2026.09.30

愛おしい相棒の作り方。
児島ジーンズとHondaが織りなす、育てるプロダクトの魅力。

2026.09.30

愛おしい相棒の作り方。
児島ジーンズとHondaが織りなす、育てるプロダクトの魅力。

一見すると交わることのなさそうな二つのモノづくり。しかし、そこには綿密に設計されたプロダクトが「使う人のライフスタイルに馴染み、ともに育っていく」という共通項がありました。国産デニムの発祥地・岡山県倉敷市児島を訪ね、〈Honda〉と〈児島ジーンズ〉の異色コラボレーションの裏側にある、情熱と職人技を紐解きます。

モンキーパンツとモンキーバイク。

〈Honda〉と〈児島ジーンズ〉のこれまでのコラボレーションで生まれたアイテムの一部。

たとえ業種が違っていても、ひょっとしたら「ものづくり」というのはどこか深いところでつながっているのかもしれません。

乗り物と服。異業種、〈Honda〉と〈児島ジーンズ〉のコラボレーションは、一体どのようにして生まれたのでしょうか。訪れたのは、国産デニムの発祥地として全国にその名を馳せる岡山県倉敷市児島。「本当にジョークみたいな話なんですよ」と、〈児島ジーンズ〉の代表取締役・久米さんは当時を振り返ります。

〈児島ジーンズ〉の代表取締役・久米さん。

「僕らがもともとバイク好きで、モーターサイクルショーに出展したのがすべての始まりでした。ウチの定番に「モンキーパンツ」というバイカーに人気のツートーンの切り替えパンツがあるのですが、展示会場で〈Honda〉の担当者さんに「〈Honda〉にもモンキーというバイクがあります。この二つがコラボしたら面白いじゃないですか!」と声をかけていただいて、トントン拍子に話が進んだんです」

【コラボレーションアイテムその1】「ホンダコラボ モンキーコンボパンツ」
互いに「モンキー」の名を持つ奇跡の共通点から生まれたスペシャルモデル。股下の特徴的な切り替えに加え、バックポケットには〈Honda〉のウイングマーク刺繍、限定革パッチを配した遊び心溢れる一本。

「モンキー」という共通の言葉、そして両者に共通していた底なしの"バイク愛"。偶然のきっかけは、瞬く間に情熱的なコラボへと結実していきました。

児島ジーンズが忖度なく(笑)、リアルに所有している〈Honda〉の名車の数々。

デニムもバイクも、履き込み、乗り込むほどに自分だけの味が刻まれていく「相棒」である——。そんな共通項を持つ、運命的な両者のモノづくりの裏側を訪ねて、〈児島ジーンズ〉の作り手たちを訪ねました。

糸を染める:あえて「未完成」を残すロープ染色。

デニムの街・児島では、その周りの地域とも協業しながらジーンズ丸々一本を作り上げるような、分業制が進んでいます。最初に訪れたのは、糸からデニム生地を作り上げる生地メーカー〈クロキ〉の工場です。〈児島ジーンズ〉の生地もこの場所から生まれています。

(左)染色前の白糸。
(右)下から上へと引き上げられ、エアリング中の糸。

デニムに使われるタテ糸は、束ねた白糸をインディゴ染料に何度も浸し、引き上げて空気に触れさせる「エアリング」という工程を経て染め上げられます。このとき、糸をどれだけ高く持ち上げて空気とどれくらいの時間で触れ合わせるか。その時間のコントロールこそが、発色や定着具合を左右する秘密です。そして、長年の研究を重ねてたどり着いた〈クロキ〉独自のエアリングのレシピは、ヨーロッパの名だたるハイブランドも惚れ惚れするような 美しい藍色を生み出しています。

幾度かの工程を経て、藍色に染まった糸。

そして何より重要なのは、糸の芯まで染め切らず、中心に白を残す「芯白(しんじろ)」という状態を作ること。着用や洗濯の摩擦で表面の青が削れたとき、中の白が顔を出します。これこそが、デニム特有の「アタリ」や「ヒゲ」と呼ばれる立体的なエイジングの正体です。

