
2023年、警察庁による自転車ヘルメット着用状況の調査において、着用率2.4%で全国最低となった新潟県。最下位という衝撃的な結果を受けた県は自転車ヘルメット着用促進県民キャンペーンを実施し、着用率は上昇傾向となりましたが、まだまだ全国平均には届いていません。今回は新潟県によるヘルメットの着用促進活動と、それに呼応した長岡造形大学のヘルメット制作コンペをご紹介。デザインの力を普及活動に取り入れた県の姿勢と、コンペを通じて学生たちが何を考え、学んだのかをレポートします。
「ヘルメット着用率全国最下位」の衝撃
最初にお話を伺ったのは、新潟県職員の新保洋佑さん。総務部県民生活課交通安全対策室に所属する新保さんは、2023年の調査結果に衝撃を受け、危機感を募らせたといいます。
新保2023年4月に道交法が改正されて、自転車ヘルメット着用が努力義務化された中で、警察庁が同年実施した全国調査において、新潟県は着用率2.4%の全国最下位という厳しい結果となりました。県民の自転車ヘルメット着用に対する意識の向上を図っていかなければならないということで、着用促進のための県民運動キャンペーンを開始し、「ヘルメットかぶろっと!宣言」を企画しました。
キャンペーンではウェブサイトを開設し、企業や個人、各種団体からの「ヘルメットかぶろっと!宣言」を募集。宣言することでキャンペーンに参画してくれた個人や団体には、オリジナルステッカーをプレゼントするなどの取り組みを実施しました。ウェブ広告やテレビCM、さらに地元のJリーグクラブ「アルビレックス新潟」の試合でもブースを設置するなどの広報活動が、大学関係者の目に留まりました。
新保最初は長岡造形大さんの方からお話をいただきました。キャンペーンの広報活動を耳にされたのかと思います。2024年の秋に行われる学内のデザインコンペで、自転車ヘルメットをかぶりたくなるような仕掛けやデザインをテーマにすると聞きました。県としても着用意識の啓発に効果的なきっかけになると考え、授賞式にお邪魔してホームページ等で紹介しました。2025年のデザインコンペについては、県としてさらに関わりを深めたいということで、県が事務局を務める新潟県交通安全対策連絡協議会からも、優秀作品に対し賞を授与しました。
長岡造形大学はデザインに特化した公立大学で、デザイン学科、美術・工芸学科、建築・環境デザイン学科の3学科を有しています。学内で行うデザインコンペのテーマを自転車ヘルメットにするきっかけになったのは、ふとした学長の気づきからだったと、当時学生支援部長を務めていた中村和宏教授が振り返ります。
中村2年前、学生支援部長を拝命した時に学長との会話の中で「朝、大学に来る学生を見ていると、ヘルメットをかぶっている学生が少ないね」という話になりました。ちょうどその時に新潟県の着用率が最下位だったというニュースもあって、何か問題解決の糸口になれるんじゃないかと考えたのです。大学では毎年、「ハッピーキャンパスライフアイデアコンペ(通称・ハピキャン)」という学内コンペをやっておりまして、そのテーマとしてふさわしいのではないかと。私は美術・工芸学科なのでヘルメットは専門外ですが、他学科のプロダクトデザインの先生も多く在籍していますし、課題でヘルメットに取り組んでいる学生もいたので、皆さんの協力を得ながらこのプロジェクトをやってみようということになりました。新潟県の「ヘルメットかぶろっと!宣言」については、インターネットで見かけたのが最初でした。非常にタイミングよく、一緒になって盛り上げていただきました。
コンペのテーマは「『ヘルメットライフ』〜ヘルメットをかぶりたくなる仕掛け〜」。1年目は手探り状態で始めたものの、反響は想定よりも大きかったそうです。
中村プロダクトデザインの分野はもちろんですが、意外と他学科の学生たちも発案してくれて、非常に興味深い作品が集まりました。3Dプリンターを使ったり、手作りしたり、ヘッドホンと組み合わせたものだったり、若者ならではの新しいアイデアというか、空気感というか、本当にいいなと思えるものを出してきてくれました。
初年度から成果をあげたヘルメットコンペ。2年目の開催に向けては、県や企業との協力関係もあったと、学生支援係の小松涼平さんが教えてくれました。
