SCENE 58高速道路のトンネル出口霧が出た山道をバイクで走っています。
あなたは休日、バイクに二人乗りして高速道路をツーリングしています。前日に台風が通過して、絶好のツーリング日和です。トラックや乗用車とともにトンネルを出るところです。
台風の前後は風が強いことが多いので、
吹き流しや道路情報板で風速を確認
台風が通過したあとは晴天になることが多いものですが、しばらく風が強いことがあるので、強風でバイクがあおられる危険性を考えておくことが大切です。とくに高速道路では速度が高いため、横風を受けた際により大きく進路が乱される危険性があります。事前に天気予報等で風速などを確認し、天気がよくても強風が吹く可能性がある場合、ツーリングの中止や延期を検討しましょう。
ただ、事前に天候が十分確認できなかったり、天候が急変することもあります。そのため、高速道路をツーリングするときは、道路情報板や吹き流しなどで、天候や風速を確認しておくことが大切です。
問題の場面をよく見ると、トンネルを出たところに吹き流しがあり、吹き流しが左向きに真横になびいていました。吹き流しが真横になびいている場合、風速10m以上の強風が吹いていることになるので、それを見落とさず、トンネル出口で横風の影響を受けることを予測します。また、トンネルの手前には「横風注意」の警戒標識、トンネル入口には「出口風注意」の道路情報板もあったので、それもしっかり確認しておくようにします。トンネルの中では風の影響を受けないため、外で強風が吹いていることを忘れてしまいがちなので注意しましょう。
トンネル出口や橋の上、山間部、
ビルの谷間は風が強いので注意!
台風の風は陸上の地形の影響を強く受け、入り江や海峡、岬、谷筋、山の尾根などでは風が強く吹きやすくなり、道路上では、橋の上やトンネルの出口で強風にあおられるなど、局地的に風が強くなることもあります(気象庁ホームページ『台風に伴う風の特性』より)。そのような場所には「横風注意」の警戒標識が設置されてることが多いので、警戒標識を確認したら速度を抑えて走るようにします。また、風が強い場合、道路情報板で規制速度を表示することもあるので、必ず規制速度を守るようにします。なお、ビルが立ち並ぶ商業地域では、「ビル風」と呼ばれる強風がビルの間を通り抜けることもあるため、たとえ一般道を走っていても油断は禁物です。
また、風速と走行中の車については、風速10〜15mでは「高速運転中では横風に流される感覚を受ける」。さらに風速20〜30mでは「通常の速度で運転するのが困難になる」。そして、風速が30m以上になると「走行中のトラックが横転する」ことになります(気象庁リーフレット『雨と風の階級表』より)。
強風にあおられても、
急ハンドルや急ブレーキは禁物!
今回のようにトンネルの外で強風が吹いている場合、トンネルを出たとき、車体が大きく流される危険性を予測し、それに備えます。まず風による影響を小さくするため、トンネルを出る前にアクセルを戻して速度を落とします。次にできるだけ風の影響を受けないように、無理のない範囲で上体を伏せて、ハンドルをしっかり握ります。ニーグリップ(両膝で車体や燃料タンクを挟む)ができるバイクはしっかりニーグリップを行って身体を安定させます。そして、風で流される危険を考えて、できるだけ車線の真ん中を走ります。
風にあおられると、慌てて急ハンドルや急ブレーキをかけてしまうこともありますが、高速走行中に急な操作をするとバイクが不安定になり、とても危険です。左に流されたら、右側に少しハンドルを切って戻すように必要最小限の操作を心がけましょう。
なお、ツーリングの際はバイク専用のジャケットなど、身体に密着する服を着ることも大切です。身体に合った専用のジャケットなら、バタつかず風をはらまないため風の影響を受けづらく、長時間走行した際の疲労軽減にも効果があります。
トンネル出口側からの視点
上の絵はトンネルの出口側から見たもので、パネルトラックは風の影響を強く受け、大きく進路が乱れる危険性があります。また、車高が高いワンボックス車やミニバンもボディ側面の面積が広いため、横風の影響を強く受けます。JAFユーザーテストでワンボックス車と一般的なセダンで横風による影響を調べたところ、時速80kmのときにワンボックス車はセダンに比べて約2倍(1.3m)横に流されました(JAF MATE1990年3月号掲載)。
平成30年の「西日本豪雨」の際には、橋や高架道路でトラックや軽のバンが強風で横転する事故も多数起きています。台風などで風速が20〜30mを超えるような強風が吹いている場合、走り続けずに安全な場所に車を止めて、風が収まるのを待つようにしましょう。
なお、バイクで2人乗りをしていると、車重が重くなって直進安定性は増すものの、風を受ける面積は大きくなるので注意が必要です。とくに今回のバイクのように、カウルや荷物を入れるケースを付けていると、風の影響を強く受けやすいので、そのようなバイクに乗っている場合、とくに注意が必要です。