「通常、色の落ちない綺麗な服こそ"いいもの"でしょう。でもデニムは、逆に色が落ちる不便さや不自由さにあえてこだわっているんです。この"未完成の美学"があるからこそ、エイジングというドラマが生まれます」(久米さん)

水の藍色の濃淡具合は、そのまま浄化具合を表す。季節や気温によって微生物の活動量も変わる。

さらに「クロキ」では、独自のインディゴレシピに加え、染色の命である水を徹底管理しています。使った水はいくつもの槽を経て微生物で分解され、瀬戸内海へと辿り着く川へと綺麗に濾過されて放流されます。唯一無二の染色技術に加えて、環境負荷を限りなくなくすこの姿勢も、世界中の名だたるハイブランドがラブコールを送る理由の一つです。

生地を織る:80代の職人が音で聴く
「旧式シャトル織機」の息遣い。

「クロキ」の年季の入った、旧式の織機。

続いて、「クロキ」の生地を織り上げる工場へ。工場内に足を踏み入れると、タテ糸とヨコ糸を織りなすシャトルが打ち出される、耳をつんざくような爆音に包まれます。

ここには、用途に合わせて最新の織機も旧式の織機もあります。最新の織機を使えば、ツルッとした均一な生地を効率よく大量に織ることができます。しかし、〈児島ジーンズ〉があえて古い織機にこだわるのは、ざらざらとした独特の凹凸感と、生地の端に現れる「セルビッチ(赤耳)」という、デニム好きにはたまらない風合いを生むためです。

ほつれ止めでもある「セルビッチ(赤耳)」は、識別のために端の部分にだけ赤い糸を使ったことから赤耳になった。

メーカーの修理保証などとうに過ぎたヴィンテージの織機たち。それを長く使い続けるために支えているのは、職人の神業のような感覚でした。

「修理部品もない古い機械ですから、メンテナンスには個別に機械に詳しいレジェンドに来てもらっています。中でも80代の職人さんは本当にすごい。耳栓が必要なほどの爆音の中で、音を聞き分けるだけで「あ、ネジが緩んでるな」と不調を感知できるんです」(久米さん)

デジタルや効率化の波とは対極にある、人間の五感と経験。それが〈児島ジーンズ〉の求める「味のある生地」の土台になっています。

縫い上げる:長年の経験と手仕事が紡ぐ、高品質。

最後に訪れたのは、創業100年を超える老舗「角南被服 箕島工場」。ここでは、ハイレベルなジーンズの縫製が全て手作業で行われています。

生地の重さを表す「オンス」という単位を、デニム好きな方はご存知かもしれません。重さはそのまま生地の厚みとなり、数字が大きいほど生地は厚くて丈夫になります。通常のジーンズの厚みは13〜14オンスですが、〈児島ジーンズ〉では15、17……程度はもちろん、さらには23オンスといった極厚のヘビーオンス生地を展開しています。しかし、厚手のデニムはミシンの針を簡単に折ってしまうため、まさに縫製泣かせ。普通の工場では15〜16オンスが限界と言われる中、この工場ではパワフルなミシンへの設備投資と技術開発によって、20オンス超えの生地すら縫い上げてしまいます。

そして、今回のコラボの象徴である「モンキーパンツ」の縫製にも、職人の矜持が詰まっています。異なる生地で切り替えたモンキーパンツ。実はこの切り替えによって、視覚的に「脚がシュッと細く見える」効果や、縫い目にシワ状の「パッカリング(色落ちのアタリ)」が余計に出て表情が豊かになるという魅力があります。さらに、バイクに跨がったときの後ろ姿のアクセントにもなるという嬉しい計算も。ただし、その分縫製のハードルが上がります。

「厚みや縮率が違う生地同士を縫い合わせると、普通は形が崩れてしまいます。そこをうまくズレが出ないように縫い上げるのは、高度な技術なんです」(久米さん)

生地づくりから縫製、付属つけ、洗い、仕上げまでが一つの街で完結する街・児島。〈児島ジーンズ〉の久米さんが発した「AIには最後まで取って代われない、アナログ最先端の工場」という言葉が、強く胸に響きます。

