開催日:2019年5月18日(土)
Honda(従業員・ご家族)/公益財団法人
オイスカ/山梨県富士・東部林務環境事
務所/森林組合関係者
山から流れた水は、私たちの生活に必要不可欠な生活用水や工業用水となります。Hondaはその水を作る森を守るため、1999年から地域とともに、「水源の森保全活動」を続けています。本活動を続けるためには、 “自分たちが森を守り、恵みの水を次世代へ受け継ぐ”気持ちも伝えなければなりません。そこで日本の信仰対象でもあり、多様性のある森を目指して100年がかりの保全活動が行われている富士山で、2回目の“Honda 富士山の森保全活動”を開催しました。
一部の生態系が獣害などで破壊されている富士山の現状を知れば、時間をかけて自然環境を回復、維持させる重要性を感じることにつながるはず。そうすればきっと、幅広い年齢層の人の環境への意識が変わるはず。富士山をきっかけに、身近な森への認識の変化や、何世代もかけて森を守る使命感を持つ人の輪が広がるのではないか。
そう考えたHondaは多くの参加者と共に、富士山(山梨県側)の2合目を訪れました。
富士山は日本国民なら誰もが知る、標高3,776mの日本一の山。登山道も整備されており、山頂への登山者は、2018年の調べでは約20万8千人でした(※開山日〜9月10日の8合目における登山者数)。
「富士山の森づくり」で作業するのは富士山の2合目。山梨県の県有林です。2合目と聞くと、低いイメージを持つ方もいるかもしれません。しかし実は、富士山2合目の標高は約1600m!
フランスのタイヤメーカー「ミシュラン」の三つ星観光地に選ばれた「高尾山」の標高は約600m、東京スカイツリーも634mなので、富士山2合目はそれらの約2.5〜2.7倍にあたります。その他、青森県にある八甲田山が標高1584m、九州の阿蘇山が1592m、群馬県の赤城山が1828m。富士山2合目は、他の山なら山頂に匹敵するほど高い位置にあるのです。
「2合目」や「5合目」と呼ばれる、山の「合目」が何を意味するかご存じですか?これは、富士登山の「困難の度合を目安として十等分したもの」(日本国語大辞典より)。
登山するときの目安なので、基準は標高ではなく登山の起点となる場所。山梨県側の場合「北口本宮富士浅間神社」が0合目ですが、この時点で標高はなんと約860m!高尾山より高い場所からのスタートなのです。「合目」がいつから使われ始めたか、正確なことは分かっていませんが、少なくとも江戸時代の富士山の絵図に描かれおり、そのころから浸透していたようです。
今回の保全活動は、昨秋の台風被害を受けた、苗木やシカ害予防のネットガードの補修と、倒木の処理、カラマツの間伐など、森の環境を整える作業を行います。
作業エリアまでの道は、台風による倒木がまだまだ残る状態。全員、安全のためヘルメットをかぶり、目を保護するためのゴーグルと作業用の手袋をつけ、道具を受け取ったら、それぞれ転ばないよう気をつけながら現地へ向かいます。
初めて参加された方からは「実際に森に入って木々を目にすると、木が朽ちていたり倒れていたり、遠くから見る富士山の風景とは違っていて驚きました」との声もありました。
森を育てるのは、苗木を植えて終わりではありません。自然の中では、鹿に食べられたり、台風で倒れたり、倒木が邪魔をしたり…… 、いろいろなことが起きます。その都度、森が荒廃しないよう、自律的に成長できるようになるまで手をかけてあげなければならないのです。
いよいよメイン作業開始。昨秋の台風で被害をうけた苗木の修復を行い、害獣対策として苗木用の筒状の保護材(ウッドガード)からネットへの付け替えや暴風への対策も行います。足場の悪い場所でしたが、指導員に従いながら苗木につけられたウッドガードを外し、新たにそれぞれの苗木の成長に合った害獣対策ネットを装着。風で倒れないようX字型に組んだ支柱で支える作業を全員で行いました。
苗木を植える”植栽”に比べると地味な作業に見えますが、「前回の作業よりも、森を守る仕事をした実感があります」と話す頼もしい参加者の方も。
日常生活ではあまり身近に感じられない森も、実際に足を踏み入れることで、一気に近い世界のことだと実感させられます。
「こんなことが起きるのか、森を育てるためにいろんな作業が必要なのだな」と感じられる機会を作ること。それが、それぞれが森を考えるキッカケとなり、森に関心を寄せるようになります。そして森や木は、人々のサポートを受けながらすくすくと育ち、大きく広がっていくのです。
