みました。中学・高校では自転車通学が多くて、自分たちもついこの間まで高校生活を送っていたので自転車ヘルメットが一番身近で考えやすいよね、という話になって、このテーマに決まったことを覚えています。自転車ヘルメットの着用率向上という大きな方針が決まって、せっかく女子大のメンバーでやるなら「らしさ」のある企画に、ということで髪型崩れるからかぶりたくないよね、ヘルメットをかぶっても崩れない髪型があったらいいよね、そもそもヘルメットのデザインもかわいいのがあったらかぶってもらえるかも、と具体的になっていきました。

人との連携によって学んだ新たな視点

皆さんが連携プロジェクトに参加してみて、大人と一緒に活動することに対して最初にどのような印象を持ったか覚えていらっしゃいますか?

三宅 自分たちで考えてきた案でも、やっぱり実現するとしたらハードルが高いのではと不安に思っていた内容に対して「ここをこうやったら実現できるかも」と異なる視点からの意見をくださったりして、発案したことがどんどんブラッシュアップされました。やはり私たち学生の視点だけでは見られない世界というか、社会人としてさまざまな経験をされている方々だからこその気付きを得て、良いものが作られていくという新しい発見が印象的でした。

馬越 JAFの皆さんからは学生の意見を取りこぼすことなく、それを発展させようというお気持ちがいつも伝わってきて、それが驚きでした。こんなにアサーティブなコミュニケーションをしてくださる社会人の方が本当にいるんだ、と。とてもありがたく感じました。学生の「お手伝い」ではなく、プロジェクトメンバーの一員として対等な立場で向き合ってくださるので、絶対にプロジェクトを成功させたいという強い気持ちを持つことができ、社会貢献のためのさらなる一歩を踏み込めたという感触がありました。 また、実は参加当初に頭を悩ませていた時期があって、私個人は自転車ユーザーにヘルメット着用を促すための発案がなぜ髪型やデザインといった切り口になるのか、わからなかったんです。交通安全教室とか、いわゆるカタい活動内容しか思い浮かばなくて。でも活動の中で、多くの人々に興味を持ってもらうためにはカタいことだけではダメで、おもしろいと思ってもらえるとっかかりも必要なんだと学びました。バズらせるためにはどう攻めるかを考えることで初めてマーケティングの重要性を意識するようになり、皆さんのおかげで視野が広がったと実感しています。

小室 大学生活の中では同じ学部の人としか接点がないので、この活動では多くの社会人の方たちとかかわる貴重な機会があって、また、他の学部生との交流もできて、すべてが新鮮でしたね。JAFさんは皆さん優しい方ばかりで、会議もいつも笑いながら楽しくできていました。その環境があったからこそ、自分たちからの発案も自由な考え方でいい案を出せるという好循環につながっていったのだと思います。結果をより良いものにするためにも、人と人との関係性や職場の雰囲気づくりというものが大切なのだと教えていただきました。

ノートルダム清心女子大学×JAF岡山の挑戦
文学部現代社会学科の小室美涼さん
Q.小室さんはどんな人?
A.「人の懐に入るのが上手なムードメーカーです。学生に限らず、みんなが話しやすくなるので本当に助かっています」
(馬越さんが回答)

濱西 JAF岡山さんもこういったかたちで学生と連携するのは初めての試みだったそうで、とても慎重に対応してくださった印象を持っています。初期は会議に幹部の男性職員さんが多く参加されていましたが、プロジェクトが進むにつれて学生と年齢の近い若い世代の女性職員さんとざっくばらんに意見交換できる体制を整えてくださったり、事前に連携の仕方についてレクチャーさせていただけたり、私たちが安心して取り組める環境で迎え入れてもらえました。

迷走期間を越えて、伝わる表現を模索

プロジェクトの中で一番苦労したことや工夫したことは何でしょうか?

三宅 具体的にどういう活動をしていくか、最初に考えるのが最難関でした。自転車ヘルメットの着用率向上という方針が決まってからは学生メンバーからの意見も活発に出るようになりましたが、初めは迷走期間というか、JAFさんと一緒に取り組むべき「社会の課題探し」の部分が一番難しかったです。

馬越 見え方・見せ方の工夫をずっと意識していました。カタログ制作では倉敷の美観地区にある「いがらしゆみこ美術館」にもご協力いただいて、視覚的に見やすいデザインになっているかとても悩んだ記憶があります。美術館の方々と話す時、プロ相手に素人の私たちが意見を出すのは失礼かなと思うこともありながら、それでも私たちの思いはしっかり伝えたくて。学生気分で作ったものと思われる出来映えにだけはしたくなかったので、世の中に出た時に見た人がどう思うだろうという視点を忘れないようにしていました。報道の方々の取材を何度か受けたのですが、その時もできるだけキャッチーな言葉をひねり出して、誰かがそのニュースを耳で聞いていただけでも「あ、ヘルメットのことね」と頭のどこかに残るよう言葉を選びました。

キャッチーな言葉というと、たとえば?

