延べ人数:7,336名
高専生:260名(26チーム)
Honda従業員・家族:300人
高専生たちのアイデアと熱戦に国技館が沸き立つ
ロボットづくりに青春をかける全国の高専生の聖地、両国国技館。
11月24日、今年も全国大会が開催され、全国から若きエンジニアたちが集結した。
アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)は、毎年テレビでも中継され、“高専生の甲子園”ともいわれる伝統の競技大会。学生に「発想することの大切さ」「ものづくりの素晴らしさ」を共有してもらう場として、1988年にスタート。Hondaは次世代を担うエンジニアたちのモノづくりへの情熱とチャレンジを全力で応援するため、2002年から特別協賛。従業員が地区大会・全国大会の審査員を務めるなど、サポートを続けている。
今年は全国の高専生124チーム、約1,900名がコンテストに参加。その中から、地区大会の戦いを経て選抜された26チームが、この日の全国大会を迎えた。
生活シーンに活きるアイデアを!
今年のテーマは「洗濯物干し」
今年のテーマは、人々の生活に密着した「洗濯物干し」。それは、「人の役に立ち、人間社会の生活を豊かにしたい」というHondaの想いと繋がるテーマだ。競技では2台のロボットを使用。Tシャツ、バスタオル、シーツを取り込み、3本の物干し竿にかけて得点を競う。同点だった場合は審査員が判定。より美しく干せた方が勝利を収める。
キーワードは「共感」
高専ロボコンは速さや正確さを競うだけではなく、見る者を楽しませ、感動を呼び起こすイベントでもある。特に今回は「美しさ」が評価されるということもあり、いかに観客や審査員からの共感が得られるかが重要なポイントだ。
ロボットゆえに到達していない
技術がある。だから難しい
洗濯物干しという作業は、誰もが行っている身近な仕事だが、布は柔らかく形がすぐ変わってしまうので、最先端のロボット工学でも難しい。せっかく洗濯物をうまく取り込んでも、運ぶ途中に形が少し変わるだけで、ポロリと落とすミスにつながる。さらにそれらを“美しく干す”のは至難の業だ。そんな難しい課題に、学生たちは果敢に挑んだ。
干し方いろいろ!
ユニークな発想に興奮と感動を生む!
大きなファンで風を起こし、洗濯物を飛ばす者や、まるで流鏑馬のように走りながらバスタオルを投げかける者。また、シーツを片側に寄せて干し、“乾きやすさ”をアピールする者や、Tシャツを射出するという派手なパフォーマンスで、あっと驚かせる者まで、アイデアにあふれたロボット達がすべての観客を惹きつけていた。
Honda賞とロボコン大賞のW受賞に輝いた奈良工業高専
メンバー:宮原康輔(4年)、上垣柊季(4年)、
坂本光皓(3年) ロボット名:飛鳥
Honda賞受賞理由は
2台の自動ロボットの見事な連携とロバスト性の高さ
※ロバスト性:外部環境の変化から影響を受けにくい性質のこと
2台とも自動ロボットにするのは、技術的にとても難しいチャレンジ。手動ロボットとは異なり、あらゆる状況を想定し、プログラムとして組み込んでおく必要がある。
この難問に取り組んだチームの一つが、今回Honda賞を受賞した奈良工業高専。驚いたのは、その完成度の高さ。2台とも自動ロボットでありながら、3試合連続でほぼ満点を記録するという安定した動きで、ベスト4に進出。準決勝で惜しくも敗れたものの、感動を生み出した彼らのアイデアに対して、会場からは惜しみない拍手が送られた。
印象的だったのはTシャツの干し方。アームにセットされた8枚のTシャツを、一気に物干し竿にかける様子は、まるで羽を広げた鳥のよう。これは「朱雀」をイメージしてデザインしたのだとか。
2台とも自動ロボットにした理由は、審査員に共感してもらうこと
ルール上、ロボットが展開できる高さは、自動ロボットが3.0mであるのに対し、手動ロボットは1.3mまで。2台の自動ロボットなら、両端を持ってシーツをより高く上げることが可能。「同点だと審査員判定になる。審査員を魅了しないと旗を揚げてもらえないと考えて、みんなでアイデアを出し合いました」。同点にもつれ込むことを予想した、見事な作戦だ。
「2台とも自動にするのは難しさがたくさんあって、何度も諦めそうになった。でも2台が協調してシーツを干すところは、自分たちが一番見せたかった点。それを国技館で実現できてすごく嬉しい」と感想を述べてくれた。
「他校にはないオリジナリティを大事にして、これまでストイックに頑張ってくれた。これからも努力を続けて、社会に出てからも活躍して欲しい」。そう語る指導教員の山口和也先生の視線の先には、成長したメンバーたちの頼もしい笑顔があった。
2台の高度な協調が授賞のポイント
脇谷勉さん
高専ロボコンはこの数年で、急速にレベルが上がってきた印象です。その中でも特に光っていたのが、奈良工業高専の技術力。出場校の中で2台とも自動だったのは、同校と鈴鹿工業高専だけ。2台のロボットを連携させるのは、それだけ難しいことなのです。しかも奈良は、シーツを干すところまで協調させていた。技術力の高さから、同校への授賞を決めました。
面白ロボット紹介
シーツがこんなところから?
