自然生態系を構成する動物、植物、微生物など、地球上の豊かな生物種の多様性とその遺伝子の多様性、そして地域ごとの様々な生態系の多様性をも意味します。地球の生態系の中では生物が刻一刻と生まれ、死に、エネルギーが流れ、水や物質が循環していますが、こうした自然界の動きもふくめた考え方です。
2022年12月にカナダのモントリオールで大きな会議がありました。この会議では、世界中の国々が自然を守るための新しい目標を決めました。この目標は「昆明・モントリオール生物多様性枠組」と呼ばれています。
この目標に基づいて、日本も自然を守るための計画「生物多様性国家戦略2023-2030」をつくりました。計画の中で日本は「ネイチャーポジティブ」という考え方を大切にしています。自然をもっと良くするために、自然が失われるのを止めて、元に戻すことをめざす、それが「ネイチャーポジティブ」です。
そして日本は「30by30目標」という“2030年までに陸と海の30%以上を健康な自然の状態に保つ”という具体的な目標を掲げています。環境省はこの目標を達成するために「生物多様性のための30by30アライアンス」という取り組みを進めています。
さらに国は「自然共生サイト」を認定しています。これは、民間の取り組みで自然を守ることができている特別な場所のことで、例えば自然を大切にする公園や森などが「自然共生サイト」として認定されます。
このように日本は自然を守るためにいろいろな計画や目標を立てて、一生懸命取り組んでいるのです。
ホンダは2022年4月、環境省による「生物多様性のための30by30アライアンス」に参画し、生物多様性の保全が図られている区域となる「自然共生サイト」の認定取得に向けてさまざまな取り組みを進めています。
栃木県の茂木町にある自然豊かな“モビリティリゾートもてぎ” では、長年にわたって環境保全活動や人と自然の共生をめざした取り組みを行ってきました。こうした取り組みにより2023年10月、“モビリティリゾートもてぎ”の森林の415.1haが「自然共生サイト」に認定されました。
モビリティリゾートもてぎにあるサーキットを取り囲む森では、確認される生物種数は約5,800種にのぼり、そこには希少種のゲンゴロウなども多数含まれます。無農薬での稲作を行っている棚田では、水辺の再生を図ることで、絶滅が危惧されているハッチョウトンボの保護も行っています。こうした環境を生かした自然体験施設「ハローウッズ」では、次世代の育成支援活動として、自然とのふれあいを通じた「遊びと学びの場」を提供しています。
ホンダのクルマをつくる埼玉製作所 完成車工場は、工場運営による地域生態系への影響を低減するため、敷地の30%近くを生物多様性に配慮した緑地として保全しています。さらに「里山管理」も行い、地域における生物多様性の保全の両方に貢献することをめざしています。
また、カヤネズミや絶滅危惧種のヨツボシトンボ・ゲンジボタル・ヘイケボタルなどが生息しているビオトープを管理し、地域と従業員の環境学習の場として活用しています。これら取り組みにより2024年9月、完成車工場の敷地が「自然共生サイト」に認定されました。 “モビリティリゾートもてぎ” に続き2件目の認定となります。
今後もホンダは「自然共生サイト」認定取得をめざして、生物多様性の復元・再生活動を進めていきます。将来的には「自然共生サイト」と同じ自社基準を設定し、海外工場でも取り組みを展開していきます。