馬越 「ヘルメット着用率1位」、このフレーズを私は繰り返しスローガンとして使っていました。岡山県は不名誉なことに交通マナーが悪い県と言われていて、そんな岡山で大学生が交通安全活動に加わることでプラスの兆しを何か作れないかなと思っています。そこで私は「岡山をヘルメット着用率全国1位の県に」を合言葉にできるよう、取材の度にこのフレーズを発信してきました。

小室 私が苦労したことは、そもそも得意ではないという意味で、企業の人たちから意見を求められることや新しいヘルメットのデザインなどについて何度も集まって提案をすることに苦手意識がありました。親身に寄り添ってくれているとはいえ、相手は大人の方々です。社会人とのコラボなのでちゃんとした案を出さないと、というプレッシャーは強く感じていました。でもJAFの皆さんをはじめ、かかわってくださる人々誰もが、どの意見に対してもすごく前向きに受け止めてくださるので、苦労はしたけれど、より楽しくできたところでもあります。

ヘルメットをかぶっても崩れにくい髪型を提案したヘアカタログ。制服との組み合わせも紹介
ヘルメットをかぶっても崩れにくい髪型を提案したヘアカタログ。制服との組み合わせも紹介

苦手なことにもチャレンジする姿勢が素敵ですね。活動を通して、ご自身の変化や成長を感じた点についても教えてください。

三宅 私は何でも自分一人で物事を進めてしまうタイプで、以前は周りにあまり協力を求めずに「自分が全部やった方が早い」と考えて行動していたんです。このJAFさんとの活動においては、まず学生メンバー同士で企画を考える時に、やはり自分では思いつかない視点からの意見がたくさん出てきました。そこで、他者との交流によって新しいものがどんどん生まれてくるんだということを体感できたんです。自分ができないことは周りを頼って、周りを巻き込むことでもっと大きなことに挑戦できるのだと知りました。そういうスタンスは学生間だけでなく、JAFさんとのやりとりでも有効でした。学生メンバーができることと、企業さんの力を借りないとできないことがあって、手伝ってほしいと素直に伝えれば、快く引き受けてくださる。自分一人の限界も学生の限界も、連携することで超えられました。みんなでより良いものを作るために、頼るべきところは素直に頼る姿勢を持つことができたと感じています。

馬越 三宅さんの言う通り、役割の分担っていうところは同感ですね。自分の苦手を克服しようとすることももちろん大事なんですけど、周りを見ると本当にそれぞれの良さがあることに気付けます。発案が得意な子もいれば、クリエイティブな面で優れた子もいて、いろんな人の意見をまとめるのがうまい子もいる。すごいな、見習いたいなと思うところがたくさんあって、みんな尊敬しています。得意分野が違うから、互いに頼り合うことで取り組みの幅も広がるのだとわかりました。自然に「このチームにとってプラスになるあり方」を考え、自分の役割について気を付けるようになったことが、大きく成長できた点だと思います。必要であればピエロにもなります(笑)。

小室 この活動を通して、いろんな方とかかわりを持てたというところが大きいですね。三宅さんはデザインが得意だし、馬越さんは喋りがもうレベルが違う(笑)。テレビ局の方とかが取材に来られても全然緊張せずスラスラと喋っていて、すごいなって思います。そういうのは私にはできないけれど、じゃあ自分の得意なことは何かなと考えて。私は動画を作ることが好きなので、ヘルメット着用後の前髪をセットする動画などを手がけることができました。それぞれが得意なことを活かしながら力を合わせることで、ヘルメットの着用率を上げるというちょっと難しい社会の課題についても、解決に向けて一歩進めていけるっていう手応えを感じました。また、交通安全の面でいえば、普段の生活の中で周囲を走行中の自転車を見かけるたびに「あ、ちゃんとヘルメットかぶっていたな」とか、以前とは比べものにならないくらい交通安全に意識がいくようになりました。

人間生活学部人間生活学科の三宅心愛さん
人間生活学部人間生活学科の三宅心愛さん
Q.三宅さんはどんな人?
A.「リーダーシップというか、まとめる力が優れていて、この活動をいつも力強く進めてくれました。アイディアも素敵」
(小室さんが回答)

「自分ごと」としての交通安全意識の芽生え

交通安全に対して、それぞれご自身の意識についてどのように認識されていますか?

