苦しい日もあった。悩んだ日もあった。だけど楽しかった。
メンバー全員のチカラがひとつになって、
素晴らしいマシンができあがった。
戦いの準備はできている。 いくぜ! 競い合うあの場所へ。
2018年、Hondaエンジンとともに挑戦する
芝浦工業大学Formula Racing SHIBA-4
彼らとともに、もてぎ試走会と全日本大会をレポートします。
SHIBA-4もてぎ 試走会レポート
大会後レポート
9月4日〜8日、静岡県小笠山総合運動場「エコパ」。全日本大会のチーム受付が始まる4日から、今年の大会の流れを示唆するような天候による影響が出ていた。この日予定されていた午後からの静的審査は中止され、翌日に順延となったのだ。全日本学生フォーミュラ大会はこの後4日間にわたって、プレゼンテーション審査、コスト&製造・デザイン審査、車検、アクセラレーション・スキッドパットと、全長800mのコースを走行するオートクロスとそのタイムによって出走クラスが決定するエンデュランスによって総合的に審査される。出走したチームは、国内・海外あわせて93チーム。すべてのチームが整然と並ぶピットエリアは、各大学のチームメンバーとマシンの熱気にあふれていた。
9月8日、エコパは早朝から秋らしい青空と突然の雨が交互にやってくるという天候。SHIBA-4チームは、オートクロスで総合4位というタイムを叩き出して、見事に最終日のファイナルシックス※の出走を決めていた。総合優勝を目指す彼らにとって、ファイナルシックスに残ることは絶対条件だった。ピットではメンバーの誰もが明るい表情を浮かべていたが、出走を前にしてマシンの周りには緊張感が漂っていた。レインタイヤか、ドライタイヤか、セットアップはどうするのか。午前中は、晴れ間に突然のスコールという状況で、エンデュランスAクラスを走ったある上位チームは、ドライタイヤでスタートして周回中に雨が降り出すという不運に見舞われていた。午後になると、青空は見えるが時折雨も降るという状況。30分先の路面状況も読めないまま、レインタイヤを組み込む。そして、ファイナルシックスのスタートが近づく頃、ついに土砂降りとなってきた。
※ファイナルシックスとは、オートクロスで上位6位のチームが出走できるエンデュランスのこと。
2名のドライバーが交代で周回コース約20キロを走行する。
ファイナルの出走を控えた2人のドライバーに、今の気持ちを聞いてみた。スタートドライバーを務める2年生の白崎稜さんは「緊張もしているけれど、何よりも嬉しい。チームのために走ることが楽しみ。」と語る。彼は、前日のドライコンディションのオートクロスでS015のポテンシャルを引き出して4位のタイムを叩き出し、ファイナルシックス進出を決めた。その時のことを「自分としてはタイム的にまだ悔しいと思いましたが、チームを見ると涙ぐんでいる人もいて、チームに貢献できた!ファイナルでもチームのためにマシンの力を最大限に発揮する!という気持ちだった」。さらに、人として成長できる学生フォーミュラは、やっぱり面白いと熱く語ってくれました。
ゴールを目指して後半を走る3年生の五十嵐雄大さんは「無心の状態で走りたい。今回はトップグループのタイムが接近していて、総合順位もパイロン1本で変わってしまうので、自分たちの走りに集中して結果に残していきたい」と冷静に語る。コースに置かれたパイロンに接触すると1本で2秒のペナルティになってしまうシビアな戦いだ。そして、これからドライバーを目指そうとする人たちに向けて、「自分たちの手で車を作って走るというのは、ものすごく鳥肌ものです。走るまで本当にドキドキで、そういうのを味わってほしい。」と語ってくれました。
芝浦工大OBでSHIBA-4チームのプロジェクトリーダーの経験をもつ大河原悠介さんは、2017年にHondaに入社し、今年の全日本大会ではダイナミックイベント(動的審査)のサポートスタッフとして参加している。「チームとして参加している時は周りが見えていませんでしたが、スタッフとして参加してみると、運営側というのはこんなにも安全やすべてのチームのことを考えているのだと感じました。私が担当するポストは、走っているドライバーとフラッグでコミュニケーションをとるので、ミスがあれば結果に影響してしまうのでとても重要です。」と語る大河原さん。いちばん印象に残るのは、エンデュランスで完走できたドライバーとマシンが戻って来た時のチームメンバーの笑顔だとおっしゃっていました。
