コアラやカンガルー、そしてカモノハシなど、ほかの大陸とは異なる独特の進化を遂げてきたオーストラリアには、交通に関するルールにもユニークで独特のアイディアが取り入れられている。
それは「Right turn from left only(ライト・ターン・フロム・レフト・オンリー)」である。
日本語に訳すと「右折する場合は左側車線からのみ」ということになる。なぜこのような言葉があるかというと、オーストラリアのメルボルンの多くの道路では、中央をトラムが走っているため、右折レーンを作りにくい、または接触事故が起きやすいからである。
右折の手順は、原動機付きバイクの二段階右折と同じ要領。まずは左車線にいながら右にウインカーを出して交差点に進入し、さらに左に寄って停車して待つ。右折する側の信号が青になったら右折を開始するというわけだ。
これはメルボルンでもすべての交差点に存在するわけでなく、街の中心部の一部の交差点だけに存在する珍しい光景だが、メルボルン名物のひとつでもある。ちなみにメルボルンではこれを二段階右折とは言わず「フックターン」と言う。交通ルールの呼び名まで独特の進化を遂げたようである。このフックターンは慣れないとやや複雑だが、よく考えられたアイディアで、渋滞緩和にも役立っている。
朝夕に東京に負けないくらいの渋滞が起きるバーレーンで、あるとき交差点で信号機が変わるタイミングを観察していたら、こちらが赤信号なのに対向車線が青信号になっていることに気がついた。
つまり、バーレーンでは交差点の信号は対面同士を同じにしないことが多く、自分以外の車線が順番に青信号になってから、やっと自分の番がやってくるのである。ひどいときは5分くらい待たされる。これでは渋滞するのは明らかだが、こうすることで右折時の事故の確率は確実に減らせるのだろう。渋滞はもちろん好きではないが、これもよく考えられたルールなのだと感心した次第である。