参加者はスタッフなどを除いて104名。そのうち4割強が初めての参加でした。通常の水源の森保全活動はリピーターが約9割で、年齢層が少々高い傾向です。しかし今回は、シニア層から小さな子ども達まで、より多くの人が森に関心を持ち、保全活動ボランティアの輪を広げたられたのではないでしょうか。
今回の活動でもう一つ重要なのは、子どもが多く参加してくれたこと。森づくりは半年や1年で成果が見えるものではありません。たとえば材木は、伐採するまで60年かかるといいます。今日参加してくれた子ども達が立派な大人になるころ、木もやっと大きく育ちます。
今回初参加の方は「今後も継続参加し、10回目、15回目にどう森が育っているか、成長をこの目で見ていきたい」と語っていました。参加してくれた小さな子ども達も、何年後かに再訪したとき、自分たちが関わった森がここまで立派になったと感じ取ることでしょう。
植栽した樹木が自ら種子を作り、森が自律的に維持されるにはまだ年数を必要とします。しかし、今後も丁寧に森に寄り添い、環境に合ったサポートを人が加えていくことで、木はしっかりと根付き、森が親世代から子世代へ、さらに孫世代へとつながっていくのです。
再生された森は土壌に根を張り、台風や大雨が来ても土砂の流出を防ぎ、雨を保持して地下に蓄え、のちの世代にきれいな水や空気を与えてくれます。緑豊かで、季節によってさまざまな色を見せてくれる美しい景観も作り出してくれます。そんな未来の豊かな森を思い浮かべ、「子どもに経験して欲しい、みんなで一緒に作業した経験は絶対に心に残ります」と語る参加者もいらっしゃいました。
前回植えた苗木と再会!
成長の記録を公開します。
今はまだ小さいですが少しずつ成長
しています!
子どもに自然に触れる体験をさせたいなと思って、初めて参加しました。森林の奥深いところまで入ることは普段ないし、空気も綺麗だし、子どもには良い経験になったので、次回は妻も一緒に、3人で参加したいと思います。
折笠さん親子
会社に掲示していた森林保全のポスターに興味を惹かれ、ひとりで参加しました。環境破壊や温暖化という言葉をよく聞きますが、実際に現場に触れ、ちょっと日々の生活に気をつけようと思いましたね。他の部署や事業所の人と仲良くなれる、良い機会だと思います。今後は後輩も誘って、森の10年後や15年後も見ていけたら楽しみだなと思いました。
蛭田さん
富士山の森づくりの一番の特徴は、100ヘクタールを小規模な土地に分けるのではなく、複数の企業や団体が協働で行っていることですね。同じ目標に向かって森づくりをしているのが重要なポイントです。我々としては「森は森、人は人」ではなくて、人と森が一緒に生活することで森林を保全し、生活の中で森を感じられるようにしていきたいと考えてます。Hondaさんには今後も、多くの人が森に触れて体験して日本の森を知る機会を、より多くの人に提供していただければと思います。
オイスカ 啓発普及部/国内環境事業担当課長 長野さん
富士山に限ったことではないのですが、我々が作業している森林は、材木であれば伐採するまで60年かかります。林業の人は3代目、孫のために木を育てるという長期的な目で物事を進めているんです。我々も、保全活動を今の現役世代の従業員だけではなく、子ども世代、さらにその先の世代まで、3世代がつながる種まきの場所にしたいですね。
Honda 社会活動推進室 山口さん
富士山は社会貢献活動への参加者が少しでも増えて欲しいという思いで企画しました。ご家族や初心者の方でも安心して作業できる内容にし、富士山で経験したことが各地の森林保全活動につながり、地域の山々を活性化させ、親から子へ受け継がれていく。それがHondaとしての社会貢献と考えています。
Honda 社会活動推進室 室長 宮﨑さん
次世代へ向けた、
長い息での森づくりを体感!
保全活動は昨年も参加して「今年も行こう!」と思っていました。今日参加した、令和の時代の子どもたちが大人になってこの場所に来たら、最高じゃないかな。森づくりのことは絶対忘れないから、父や母に連れられて30年前に来た場所が、「今はこんなになってるんだ……」と感じる瞬間があったとき、Hondaってすごいなと実感すると思います。
官野さんご夫婦