フォーミュラカーによる「モノづくり」への挑戦。

学生たちのプロジェクトの真価を問う

「もてぎ試走会」

Hondaがモノづくりを通じて将来の
優れた技術者を育てたいとの想いから、
積極的に支援をしている「学生フォーミュラ大会」。
コンセプトづくりから設計・製作と、
1年間の学びとモノづくりを通じて磨き上げてきた
マシンの成果を試すのが
「もてぎ試走会」です。

開催日:2017年8月24日(木)〜2017年8月25日(金)曇り

栃木県芳賀郡茂木町(ツインリンクもてぎ)

曇り
参加人数 学生:208名(13チーム) Hondaスタッフ(OB含む):34名 Honda以外のスタッフ:10名 参加団体 Honda、(公社)自動車技術会 関東支部 参加人数 学生:208名(13チーム) Hondaスタッフ(OB含む):34名 Honda以外のスタッフ:10名 参加団体 Honda、(公社)自動車技術会 関東支部
総務部 社会活動推進室 前原洋一 総務部 社会活動推進室 前原洋一
今回は私がご案内します

「ツインリンクもてぎ」の試走会は、1年間学んできて、丹精込めて組み上げてきたフォーミュラカーを実際に走行させてみる大事なチャンスなので、学生たちも相当気合い入れて参加してきます。

総務部 社会活動推進室
前原洋一

学生たちの挑戦を支えるために
全力でバックアップ

「全日本学生フォーミュラ大会」の全日本大会に先立って、学生たちが製作中のマシンの状態を確認する試走会が各地で行われます。大会を約10日後に控えた8月24日(木)~25日(金)に、栃木県にあるHondaのモータースポーツ関連施設「ツインリンクもてぎ」で自動車技術会 関東支部が主催する試走会が開催されました。このもてぎでの試走会(以下、もてぎ試走会)は、毎年恒例となっており、Hondaは協賛企業として、マイスタークラブやサポートスタッフとともに学生たちのマシンづくりや試走のバックアップを行っています。
今回は、走行会に参加した多くの学校のうちHondaエンジンを搭載する「ものつくり大学」と初出場の「埼玉大学」に、この 試走会に至るまでの道のり、参加することの意義やその楽しさについてインタビューを行いました。
 学生たちの挑戦を支えるために全力でバックアップ  学生たちの挑戦を支えるために全力でバックアップ
参加大学 参加大学

「夢」を背負って走る!
ものつくり大学に秘められた
Hondaとの絆。

ものつくり大学 プロジェクトリーダー:佐藤好倫さん ものつくり大学 プロジェクトリーダー:佐藤好倫さん
私たち「ものつくり大学」は、内製率が高く、マシンの設計から製作まで基本的には自分たちでやってきましたが、これだけのものを創りあげるには、チームワークや、グループで一つのものを創る難しさを学べるのが学生フォーミュラの魅力だと感じています。
ものつくり大学
プロジェクトリーダー:佐藤好倫さん

モノづくりの「夢」をたくす

取材チームがもてぎ北コースでものつくり大学のピットに伺って、彼らのマシンを眺めたとき、私たちの目に飛び込んできたものがありました。それが、マシンのシートバックに描かれた「夢」という文字です。
その「夢」は、Hondaの創業者である本田宗一郎直筆の「夢」という文字です。私たちはこのマシンにものすごく感激しました。そして、ものづくりにこだわる「ものつくり大学」にはとてもふさわしいと感じたのです。
ものつくり大学のマシンコンセプトを伺うと「昨年のコンセプト『コーナリングマシン※1』に加えて、応答性とかハンドリングを向上させています」と答えてくれたのは、テクニカルディレクターとドライバーを兼務する葛西さん。
「いままでのマシンに比べていちばん使いやすいというのをすごく感じます。コーナリングマシンとして、いい方向にセッティングは決まってきているし、課題も明確になってきているので、また来年はそこを改善すればいいと言うのもわかってきました」とポジティブに語ってくれました。

※1 コーナリングマシンとは : サーキットやコースなどでは、カーブのことを「コーナー」と呼びます。「コーナリングマシン」とは、加速や最高速の重視よりも、そのコーナーを旋回する速度を高めることを重視して、トータルの走行タイムを向上させることを目指したマシンづくりです。