各大学のピットの近くに、大きな白いテントがある。そこは深刻なマシントラブルを抱えたチームの駆け込み寺のような存在のHondaの修理工房。そのテントで話を伺ったマイスタークラブ会長の関口昌邦さんは、まるで伝説のようなエンジニアの方でした。関口さんは、Hondaの研究所の試作部門に始まり、初代NSXのアルミボディの設備開発を経て、第3期F1活動ではカーボンモノコックボディの製造開発、さらに現在も続く第4期F1活動の開発拠点であるHRDさくらの風洞設備にも関わったという、まさしくフォーミュラマシンのマイスター。突発的なトラブルを抱えた学生フォーミュラのマシンを治すサポートをしている関口さんに、学生たちにかけている言葉は何かを伺いました。「大会に来たら、笑顔で帰ろう。今日ダメだったところがあっても笑顔で帰って、また来年、笑顔でチャレンジしてほしい。分からないところは、マイスタークラブ に相談してくれたらいい。」そう笑顔で語る関口さんから、学生フォーミュラへの愛情を感じることができました。
14時。晴れていた空に重い雲が広がり始めていた。ファイナルシックス出走を控え、SHIBA-4チームはエンデュランスコース手前の暖気エリアにS015を移動させる。3年生が中心となってマシンを運び、2年生がサポート、1年生たちも見守っている。そして暖気エリアについた頃、ついに雨が降り始めた。コースはウエット宣言が出され、直前のグループAクラスの出走は中断。時間が過ぎるほどに雨はひどくなる。ここで出走順が変更され、通常の2チーム×3レースから、3チーム×2レースとなった。オートクロス4位のSHIBA-4は最初の3チームの出走となる。上位3チームが後の出走だ。土砂降りの中ピットに移動した頃には、コースはもはやヘビーウエット状態だった。
ついにS015がコースイン、ドライバーは白崎さん。激しい雨の中、タイムを縮めていく。同時出走の中ではダントツのタイム。10周を走りきり、五十嵐さんへとドライバー交代。雨が弱くなるにつれてタイムを削っていった。チェッカーを受けると、サポートスタッフ全員が拍手で迎える。SHIBA-4チームも涙で迎える中、マシンはそのままレース後の騒音チェックを受ける。OK、エンデュランス完走だ。その瞬間、リーダーの諏訪さんは感極まって泣き崩れていた。路面が乾き始め、出走を控えた残り3チームはさらにタイムを縮めていくだろう。でも、SHIBA-4チームはそれどころではなかった。完走の喜び、1年間のゴールに、全員が感動に包まれひとつになっていた。
大会のすべてのイベントや記念撮影の盛り上がりも終わった頃、撤収準備を見守るリーダーの諏訪さんの姿があった。お疲れ様でしたという言葉とともに、全日本大会までの総括を伺った。「大会を通じて様々なことが変化していく中で、比較的臨機応変に動いてしっかりと全行程を走りきることができたので、全力は尽くせたと思います。悔しい結果の部分は来年しっかり挽回できるように、次のチームを支えて頑張っていきたいと思います。」と、早くも次のチームへの期待を語っていた。リーダーとして学生フォーミュラに関わって、何を得たのかを伺うと、「まず、人間的に自分を理解することができた。チームのことを考えることで自分を見つめ直す、すごく重要な1年間だったと思います。」との答え。さらに、「学生フォーミュラを経験して、クルマに対する意識は180度変わりました。小さなマシンの設計でも大変なのに、何千、何万もの部品を集めてできているクルマはどうやってできるのかということを身をもって感じる活動でした。」と続けてくれた。最後に、Hondaのサポートや講習、会話を通じて知見が広がったことへの感謝の言葉をいただくとともに、エンジニアとなる決意を固めたことを伝えてくれました。
諏訪さんに次期リーダーのことを尋ねた際に名前が上がったのが、2年生ながら信頼を置かれ、ファイナルシックスのピットメンバーも務めた沼野さんでした。8月に2年生全員が集まった時に、次期リーダーになることが決まったとのこと。「この大会では、リーダーになったらできないようなことを、今やろうという気持ちで楽しみました。」と答える沼野さん。次世代のSHIBA-4チームのことを伺うと「次のメインとなる世代は、今年の倍近い12人もいます。だから僕たちの世代では、新しいことにチャレンジして、優勝して、そしてまた次のステージへとステップアップしたい。」とリーダーとしての意欲を語ってくれました。
第16回 全日本 学生フォーミュラ大会に参加したすべてのチームにエールを贈ろう。
シェイクダウンからチームに密着し、マシンとメンバーの姿を追い続けた芝浦工業大学Formula Racing SHIBA-4チーム。リーダーをはじめ、多くのチームメンバーを通じて、学生フォーミュラに挑むことのやりがいと楽しさ、難しさが見えてきた。1年間をかけてつくられるのは、マシンだけではない。チームの一人ひとりに、頑張った分だけの知識と知恵を生み出す経験と想い出がつくられる。
Hondaは、これからも学生フォーミュラを応援していきます。
SHIBA-4もてぎ 試走会レポート
大会後レポート
「ファイナルシックス」は、頂点の戦い!