都城工業高専「ハッとトリック!ポッポちゃん!」
さまざまなカラクリはまるでマジックショーのよう。頭からシーツが飛び出すという驚きの仕掛けや、Tシャツのハンガーが自走するアイデアで観客を沸かせていた。羽をバタバタと振動させ、洗濯物のシワを伸ばしてから干すという工夫もユニーク。
オバチャンの超高速走行!
大阪府立大学工業高専「OSAKA OBASAN」
ヒョウ柄の手動ロボットは見た目が完全に大阪のオバチャンだが、移動は超ハイスピード! 展開の早さが持ち味のチームで、わずか40秒でシーツを干すことができていた。ちなみに自動ロボットの方は洗濯機型で、同校はデザイン賞を受賞。
結束バンドの意外な使い方!
長野工業高専「森のイテェやつら」
関東甲信越地区大会では、Honda賞を受賞
まるで髪の毛のように見えるのは、実は結束バンド。この上に洗濯物を乗せると、ロボット本体から浮かせることができる。高さを調節し、その隙間に物干し竿が通るようにすれば、下をくぐり抜けるだけで洗濯物を干せるというアイデアは斬新。
フィールドがまるで宇宙に!
小山工業高専A「おやまちロケット」
自動ロボット(ロケット)が手動ロボット(宇宙飛行士)を持ち上げ、バスタオルを干す。洗濯物干しという日常空間が、宇宙空間に変わった一瞬だった。宇宙飛行士はちゃんと両腕を使って干していたのも可愛いポイント。
高専ロボコンに出場できるのは、手動と自動の2台のロボットのみ。通常であれば、フィールド上で動けるのはその2台だけだ。しかしそれ以外にも、動いている物があった。それはなんと、ハンガーと洗濯ばさみ!
各チームには、洗濯物を干すときの補助用具として、ハンガーや洗濯ばさみ等を使うことが許可されている。これは市販品をそのまま使っても、独自に製作しても構わないのだが、ルール上、モーターを動力源として搭載することはできなくなっている。
ただ、ゼンマイまでは禁止されていなかった。都城工業高専は、Tシャツのハンガーが自走。物干し竿の中央に置かれてから、黄色い得点エリアまで移動していた。また豊田工業高専は、洗濯ばさみが自走。シーツの端を持って、広げるのを手伝っていた。ルールを良く読み、時には裏をかく。それも想像力の一つだ。
優勝校インタビュー
香川高専(詫間キャンパス)
全試合満点での完全優勝!
国技館で実を結んだ僕らの努力
地区大会からここまで、すべて満点での優勝が本当に嬉しい。毎日毎日、予選と決勝の回数を決めて練習を行い、失敗やエラーが出ないようにしていました。放課後にロボットを調整し、体育館に運んで練習するのはすごく大変で苦しかったですが、晴れてこういう形で終わることができて良かったです。
僕たちのロボットは、確実に満点を取れるシンプルな機構が持ち味。その一方で、Tシャツを射出する派手な機構もあるのが面白いところです。パーツとして、既製品の洗濯ばさみをたくさん使っているのも魅力だと思っています。
大会結果
全国大会 大会結果
地区大会のHonda賞受賞校
-
北海道釧路工業高等専門学校 B
-
東海北陸富山高等専門学校(本郷)B
-
近畿神戸高等専門学校B
-
四国弓削商船高等専門学校 B
-
東北仙台高等専門学校名取キャンパスB
-
関東甲信越長野工業高等専門学校A
-
中国徳山工業高等専門学校A
-
九州沖縄熊本高等専門学校八代A
18年間にわたり高専ロボコンに関わってきたHonda。
未来のエンジニアたちには、実践を通じて技術を学び、仲間と悩みながらもチャレンジし続けてほしいと願ってきた。
「その設計は非常識だ」「現実的じゃない」「前例がない」……
そんな固定概念を、高専生の自由で柔軟なアイデアが、軽々と超えてゆく。
学生の、今だからできること、今しかできないことを応援したい。ものづくりに対する純粋で熱い情熱に寄り添っていきたい。
Hondaは、これからも高専ロボコンを通じて、夢を追い続ける未来のエンジニアたちを応援してまいります。