今回は総合順位で一桁を狙える位置にいると思います。ペナルティをもらわずに完走して、一桁台でゴールしたいですね。 モノつくり大学 葛西大吾さん

熟成が進んでいるという実感

「目標は総合順位で一桁台」と力強く語るその自信の裏には、先輩たちの姿や「ものつくり大学」として守ってきたこだわりがあるようです。「自分たちでつくれるものはつくる、というのはあります。自分たちも限られた設備の中で、どうつくるかをいつも模索しています」
チームの仲間たちについて伺うと「4年間、大学でいちばん楽しく語り合えた存在だったと思います」との回答。チームとして学んだことを社会人になって活かしていきたいと語ってくれました。

さらに年7回行われるHondaマイスタークラブの講習会もまた、チームの成長を支えてくれる貴重な経験となっていることも教えてくれました。「マイスタークラブの講習会には、いろいろなメンバーが参加しています。実際に製作やレースに関わっていた方の話はすごく貴重だと思います。『いままでこのやり方をしてきたけどこれは間違っていた』という気づきを与えてくれて、それをメンバーみんなでシェアしています」。

ものつくり大学のマシンは、2日間の走行会を通して、大きなトラブルに見舞われることもなく、本大会に向けて順調にカリキュラムをこなしているように見えました。それは、これまで受け継いできた伝統と、自分たちが掲げる今年のマシンコンセプトがうまくマッチし、自分たちがめざす方向にマシンの熟成が進んでいることを意味しており、本大会での躍進に期待を抱かせる力強い走りを走行会の終わりまで見せていました。

ゼロスタートから初のコース走行へ!
初参加チームとして注目を集める
埼玉大学。

埼玉大学 プロジェクトリーダー:小林祐太さん 埼玉大学 プロジェクトリーダー:小林祐太さん
チームが発足したのが昨年で、今年が初挑戦になります。きっかけは、自動車好きと機械好きが集まって。ほんとうに、みんなクルマが好きで、楽しくてしょうがないというメンバーが集まったと思います。
埼玉大学
プロジェクトリーダー:小林祐太さん

2017年の「もてぎ試走会」に、初めてマシンを持ち込んだチームがありました。
マイスターをはじめ、Hondaスタッフからも注目される新規参入チーム。それが、埼玉大学学生フォーミュラプロジェクトチームです。本当にゼロからチームを立ち上げ、わずか1年でマシンを走らせた埼玉大学チームに私たちも注目してみました。

手探りの連続から、わずか1年でマシンと
チームをつくりあげた

もてぎで初の車検、コース走行を実現した埼玉大学チーム。1年前の「三支部合同試走会」を見学することから始めたという驚きの言葉から始まった取材は、まさに手探りでチームを立ち上げ、「モノづくり」の喜びと「チームワーク」に満ちた1年間をお聞きすることができました。

「まず、何から手をつけたのか? 」素朴な疑問を小林さんに聞いてみました。「最初は自動車技術会に連絡をとって、それで説明していただいていろいろと理解できました。エンジンは先生も僕もHonda好きだったこともあって、Hondaエンジンにしようと決めていました」。とのコメント。話を伺うにつれて、埼玉大学チームのすごいところは、「やるべきこと」を見つめ、「実直に行動」し、「支援を求める」ということだとわかりました。

本当にこの一年はすごく成長できました。将来エンジニアになる身としても、機械の仕組みがよくわかりました。それに、どうすればチームが一つの目標に向かって動いていくのかということも、カラダで理解できたと思います。 埼玉大学 小林祐太さん 本当にこの一年はすごく成長できました。将来エンジニアになる身としても、機械の仕組みがよくわかりました。それに、どうすればチームが一つの目標に向かって動いていくのかということも、カラダで理解できたと思います。 埼玉大学 小林祐太さん

「どうすればみんなが設計に移れるのか。他の大学では、昨年のマシンがあるのですが、どうすれば設計を始められるかがわからなかった」と、1年前を振り返る小林さん。
そこからの取り組み方もまた、驚きでした。「まず必要な機構を把握することが大切なので、芝浦工業大学さんに見学させていただき、自分たちで機構を覚えるために構成部品を書き出せるようにして、それを埋めていきました。それをもとに必要な機構がわかったので、文献を見ながらよし作っていこうと」。そう語る小林さん。車検に持ち込まれた埼玉大学のマシンは、そう感じさせないほどの完成度でした。