小松 ハピキャンはもともと、テーマを絞って行うコンペではありませんでした。絞った方が逆に柔軟な発想が出ることもあるだろうかと考えていたところに、「ヘルメットかぶろっと!宣言」のキャンペーン募集を見つけたんです。そこで本学から参画しますという話をして、2024年のコンペを実施しました。
すると、保険会社さんがそれを見てくださって、デザインのベースになるヘルメットを寄贈していただいたんです。2025年も一から造形して応募してもらった作品もありますが、寄贈品の真っ白なヘルメットをベースに塗装したり、新しい機能を付けたりという応募が多かったので、非常に助けになりました。
学生の柔軟なアイデアがもたらした手応え
徐々に輪を広げていった、長岡造形大のヘルメットコンペ。新潟県として、地元の大学に期待した点とは何だったのでしょうか。
新保 真正面からの周知啓発も重要ですが、クリエイティブな面からのアプローチというのも着用促進に効果をもたらすのではないかと思いました。学生さんから、若い方々の視点でかぶりたくなる仕掛けやデザインを提案されるということだったので、これが若い世代に広まって、着用意識の向上につながればと期待しました。

キャンペーンの効果もあってか、2024年には着用率が8.0%となり全国最下位を脱出。2025年には10.9%と、少しずつながらも向上してきています。かぶらない理由として多く挙げられるのは「かっこ悪い」「恥ずかしい」などですが、若い世代からの発信が同世代の間で反響を生んだのではないかと中村教授はいいます。
中村 我々の世代からかぶってくれというよりも、若い世代が自ら発信していくことで、同世代に大きく影響を与えるのではないかと思います。作品を見た学生からは、実際に「これならかぶりたい」という声もありました。学内でも反響はあって、着用率は上がってきていますし、意識はしてくれていると思います。
次なるステップは高校生へのアプローチ
「ヘルメットかぶろっと!宣言」や、ヘルメットをテーマにしたハピキャンは一定の成果を得て区切りとなりました。しかし、ヘルメット普及はまだまだ道半ば。これからの取り組みについて、県と大学の双方に聞いてみました。
新保 県としては自転車利用者のボリュームゾーンとして、高校生に向けたアプローチを進めています。2024年に民間団体から約700個のヘルメットを寄贈いただきました。それを活用して、県内の高校の生徒からヘルメットモニターを募集し、アンケート調査に答えてもらいました。また、今のところ自転車ヘルメットは義務ではなく努力義務にとどまっていますが、かぶらなくていいということではないので、今以上に踏み込んだ指導をしてほしいということで、県教育委員会から県立高校に要請しているところです。
ただ、経費的な部分がネックになってしまうこともあるため、18歳以下の住民の方を対象に、市町村を通じて、自転車ヘルメットを購入された世帯への補助を昨年までの2年間実施しました。このような補助制度は、全国でもいくつかの都道府県でこれまで実施されてきていると聞いています。
昨年度の警察庁調査では、全国平均21.2%に対し、新潟県の着用率は10.9%と、依然として全国平均を下回っている状況です。平均を上回ればそれでよいというものではありませんが、より多くの県民の皆さんが頭部を守るという意識を高め、ヘルメット着用の行動変容へつながるよう、学校への働きかけであったり、県警と連携した街頭などでの呼びかけであったり、地道な啓発活動を今後も続けていきたいと考えています。
小松 本学は県外出身の学生がほとんどで一人暮らしが多いので、今年はもう少し広い意味での安全というテーマで、ハピキャンをやっていこうと思っています。防犯・安全というテーマを、交通安全にプラスアルファしてみて、どんなアイデアが出てくるかというのを楽しみにしています。
中村学生が全国から来ている分、助け合って共生していくような力がうちの学生にはあると思っています。安全とか、誰かを守りたいとか、命にかかわるようなもののデザインをする時に、作品からすごく優しさが感じられる学生が多いと思いました。次回からはテーマも変わりますが、このテーマでコンペを実施する前から、プロダクトの授業では意外とヘルメットのデザインに取り組んでいる学生は多かったので、次のコンペでも自転車ヘルメットは出てくるでしょう。我々の世代では到底出てこないような、若者ならではのアイデアが見られるだろうと思っています。