三宅 私は中学も高校もバス通学だったので自転車には乗っていなかったのですが、中学生は学校から義務的に指導されていてみんなヘルメットをかぶっているのに、高校生になると学校から何も言われなくなった途端にかぶらなくなってしまうのが気になっていました。ニュースで自転車事故の報道を目にすると、とても悲しい気持ちになりますよね。自分だけじゃなくて、周りの人にも安全でいてほしいなと思うので、そういった意味での交通安全の意識は以前からありました。大学生になって自動車免許の教習所で、運転時の周囲確認として歩行者や自転車に気を付けるよう指導されましたが、自転車に乗る時とクルマを運転する時とでは、それぞれに違う立場で目線も危険を察知するポイントも異なります。交通安全の意識も立場によって変化するのだと感じました。

馬越 交通安全活動に携わっている以上、やはり自分自身もちゃんと赤信号を守ろうとか以前よりも思うようになりました。私もクルマを運転するので、運転時に近くを走行する自転車の位置などは特に気になります。クルマはキープレフトという大原則がありますが、まだ自転車はそれほど厳守という意識が浸透していない状態ですよね。交通安全のルールをもっと守りたくなるような仕組み作りの必要性を感じています。活動の影響か、街中でも交通マナーにはとても厳しくなったと思います。

小室 私は高校が自転車通学でしたが、その頃はまだヘルメット着用が強制ではなくて、正直なところ全くかぶっていませんでした。髪が崩れたり、見た目がダサくなったりするのがイヤだったんです。その視点を持っているからこそ、この活動で役に立った部分はありました。どういうアクションが高校生にも響いて、「もっとヘルメットをかぶろう」という意識付けにつながるか、自分の経験をふまえて考えることができました。

ちょうど2026年4月から自転車にも青切符(交通反則通告制度)が導入されて、自転車のルールに対する意識は大きく変わりそうですね。

三宅 制度としては厳しくなりますが、命とどちらが大事かと言われれば、もちろん命ですよね。自転車の交通ルールについては、細かいルールは知らないという人も結構いるかもしれないので、青切符導入をきっかけに、どういうことが違反になるのかなどをあらためてわかってもらえるようになってほしいです。

馬越 青切符導入はチャンスだと思っています。自転車のルールは小学生の時に自転車講習で学んだきり、という人が多いと思うので、あらためて気を付けようと思ってもらえる良いきっかけになるなと。命やルールが大事だということはもちろんですが、切符を切られることが嫌だという理由だとしても自転車に乗る誰もが注意するようになれば、全体的に安心感が増します。自転車に乗る側にとっても、クルマを運転する側にとっても、より安全な走行ができることにつながる好機だと捉えています。

小室私も青切符はチャンスだなと思います。私たちが自転車ヘルメットの着用率を上げるために取り組んできたことは、自らかぶりたいという思いになってほしくて続けてきました。ルールの周知が進めば、かぶるのが当たり前の状況になると思います。交通安全に関心を持ってもらうために作ったヘアカタログなども、そうした状況にあわせることで、嫌々かぶっている意識を変えるためのツールとして新たな役割を担うことができるのではないでしょうか。

ノートルダム清心女子大学×JAF岡山の挑戦

未来へつながる確かな成長と自信

このプロジェクトに挑戦して得た経験は、将来どのような場面で役立ちそうですか?

三宅 私は4月から施工管理の職に就きます。俯瞰的な立場から全体を見ながら、現場が円滑に回るよう仕事を進めていかなければいけません。そこで職人さんたちの安全を守っていきます。先ほどお話した通り、自分一人ではできないことがあれば自ら周りの人に伝えていくことが、職場においてもとても大事になるんじゃないかなと。自己完結せずに協力して安全につなげていくという点で、連携活動の経験を活かしていけると思います。

馬越 プロジェクトを通じて学んだのは、一つの正解に縛られない柔軟な取り組み方の大切さです。私は「声なき課題」をすくい上げ、多方向から解決の糸口を見出すことで、ウェルビーイングな社会の実現に貢献していきます。私はメディア関係の職に就きますが、今後も多方向から物事を見つめる眼差しを大切にし、複雑に絡み合った課題を解きほぐす糸口を見つけていきたいです。とても幸せな人生だ、と心から思う人が増える社会を目指していきます。

小室 4月からは岡山空港でグランドスタッフとして働きます。グランドスタッフは人と接する職業であり、何か問題があった場合にはグランドスタッフ同士で協力・連携して解決することが重要になってくるので、このプロジェクトでやってきたこと、成長できたことが役立つはずです。あとは、岡山のためになることをしたい、という思いはプロジェクトに参加する前からあったのですが、JAFさんと一緒に交通安全活動ができて、地域に貢献したいという気持ちはより強くなりました。これからは岡山空港で、岡山のためになれるようなことをしたいと思っています。

実りあるプロジェクトと学生の皆さんの成長について、濱西先生からひと言いただけますか?

