SCENE 69住宅街の渋滞路停止車両の側方を自転車で走っています。
あなたは電動アシスト自転車に孫を乗せて、住宅街を走っています。
道路は渋滞し始めましたが、道幅に余裕があるため、
停止車両の左側をすり抜けて走っています。
前方の路地を子どもが乗った自転車が右から左に通過しています。
この時、あなたは何に注意しますか?
年間約3,000件起きている、自転車同士の事故!
信号がない交差点での「出会い頭事故」が多い。
自転車事故は四輪車との事故が多いものの、今回のような自転車同士の事故も少なくありません。2019年の「当事者相関別交通事故件数」を見ると、電動アシスト自転車(駆動補助機付自転車)を含めた自転車同士の事故は3,030件に上ります。しかも、四輪車や二輪車との事故は減少しているにもかかわらず、自転車や歩行者との事故はわずかに増えています。
なお、2010〜2014年の4年間に起きた自転車同士の事故を調べたところ、事故の4割は出会い頭事故で、信号がない交差点で起きています。また、事故の約半数は双方の道路幅員が5.5m未満の比較的小さな交差点で起きていました。つまり、今回のケースは自転車同士の事故の典型的な事例と言えるので、同じような場所に差し掛かった際には、他の自転車の存在を予測し、徐行して通過するようにしましょう。
(資料=交通事故総合分析センター)
電動アシスト自転車の事故が増加。
車重や小回りが利かない点にも注意!
電動アシスト自転車の販売台数は2009年は約32万台だったのが、2019年には約70万台と約2.2倍に増加しており、それにともなって事故も増えています。自転車事故全体は2009年の15万6,485件から2019年は8万3,503件と半分近くになっているのに対し、電動アシスト自転車の事故は1,105件から2,489件と倍増して、死亡事故の割合も高くなっています(1当+2当 ※)。
電動アシスト自転車はペダルを踏む力をモーターが補助するため、発進時や上り坂は負担が少なくふらつきにくいものの、バッテリーやモーターが重いため、いったんバランスを崩すと転倒しやすい傾向があります。とくに子どもを乗せていると、より重く、重心も高く倒れやすくなります。最近では前後に子どもを乗せることができる自転車もありますが、そのようなタイプはさらに車重が重く、車体も長くなるため、小回りも利きません。高齢者は体力や視覚機能が衰えて、バランスを崩すと自転車を立て直すのが難しかったり、危険に対する反応が遅れやすくなる可能性もあるので、急ブレーキや急ハンドルにならないよう速度を抑えて走りましょう。また、自転車を運転する場合、子どもはもちろん、運転者も転倒や事故に備えて必ずヘルメットを装着することが大切です。
なお、今回子どもがかぶっているのは、野球用のヘルメットです。
野球用はストラップ(あごひも)が付いていないため、衝突時に脱落する危険性があります。自転車用とは形状等も違うので、自転車乗車時は必ず自転車専用のヘルメットを正しくかぶるようにしましょう。
(資料=自転車産業振興協会、交通事故総合分析センター)
※事故の当事者の中で過失が重い順に「第1当事者」、「第2当事者」となる。過失が同程度の場合、けがの程度が軽いほうが第1当事者となる。
渋滞時のすり抜けには危険がいっぱい!
停止車両が急に左折したり、ドアが開く危険性も。
車が渋滞で停止していると、自転車やバイクは車の側方をすり抜けて行きたくなります。しかし、そのような「すり抜け」には危険が多く潜んでいます。まず、路肩にはゴミや砂が落ちていて滑りやすくなっていますし、段差などでタイヤをとられる危険性があります。とくに子どもを乗せていると、バランスを崩しやすく転倒する恐れもあります。また、渋滞を回避するために急に路地へ曲がったり、Uターンする車もいます。今回のように左側に路地がある場所では、停止していた車が急に左折することもあるので注意が必要です。さらに車のドアが開く可能性もあります。店舗や駅の近くでは、急いでいる同乗者が車を降りることもあるので、そのような場所では特に注意が必要です。
なお、今回の場合、停止車両の屋根越しに子どもの頭がわずかに見えていたのに加えて、先に通過した子どもが後ろを振り返っていたことから、続いて出てくる子どもの存在が予測できましたが、まったく手がかりがないこともあります。渋滞の車の横をやむを得ず通過する場合、とくに交差点付近では、自転車以外にも人が車の陰から横断してくる危険性を考えて、いつでも止まれる速度(徐行)で通過することが大切です。
自転車に乗った子ども側の視点渋滞で車が停止していて右側からも車が来ていないと、つい安心して道路を渡ってしまいがちですが、自転車やバイクは停止した車の側方を通過できるので、手前でしっかり一時停止して、安全を確認してから渡らないといけません。とくに子どもの場合、一時停止をしないで事故が起きるケースが多く、2019年の「自転車の法令違反別事故件数」でも、6〜12歳で最も多いのが「一時不停止(341件)」で、次が「安全不確認(326件)」で、全体の約55%と半数を占めています(1当のみ ※)。
今回のように友達の自転車に続いて走っていると、友達に追いつこうとして周りを見る余裕がなくなるうえ、先に友達が渡っていれば、自分もそのまま渡れると安易に考えてしまいがちです。
まず、横断する道路の手前でしっかり一時停止して左右の安全を確認。停止車両が動き出さないことを確認してから車の前でさらに止まり、自転車やバイクが車の陰から近づいていないかを十分確認してから道路を渡るようにしましょう。
(資料=交通事故総合分析センター)
※事故の当事者の中で過失が重い順に「第1当事者」、「第2当事者」となる。過失が同程度の場合、けがの程度が軽いほうが第1当事者となる。