アイデア爆発!入選3作品を紹介&作者インタビュー
ここからは、2025年のハピキャンコンペで入選を果たした6作品のうち、3作品の作者にインタビューした模様をお届け。それぞれが大学で培ってきた技術を存分に発揮し、新しいアイデアをかたちにしています。

「DecoMet.」でそれぞれの個性を
顎ひもロックで実用性も
齋藤 幸季美さん
1人目は、優秀賞と新潟県交通安全対策連絡協議会賞をダブルで受賞した齋藤さん。デザイン学科の4年生で、3D CADなどを使った設計や、家具や雑貨、家電などのプロダクトデザインについて学んでいます。ヘルメットコンペの存在は、前年に先輩たちが取り組んでいたのを見て知っていたとのこと。
齋藤さんの作品「DecoMet.」は、ヘルメットの通気孔に独自のデコパーツを付けて、使う人それぞれが好みのスタイルにカスタマイズできることが最大の特徴。さらに、ヘルメットの置き場に困るという問題を解決するべく、顎ひもにダイヤルロックを内蔵し、実用の面にもこだわったヘルメットです。
制作にあたって、まず齋藤さんが取り組んだのは長岡造形大学に通う学生たちの意識調査でした。
齋藤 いろいろなアンケートの結果を見たり、なぜかぶらないのかという理由を調査分析することから始めました。ターゲットをこの大学の学生に絞って、友達にもたくさん聞き込みをしました。そうすると、デザイン面だけではなく、目的地に着いても置いておく場所がないとか、盗まれないようにまた違うロックを買わないといけないといった実用面、金銭面での問題も浮かんできたんです。今回のコンペには「ヘルメットをかぶりたくなる仕掛け」というサブタイトルもあったので、そういうデザイン面以外の問題も踏まえて機構を考えました。目標を設定して、スケッチを書いて、既製品の寸法を測って参考にしながら設計をして、3Dプリントで作りました。

新潟県交通安全対策連絡協議会賞の授賞理由を前ページにご登場の新保さんに聞いたところ、「自分好みにカスタマイズできる点と、盗難防止のアイデア」という2点が挙がりました。齋藤さんは、盗難防止のアイデアには友人の苦い経験が念頭にあったといいます。
齋藤 大学の近くにショッピングモールがあるのですが、そこで友人が自転車を盗まれてしまって。カギをかけていなかったのをものすごく悔やんでいたので、やはりヘルメットもカギをかけられるようにと考えて入れました。
ヘルメットをデザインする上では、安全性のために形や強度設計に制約があります。齋藤さんはそういった制約の中で、大学で教えられた金言をもとに個性を作品に表出していきました。
齋藤 プロダクトデザインを学ぶ中で先生が繰り返し指導してくださったのは「デザインの個性は出そうと思って出すものではない」ということ。自分なりにターゲットのことを考えて、機能や枠組みを考えていくと、自ずと個性が出た作品になると教わってきました。どう個性を出そうということは意識せずに、ユーザーの方が満足するのはどういったデザインなのかを考えながら制作を進めました。
入選した作品の中で唯一、既製品のヘルメットをベースにした塗装や架装ではなく、ヘルメットの造形からチャレンジした齋藤さん。そこには身に着けるものならではの難しさがあったといいます。
齋藤
私は塗装だけではなく一から作ったので、すごく設計が難しかったです。頭にかぶるものなので、どのくらいの曲面や厚みにするのか考えるのが難しかったのですが、実際に頭や既製品のサイズを計測しながら、どうにか3D CADで作ってみました。
形状の幅としては、頭にかぶるものですから、そんなに突飛な形はできないだろうというのがあって、そういった面では大学のプロダクトデザインとはまた少し違うと感じました。
右:ダイヤルロック部分(コンペ資料から抜粋)
設計の努力が報われ、2つの賞を受賞した齋藤さん。大学で学んできたスキルをさらに伸ばし、このコンペを通じて得た経験を将来に役立てようとしています。