学生フォーミュラの動的イベントには、75mの加速を競う「アクセラレーション」、8の字コースを周回する「スキッドパッド」、直線やターン、スラロームを組み合わせた800mのコースを走行する「オートクロス」がある。そのオートクロスのタイムで出場するクラスが決まるのが、「エンデュランス」。これは、1周1000mに延長した周回コースをドライバー2名が10周ずつ走行する、全日本大会のハイライトだ。さらに全出場チームのトップタイム上位6チームのみで競うのが、「ファイナルシックス」。まさしく、すべての参加チームが目指し、憧れる、栄光のファイナルレースとなる。
みんな「ドリーム工房」で育っていった?
ツインリンクもてぎの北ショートコースの隣には、「ドリーム工房」という名の建屋ある。ここは、Honda OBで結成された技術者集団「マイスタークラブ」のマイスターたちが、学生フォーミュラの設計・製作を技術的視点で支援する拠点だ。モノづくりの喜びと技術の伝承をモットーにするこのドリーム工房では、各大学の学生たちが設計のイロハから溶接、エンジン分解・組立など、実際にパーツや工具を手にしながら貴重な体験を重ねて成長していく。
「フォーミュラ」の意味って、知ってる?
1年間かけて作り上げてきた、汗と涙の結晶のような学生フォーミュラのマシンたち。コースを走る姿を夢見て、準備万端でピットに並べてみても、走らせてもらえないことがある。それは、車検やブレーキテストといった厳しい審査があるからだ。そう「フォーミュラ」という言葉は「決まり」や「規格」という意味。安全と公平な競争のために決められた規則「レギュレーション」にすべて合致していなければ、走ることはできない。よく聞くF1も、グレード1規格=フォーミュラ1という意味だ。
「全日本大会」に、海外チームも集まる!
全日本学生フォーミュラ大会といっても、参加するのは日本のチームだけではない。2018年、第16会大会は参加登録チームが全部で98チーム。その内訳は、ガソリンエンジンのICVクラスが国内64チーム、海外17チーム。電動のEVクラスでは、国内10チームに対して、海外勢が7チームにもなる。インドネシア、中国、タイ、台湾、フィリピン、韓国、マレーシアなど、アシアを中心に多くの地域から参加。さらに海外で活躍する強豪のオーストリアからのチームも注目を浴びている。
「ファイナルシックス」は、頂点の戦い!
学生フォーミュラの動的イベントには、75mの加速を競う「アクセラレーション」、8の字コースを周回する「スキッドパッド」、直線やターン、スラロームを組み合わせた800mのコースを走行する「オートクロス」がある。そのオートクロスのタイムで出場するクラスが決まるのが、「エンデュランス」。これは、1周1000mに延長した周回コースをドライバー2名が10周ずつ走行する、全日本大会のハイライトだ。さらに全出場チームのトップタイム上位6チームのみで競うのが、「ファイナルシックス」。まさしく、すべての参加チームが目指し、憧れる、栄光のファイナルレースとなる。
みんな「ドリーム工房」で育っていった?
ツインリンクもてぎの北ショートコースの隣には、「ドリーム工房」という名の建屋ある。ここは、Honda OBで結成された技術者集団「マイスタークラブ」のマイスターたちが、学生フォーミュラの設計・製作を技術的視点で支援する拠点だ。モノづくりの喜びと技術の伝承をモットーにするこのドリーム工房では、各大学の学生たちが設計のイロハから溶接、エンジン分解・組立など、実際にパーツや工具を手にしながら貴重な体験を重ねて成長していく。