SCENE 89信号が続く道片側1車線の信号が続く道を走っています。
夕方、あなたはクライアントとの打ち合わせが終わり、
車で会社に戻ろうとしています。
先方から値引きを要求され、頭を悩ませています。
女性の乗る自転車を追い越したところです。
この時、あなたは何に注意しますか?
見ているのに見ていない!?
信号の見落としにつながる「漫然運転」
問題の場面ではすでに車が横断歩道に近づいていたため、車両用の信号が確認できませんでした。しかし左側に見える歩行者用信号が青に変わっているので、車両用信号は赤になっていることが推測できます。短い間隔で信号が連続する道路では「同じタイミングで信号が変わるだろう」と思いがちですが、問題の場所のように歩行者用信号に押しボタンが付いていると、歩行者の有無でその信号だけ変わることがあります。押しボタンがなくても、各信号のサイクルを細かく変えている場所もあるため、安易な思い込みはせず、しっかり信号を確認するようにしましょう。
今回のように単調な道路で考え事をしていたり、同乗者と会話していたりすると信号の変化に気づくのが遅れたり、見落としたりする危険性があります。考え事や会話、疲労などで集中力や注意力が低下し、運転に集中できない状態は「漫然運転」に該当します。漫然運転は脇見運転や居眠り運転とは違い、ドライバーは前を向いているものの注意力が低下して前方の状況をしっかり認識していないため、信号の見落としや車のふらつき、ブレーキ操作が遅れる原因になります。
「漫然運転」は死亡事故につながりやすく、
法令違反別死亡事故件数で上位に!
令和6年の法令違反別事故件数(1当※)で最も多いのが「安全不確認(8万4555件)」。「漫然運転」も2万3733件と多いものの、件数では安全不確認の3割ほどです。一方、同じ法令違反別で死亡事故件数(1当)を調べると、最も多いのが「操作不適(357件)」で「漫然運転(340件)」は2番目に多く、「安全不確認(263件)」は4番目になっています。
つまり、漫然運転は死亡事故になりやすい違反と言えます。ちなみにそれ以前(2013〜2023年)のデータでは、毎年「漫然運転」が死亡事故件数で最も多くなっています。
今回のような仕事上の悩みはもちろん、休日の予定や夕食のメニューなど些細な考え事でも集中力は低下し、漫然運転の危険が生じます。運転中は運転以外のことはいったん忘れて運転に集中するようにしましょう。また、疲労や睡眠不足も漫然運転の原因になるため、運転する予定がある場合は体調を整えておき、長時間運転する際は最低でも2時間に1回は休憩を取るようにしましょう。
(資料=交通事故総合分析センター)
※事故の過失が重い順に1当(第1当事者)、2当(第2当事者)。過失が同程度の場合、ケガの程度が軽いほうが1当になる。
65歳以上の交通事故死者数の7割が「横断中」!
早朝や夕暮れ、ドライバーの発見遅れが多い。
2024年の交通事故死者数(1・2当)を状態別で見ると「歩行中」が約36%と最も多く、歩行中の中では「横断中」が約64%と最も多くを占めています。とくに65歳以上の高齢者は横断中に事故に遭うケースが約73%と多くなっています。横断場所では「横断歩道以外(約65%)」が多いものの、「横断歩道(約35%)」も3割強に上ります。
事故が多い時間帯は4〜8時と16〜20時、事故原因にはドライバー側の発見遅れや操作ミス、高齢歩行者側の確認不足や判断ミスが多くなっています。
今回のような夕暮れの横断歩道での事故は決して少なくないことを忘れず、横断歩行者の存在を見落とさないようにしましょう。
(資料=警察庁)

横断歩行者からの視点
上は信号待ちをしている高齢男性越しに見たもので、右側から青い車が来ています。信号待ちの際は、歩行者用信号や車両用信号を注視し、信号が変わったとたんに左右を確認せずに渡り始める人が少なくありません。しかし、車やバイクの運転者が急いでいたり、信号を見落としていたりするケースもあるため、左右から来る車両の停止をしっかり確認してから渡り始めることが大切です。とくに自転車は横断歩道のみで交差道路がないと信号無視をしがちで、信号の変わり目は信号無視が増えるので注意しましょう。
また、近づいてくる車のドライバーがよく見える場合、その様子にも注意しましょう。漫然運転を外からは判断するのは難しいですが、脇見や“ながらスマホ”は確認できることがあるので、しっかり前を見て運転しているかチェックするといいでしょう。