齋藤 プロダクトデザインは設計や試作など、制作のプロセスがとても多くて時間がかかります。そういった意味でも、このコンペをきっかけに自主制作の時間を作って、作品を一から作り上げることができてよかったと思います。得られた学びの中で一番大きいと思ったのは、3D CADを使ったパソコン上での設計技術が伸びたことです。特殊なかたちをしているので、穴を開けるのもすごく大変で。最初は球体から始まって、ちょっと歪ませて、裏からくり抜いて、点を設置して穴を開けてという作業をたくさん繰り返して作ったので、とても鍛えられたと思います。また、頭部はすごく個人差がある部位なので、サイズ調整の難しさもすごく感じました。今後はプロダクトデザインで学んできたことを生かした職業に就きたいと考えていますが、お客様にとって満足いただけるという面だけではなく、製造や素材、施工に関する知識を幅広く吸収し、視野を広く持ちたいと思います。今までは家具や雑貨を作っていて、モビリティ系のデザインに手を出すことがなかったのですが、新たな分野にも挑戦してみようと思えたいい機会でした。
大転倒から出会ったコンペ 陶芸部員を急増させた陶器風ヘルメット

大転倒から出会ったコンペ
陶芸部員を急増させた陶器風ヘルメット
植田 漣さん
続いて2人目は、美術・工芸学科で版画を専攻する植田さん。所属する陶芸部に、コンペの事務局から話を持ち掛けられたことをきっかけに、部の仲間とともに陶芸部らしさのあるヘルメットを作ろうと発案しました。自転車は普段買い物などの足に使っているという植田さんですが、このコンペとはある意味で運命的な出会いを果たしたと打ち明けてくれました。
植田 夜中に自転車を漕いでいたら、縁石にぶつかって転んでしまったんです。大きなケガはなかったのですが、すぐ横を車が通る場所だったので危なかったと思っていたら、その何日か後にコンペの開催を知らされました。これは少し運命的なものを感じましたね。

陶芸部の仲間と共同で作り上げたのは、陶芸部らしさのあふれる陶器をモチーフにしたヘルメット。「陶器のように繊細に、頭を守ることを意識してもらいたい」という思いを込めた作品は、特定の地域の焼き物をなぞることはせず、あえてどこのものかは分からないような模様を施したという自信作です。しかし、焼くわけにはいかないヘルメットで、焼き物らしい風合いを出すためには大きな苦労がありました。
植田 まっすぐではない面に対して、染め付け風のタッチが出せるのかという点で最初は苦労しました。油性ペンで書いてみたら、絵付けそのままのタッチというより、ヘルメットにあった現代的なタッチになることを発見しましたが、それを探るのに時間がかかりました。また、染め付けて本焼けしたもの独特のにじみをどう表現するかということも苦労しました。最終的に、ラッカー系のニスを塗装することで油性ペンを少し溶かして、染め付け感を出すという方法を編み出しました。
試行錯誤の末に生まれた、こだわりの塗装。コンペで入選を果たした後、予想以上の反響があったといいます。
植田 コンペの前は陶芸部が結構危機的状況で、部員が10数人しかいなかったんです。それが入選したことで話題になりまして、新入生がたくさん入ってくれて、今では70人近くになりました。どこで活動しているのか分からないようなサークルだと思われていたのですが、かなり多くの人に知ってもらえたので、効果は絶大でした。
普段は版画を専攻していることもあって、一人で制作する機会が多いという植田さん。このコンペでは普段と違う作り方に、新たな学びを得たようです。
植田美術・工芸学科では一人での自己表現しかやってきませんでしたが、今回は仲間と分担して共作することの楽しさを味わえました。これはコンペに出なければ分からなかったと思います。どうすれば多くの人に気に入られるものを作れるかということを学べたので、自己表現の作品においても、そういう視点で作ってみるのもアリなんじゃないかと思っています。
また、染め付けの再現を完全にできるわけがないという課題にあたって、どのようにすれば一番近い表現ができるかという考え方が生まれました。それを自分の作品に取り込んでいくと、また違ったものができそうなので、これからチャレンジしてみようと思っています。
ゆくゆくは、見た人の生活が少しでも豊かになるような作品を作れる、そういう作家になりたいと思っています。
新潟県の草花「雪割草」をモチーフに UXでつながるヘルメット

新潟県の草花「雪割草」をモチーフに
UXでつながるヘルメット
藥師神 美空さん
