自転車シミュレーターを使った指導方法は、前例がないなか、自分たちで考えるしかありませんでした。
浜松普及ブロックに当時出向していた交通教育センター※のインストラクターを中心に、最初の15分を座学でルールとマナーをしっかりと教え、そのあとですぐに乗るのではなく、学校の先生に悪い見本を提示してもらい、それを振り返りながら先生と掛け合いで課題をあぶり出し、最後にシミュレーターを体験する45分の指導ストーリーを作成し好評を得ることができました。
※交通教育センター:交通安全教育や指導者養成を専門のインストラクターが行う施設
自転車シミュレーターで、「危険を安全に体験する」教室は臨場感があると評判になり、浜松普及ブロックに、学校で出前授業をしてほしいと依頼が来るようになりました。しかし、地域で交通安全普及活動を定着させ、継続的に行うために、Hondaのスタッフが中心となるのではなく、地域の指導員さんに指導方法をお伝えし、教室を行って頂くようにしました。
鈴鹿のモビリティ研究会で開発していた教材「あやとりぃ」についても、自分たちなりに指導方法をアレンジし、地域の指導者の皆様に紹介をしました。警察や県庁を通じて県外にも声をかけ、岐阜や徳島へと活動を展開。その後は評判を呼び各地へと活動の輪を広げて行きました。
今年で8年目を迎える浜松普及ブロックに異動して5年になる設楽主任は当初、「なぜ一企業の交通安全活動がこんなに各地域から信頼されているのだろう」と不思議に感じたとのことです。しかし、所属して経験を重ねると、「単に教材を送って『使ってください』で済ませるのではなく、現場へ出向いて使い方や指導方法を一緒に考え、現場で汗をかいて、まさに安全を“手渡し”する姿を見て、地域の指導者との信頼関係が生まれていることに気づきました 。
一緒に汗を流し、手渡しの交通安全普及活動を行う。「前例に習うのではなく、自ら考えて行動し、期待を超える価値を提供するのがHondaです。交通安全普及活動にも『Hondaらしさ』が宿っているわけです」と二人は語りました。
2008年から手探りで活動を開始した地区普及ブロック。今では、地域指導員の研修会や新人の着任式で、地区普及ブロックのスタッフが講師として招かれるまでになりました。地区普及ブロックを設置するにあたり、当時の安全運転普及本部の事務局長が作成した資料のなかに、「世のため、人のため、交通安全のため」という言葉がありました。この言葉を今も胸に刻む錦織は「そういう想いで活動していますから、苦労したという記憶がないんです。毎日やりがいを感じながら仕事をしています」と話を締めくくりました。