濱西 このプロジェクトは、まだ「清心コラボ」という名前がなかった時に始まった、地域連携・SDGs推進センター初の直轄の連携活動でした。学部・学科を超えて連携することも初めてで、外部団体さんからの一方的なお願いではなく、大学側としての希望も伝えながらの、最初の試みでした。そこにとても熱心で真面目な学生さんが集まってくれて、JAF岡山さんの対応もすばらしくて。学生さんに投げる前にこちらできちんと準備をすれば、非常にうまくやっていってくれるんだなということがわかったので、私もすごく勉強になりました。
その後、連携を希望される他の団体さんには、このプロジェクトのJAFさんの企画書を見本例として活用させていただいています。連携活動は短期間のものも含めて年間で10を超えるプロジェクトが進行し、参加学生はトータルで200人くらいでしょうか。それらの活動のモデルとなった、すばらしい活動になりました。2024年にJAFさんとは連携協定も結んでいます。
3人の成長については、もともと力があった人たちなのですが、活動の中でお互いに良い刺激を与え合って、すごく良い経験をしてくれたんじゃないかなと思っています。私から言うことはないほど、皆さんが見事な発言をしてくれたのでその成長ぶりは十分に伝わっているのではないでしょうか。このリーダー的な存在の先輩たちの姿を見て、これからの後輩たちも存分に活躍してほしいですね。

ノートルダム清心女子大学×JAF岡山の挑戦
地域連携・SDGs推進センター長の濱西栄司先生
Q.濱西先生はどんな人?
A.「とにかく優しいです」「この大学に新しい風を吹かせてくれる存在なので、いないと困ります」
「授業が丁寧です。ユーモアのある一面も」
(学生の皆さんが回答)

在学中に取り組んできたプロジェクトを終えた今、誰かにメッセージを伝えるとしたら、誰にどのような言葉を贈りたいですか?

三宅 私は後輩に向けてメッセージを伝えたいです。大学生のうちにしかできないことはたくさんあると思うんですけど、その中でもこういう地域の企業さんと連携して活動するというのは貴重な機会です。コミュニケーション能力や行動力、協調性や自身の意見をまとめるスキルといった、社会に出てから役に立つことを実践的に学べる活動だと、このプロジェクトを通して実感しました。ぜひ在学中に清心コラボに参加して、自分の世界を広げてほしいです。

馬越 岡山県民の方に、と言いたいところですが、ここはあえてドライバー向けにします。
自転車ユーザーの方々はこれまでルールの面で自由な部分が大きかったと思うんですけど、これからはクルマの運転と同様に気をつけていかないといけない状況になっています。青切符導入は自転車のことでドライバーのルールが変わるわけではないのですが、同じ道路を走行する者同士ということで、自転車ユーザーと一緒に、この機会に交通マナー、交通安全への意識を高めていけたらいいですね、とお伝えしたいです。
あと、これから交通安全の取り組みをしていこうと思われている方々へ、もし私たちに何かお力添えできることがあれば、どうぞお声がけください。ぜひご協力したいです。

小室 私はこの活動を通して自分の成長をすごい感じたので、先生とこのメンバーとJAFの方々、一緒に取り組んでくださった方に感謝を伝えたいですね。このプロジェクトに参加していなかったら、発案力やコミュニケーション能力を高めることはできませんでした。大人の方たちとも貴重な交流の場を作っていただけて、この活動で出会えた身近な方々に感謝です。

濱西 私からはやはりメンバーの皆さんにですね。授業も就活も卒論も、どんどん忙しくなっていく中で大変だったと思います。皆さん、本当にありがとうございました。

交通安全の課題を真剣に考え、プロジェクトに取り組んできた皆さんが、その過程でいかに成長を遂げてきたのかが、しっかり伝わってきました。新たな社会生活でも学びを活かし、存分に活躍してくれることでしょう。未来の安全文化を育てていく世代である彼女らの言葉通り、青切符という新制度のスタートがよいきっかけになることを期待しています。自転車の乗り方や交通ルールについて関心が高まり、安全について考える機会が増えることを願い、本特集のインタビュー企画は次回へと続きます。次回、大阪のヘルメットメーカー「オージーケーカブト」が取り組む交通安全プロジェクトについての記事は、2026年5月公開予定です。