3人目にご紹介するのは、藥師神さん。デザイン学科でプロダクトデザインを学び、特にUIやUXの分野を専門としている4年生です。 藥師神さんは愛媛県出身。高校通学時の自転車ヘルメット着用が義務付けられている数少ない県で自転車通学をしていたことから、自転車ヘルメットは身近な存在でした。しかし、今回のコンペを機に改めて周囲を見回したところ、ほとんどの人がかぶっておらず驚いたといいます。
藥師神今まで全然気付いていませんでしたが、今回のコンペをきっかけに少し気にして見ていたら、ほとんど自転車ヘルメットをかぶっている人がいませんでした。愛媛で着用率が高いのは決まりがあるからで、「言われるから」「怒られるから」「みんなやってるから」という受動的な理由です。頭が蒸れるとか、髪がつぶれるとか思いながらもかぶっていますが、新潟だとほとんどかぶっていない。どうしたら能動的な行動に変わるのかというのを考えました。
ハピキャンのコンペを毎年やっているのは知っていましたが、テーマがあまり絞られてなかったので、なんとなくふんわりと考えるくらいでした。今回は自転車ヘルメットというテーマが絞られていたので、じゃあどうしたらいいんだろうと考えることができて、そのままアイデアが出てきました。

デザインのモチーフに選んだ雪割草は、新潟県の草花として指定されている象徴的なもの。ヘルメットの制作自体は順調だったものの、デザインが出来上がったところで、もう一つ別の問題に思い至ったと藥師神さんは振り返ります。
藥師神新潟県での着用率が低いことから生まれたテーマでしたので、新潟県の草花として象徴的な雪割草をモチーフに選びました。さまざまな色や種類があって、とてもかわいらしい花です。ヘルメットのデザインとしては、日常で使う時には主張が強すぎると使いにくいので、生活へのなじみやすさを意識して作りました。ヘルメット自体の制作は2日程度だったのですが、作り終わった後に、ヘルメットをかぶってほしいという課題はこれで解決したのか?という疑問がわきました。デザインが好きでかぶるという人はいても、それだけでは限定的です。かぶりたくなる仕組みを考えないといけないと思いました。
ヘルメットそのものはよくても、かぶりたくなる仕組みが課題として残りましたが、そこで藥師神さんは大学で学んできたUX(ユーザー・エクスペリエンス/利用者が得られる体験)デザインの観点から解決を試みました。
藥師神一人がかぶることで周りの人も巻き込んでかぶるような仕掛けを作りたくて、アプリを開発しました。ヘルメット自体にGPSが付いていて、走った経路に花が咲くような感じで記録が残っていくデザインを考案しました。サイクリングした先で写真を撮ったら、その地図上にピン留めできる機能も付けています。コースや写真を家族、仲間内で共有して、今度みんなで行ってみるかとなったらうれしいなと。周りの人もヘルメットをかぶって、メンバーみんなで共有できるというようなUXを考えました。
課題を解決するために、ペルソナやユーザー体験を考えて作品にしていくというのは、これまで大学で学んできたことです。塗装を習ったのも大学ですから、やってきたことを生かせたと思います。
大学で培ってきた技術が実を結んだ、今回の作品。この経験を将来にどう生かしていくのかについても聞いてみました。
藥師神今回のコンペは、一緒の課題を持っている方と接する貴重な機会だったので、それが学びになりました。私は新しい、面白いものを考えていくことが好きなので、将来はそういった特性を生かしていきたいです。社会にある課題を解決できるものやかたちを作って、それが実装されて、微力ながらも社会に何か変化を与えられるようなことができればいいなと思っています。
それぞれの得意分野を生かしながら、三者三様のアプローチで課題解決に挑んだ学生たちの作品は、デザインには「見た目の美しさ」だけではなく、「社会の課題に寄り添い、人の行動を能動的に変える力」があることを教えてくれます。指導した先生、協賛した新潟県の想像と期待を超えるデザインの力は、「ヘルメットをかぶりたくなる仕掛けとは?」という問いへの答えとなって作品に込められていました。
行政による地道な啓発活動に、デザイン専門大学の学生によるクリエイティブな視点が掛け合わさることで、自転車ヘルメット着用は「努力義務だから」ではなく「かぶりたいから」というポジティブな動機へと変容。彼らが真摯に向き合った「命を守るデザイン」のプロセスとそこから得た学びは、これからの社会をより安全なものへと変えていく確かな力になっていくのではないでしょうか。