SCENE 62市街地の交差点トラックに続いて左折しようとしています。
あなたは片側1車線の道を通って取引先に向かっています。歩道には下校途中の小学生や歩行者の姿が見えます。約束の時間に遅れそうなので、トラックに続いて急いで交差点を左折しようと思います。
この時、あなたは何に注意しますか?
急ぐ気持ちが安全確認を省略させる!
信号の変わり目はとくに注意。
時間に遅れていると、急いだり焦る気持ちが生じて、いつも行っている安全確認を忘れたり省略してしまいがちです。とくに信号の変わり目は「赤にならないうちに」と思って、横断歩行者を見落としたり、気づくのが遅れる危険性が高くなります。また、急ぐと速度を上げて前を走る車との車間距離を詰めてしまうため、死角も大きくなるので注意が必要です。
今回は左側にいた小学生が後ろを振り返って手を振っている様子から、別の小学生が交差点を渡ってくる危険性を予測することができましたが、必ずしもそのような手がかりがあるわけではありません。信号の変わり目は歩行者や自転車も急ぐので、より慎重に周囲を確認してから曲がりましょう。
ちなみに、平成29年に起きた交通事故件数(47万2,165件)を道路形状別で見ると、「交差点」での事故が約4割(19万536件)を占め、違反別事故件数では「安全不確認」が最も多く、約3割(13万7,214件)を占めています。
(資料=交通事故総合分析センター)
歩行中の交通事故死者数で最も多いのが「7歳児」。
「登下校中」「5月、6月」に多発!
歩行中の交通事故死傷者数を調べると「7歳児」が最も多く、平成27年では1,462人に上ります。平成29年の学齢別歩行者の死傷者数でも、7歳児に当たる「小学1年生」が最も多く1,291人に上り、そのうちの約半数634人が「交差点」で事故に遭っています。通行目的別で最も多いのが「登下校中」で、528人と約4割を占めています。
また、月別死傷者数では、小学校に入学してすぐの4月よりも5、6月のほうが多くなっています。地域によって入学当初に行われる集団登下校が少なくなることや、児童自身も登下校に慣れて緊張感が薄れてくることが原因と考えられています。
ドライバーは登下校中の小学生を見かけたら、その動きに十分注意することが大切です。
(資料=交通事故総合分析センター)
低学年の子どもを見たら、とくに注意!
交差点では、死角の大きい車とは離れて曲がる。
子どもは注意を引く対象を見ると、意識がそれに集中してしまいがちです。今回のように友達が横断歩道の向こう側で手を振って呼んでいれば、周囲の状況を確認することなく、横断してしまうものです。また、子どもも危険な対象を見つけだす能力を持っていますが、この能力は子どもの成長や経験とともに向上するもので、三重県鈴鹿市の小学校をモデルに行った研究から、小学1年生では「何が危険かわかっていない」子どもが多いことが指摘されています。たとえば、横断歩道を渡っている時、高学年の子どもは「左折してくる車が危ない」と答えたのに対し、低学年の子どもは「赤信号で停まっている車が怖い」と答えています。
つまり、今回のように左折するトラックに続いて曲がってくる車の危険を予測することは低学年の子どもに期待することは不可能で、ドライバー側の安全確認不足が事故に直結してしまいます。
死角が大きいトラックに続いて曲がる際はもちろん、子どもは車高が低い乗用車でも死角に隠れて見落とす危険性があるので、交差点を曲がる際は前車との車間を空けて、速度を十分落として曲がりましょう。
子どもからの視点
小学生に当たる7歳〜12歳の歩行者の違反別交通事故件数を調べると「飛び出し」が圧倒的に多く、約57%と半数を超えます(平成29年)。道路の向こう側から友達などに呼ばれると、つい急いで渡ってしまいがちですが、急な横断はドライバーの発見・対処が遅れて危険です。とくに、今回のように車体の大きなトラックの陰から渡ると、ドライバーからまったく見えず、事故の危険性が高くなります。信号の変わり目は車やバイクの運転者も急ぐので、歩行者用信号が点滅し始めたら、横断せず、次の信号を待ちます。
また、別の歩行者や自転車のため、車が横断歩道の手前で停止していることもあるので、車が停止しているからと言って、安全確認せずに車の前を横切るのも危険です。低学年の子どもをもつ保護者の方は、道路を横断する際はできるだけドライバーと目を合わせて意思を確認する「アイコンタクト」を行って、自分のために止まってくれていることをしっかり確認してから渡るように、子どもの成長に合わせて理解できるようになるまで繰り返し教えましょう。
(資料=交通事故総合分析センター)