バイクとデニム、「正解のない味」を追いかけて。

工業製品であるバイクと、身にまとうデニム。一見異なる世界ですが、取材に同行していた〈Honda〉の担当者も、〈児島ジーンズ〉のモノづくりに深く頷いていました。

実は〈Honda〉にも、効率や数値だけではない「味」を極限まで追求したエピソードがあります。2010年に発表した新開発の空冷四気筒エンジンを搭載する「CB1100」では、燃費やパワー、環境対応等エンジンとしての最適解を追求する一方で、気筒間のバルブタイミングをあえてずらす設計が施されました。ライダーが乗ったときに、滑らかだけでない心地よいリズムや鼓動感を感じられるようにするためです。

【コラボレーションアイテムその2】
「デニム MA-1 フライトジャケット」
米空軍の名作フライトジャケット「MA-1」を、児島産デニムと〈Honda〉のモータースピリットで再解釈。タフなアウターとしての機能性と、着込むほどに増すデニム特有の経年変化を楽しめる一着。

「「"味"を徹底的に研究します」なんて、ビジネスとしてはあまりにイレギュラーですよね(笑)。でも、僕ら〈児島ジーンズ〉もボコボコした生地を作って「いい色落ちがしそうだぞ」と面白がっている。正解がない"味"を本気で追求しているという点で、〈Honda〉さんとは深く共鳴できるんです」(久米さん)

【コラボレーションアイテムその3】
「ホンダコラボ カブパンツ」
「スーパーカブ」とのコラボによるコンボパンツ。ミリタリーテイストのヘリンボーンツイルや異素材切り替えを落とし込み、ライディングから日常使いまで耐えうるタフなワーク仕様に仕上げた一本。

デニムとバイクの共通点はこんなところにも。ジーンズは、着る人の体型やライフスタイルに合わせてその人独自の色落ちが刻まれていきます。そして、バイクも乗っているうちに自分に馴染み、時には転んで傷がつく。その傷を直したり、あえてそのままにしたりしながら、世界に一台だけの「自分のバイク」になっていく。

「長くともに過ごすほど、ジーンズは風合いを増し、バイクはしっくりと身体に馴染んでいく。乗る人・履く人のライフスタイルが映し出され、世界にひとつだけの存在になっていきます」(久米さん)

二輪を、もっとカジュアルに。

「児島ジーンズ」の社用車。

コラボレーションを巡る旅もそろそろ終盤に。最後に、久米代表にこの先の展望について伺いました。

「もっとバイクを身近に楽しむスタイルが増えると嬉しいですね。本格的なライディングギアで身を固めて走る格好よさもあれば、街乗りならジーンズにパーカーを合わせて、日常の延長として軽やかに乗るスタイルも魅力的です。気分やシーンに合わせて、ファッションやデニムを通じてもっと自由に二輪を「カジュアルダウン」できたら、バイクの楽しみ方がさらに広がると思っています」

【コラボレーションアイテムその4】
「ホンダコラボ スーパーカブ畳縁カードケース」
日本の伝統素材「畳縁(たたみべり)」。岡山県倉敷市児島は全国シェアの大部分を占める一大産地であり、その高密度で耐久性に優れた織りの技術を活かして〈Honda〉の名車「スーパーカブ」をモチーフにデザインしたカードケース。軽量かつ高耐久な和の質感に、レトロでポップな世界観が映えるコラボ小物。

道具を使い倒し、刻まれた傷すらも愛せる大人へ。〈Honda〉と〈児島ジーンズ〉が生み出したプロダクトは、日常という旅をともに走る、最高の「相棒」になってくれるはずです。

photo: Masayuki Nakaya text: Shinri Kobayashi

INFORMATION

KOJIMA GENES®︎
Honda Collab Monkey Combo Pants
¥22,000

発売 2024年1月
高品質なデニムで知られる〈児島ジーンズ〉と、Hondaの名車「モンキー」がコラボしたコンボジーンズです。異なる生地を切り替えた特徴的なデザインに、Hondaやモンキーを象徴するモチーフが落とし込まれています。タフな作りと遊び心あるデザインは、日々のコーディネートやツーリングに最適です。
※ウエスト86cm、渡り幅32cm、裾幅21cm、前股上28cm、股下86cm(34インチの場合)

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