初走行とは思わせない安定感

「シェイクダウン※2を校内で行いましたが、実際に長時間を走るのは今日が初めてです。」ピットにマシンを並べ、コースに出て周回を重ねる彼らの姿からは、とても初走行とは思えない安定したチームワークを感じました。

「目標は30位以内。」と決意を語ると同時に、講習を重ねたマイスタークラブとのエピソードも語ってくれました。

「マイスターの方には、自分たちが作った図面に色々とアドバイスをいただいて、ほんとうに助かりました。それに作業場の改善点も伝えていただいて、とても使いやすい作業場になりました。自分たちでは絶対に気づかなかったことが多くて、さすがにHondaのマイスターの方々とみんな喜んでいました。」

ゼロからの挑戦を実現した埼玉大学プロジェクトチーム、全日本大会にも注目です。

※2 シェイクダウンとは : 機械などの「慣らし運転」を意味する言葉ですが、とくにサーキットなどのモータースポーツでは、完成したばかりの新車において、組み付けや不具合を確認するためのチェック走行のことを指します。

総務部 社会活動推進室 前原洋一
担当者の声

社会活動としての学生フォーミュラ支援は、自動車メーカーにとっても貴重な次世代育成プログラムです。学生フォーミュラを経験してきた人には、まずその経験を活かして、将来いい企業人になってほしいと思います。

総務部 社会活動推進室
前原洋一

マイスタークラブ マイスタークラブ

もてぎ試走会を支えるのは、
やはり「マイスタークラブ」

マイスタークラブ

もてぎ試走会の魅力のひとつに、学生たちを支えるHondaを定年退職した技術者集団「マイスタークラブ」の存在があります。

参加するチームにとっては、年間7回開催される講習会だけでなく、実際に車検やシェイクダウン走行、完熟走行を行うコースに「マイスタークラブ」のスタッフがいることは、思わぬトラブルの解決や、セッティングのアドバイスなど、レースや開発の現場で鍛えられた豊富な経験と知識がきっと役に立つはずです。さらに、もてぎ試走会の会場となる「北ショートコース」には「マイスタークラブ」が活動の拠点とする「ドリーム工房」が併設されています。

マイスタークラブ 飯塚政雄さん

マイスタークラブ
飯塚政雄さん

工夫することで、実現できることは数多くあります。

私はHondaに入ってまだ二輪の生産しかしていない時代に、最初の四輪の開発を始めましたが、そのときの小さな工場には、道具も何もなく、水平を出すための平らな定盤しかありませんでした。あとはいろんなものを自分たちで考えて、開発やテストのための資材を作ってきました。そういう経験をしてきましたから、マイスタークラブの「夢工房」では、足回りの精度を出していくためのトーインゲージというものを高いお金を出して買うのではなく、工夫して同じことが出来ることや、ペットボトルに水を入れた道具で水平が取れる簡易水準器などを教えています。そういった工夫することでいろんなことが出来るという実技を講習のなかで伝えています。

マイスタークラブ 村越弘昌さん

マイスタークラブ
村越弘昌さん

直接の答えではなく、ヒントを与えるということを心がけています。

私たちが伝えているのは、本当に基礎的なことです。図面を描くときに大切なことや、モノをつくるときにどうしたら作りやすいかという、そういう知識をお伝えしています。そこから先は彼らの仕事です。また、コンセプトや開発スケジュールの立案の大切さなど、結果よりも過程が大切であるということも伝えています。学生の皆さんはかなり苦労しているようです。経験を積むと質問の内容がどんどん具体的になってきます。そういう変化を見ていると嬉しいですね。

本大会レポートを見る

モノづくりに夢を託し、初めての挑戦にも果敢に立ち向かう。ひとつの目標に向かって全力で取り組む学生たちの情熱に満ち溢れた2日間となりました。モノづくりを通じて将来の優れた技術者を育てるプログラムとして、「全日本学生フォーミュラ」に、Hondaはこれからも積極的に支援を行ってまいります。