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ホンダモビリティソリューションズは、自動運転サービス以外にもカーシェアやバイクサブスクをはじめとした幅広い「モビリティサービス」の展開を行っています。
多面的な事業推進を行っているのは、第2ソリューション部。今回は同事業部の稲葉さん、釘屋さんのお二人にお話を伺い、「総合モビリティサービスカンパニー」としての取り組みや課題、求められる人材などについて、幅広くお伺いしました。
「HondaのMaaS領域を担う会社」に強い興味を惹かれた
最初に、お二人のこれまでのご経歴について簡単に教えてください。
釘屋
私は新卒で大手メーカーに入社し、経営企画を担当しました。大企業のアセットを活用して社会貢献できた実感はありましたが、実力不足や大企業特有の「イノベーションのジレンマ」を感じ、2015年頃にIT系のベンチャー企業へ転職。その後はさらに実力を身に付けるために独立し、黎明期のスタートアップ支援などを行ってきました。
稲葉
私は中途で親会社であるHondaに入社し、ライフクリエーションという分野で欧州・中近東フィールドサービスを担当後に国内営業の部門へ異動しました。
なぜ、ホンダモビリティソリューションズにジョインしたのでしょうか?
釘屋
ホンダモビリティソリューションズには、知人からのリファラルでジョインしました。今一度大企業で自分の実力を試し、「社会にインパクトを与える」というミッションにチャレンジしてみたい気持ちがありましたね。
特にMaaS領域は社会に大きな影響を与えると言われており、例えばHonda本体は自動運転サービスの開発に巨額の出資を決めていました。ホンダモビリティソリューションズはまさにそのMaaS領域を担うべく設立された会社であると知り、また、紹介してくれた同期の知人が大きなミッションの下で仕事していたこともあり、強い興味を感じました。
稲葉
私は国内での仕事を手掛けたいと思っていたところ、カーシェア事業のプロジェクトメンバーが社内公募されていたため応募し、プロジェクトに参画する運びとなりました。法人営業部傘下で発足され、現在代表の高見が部長だった営業企画部へ移管されました。その後、ホンダモビリティソリューションズが設立され、事業譲渡とともにHonda本体からその事業部の4人が出向する形でジョインしています。
多様性とボトムアップのカルチャーを兼ね備えた組織
お二人から見て、ホンダモビリティソリューションズはどんな会社ですか?
稲葉
出向してきた立場からすると、カルチャー自体はHonda本体と似ております。ただ、多様性は段違いですね。多彩なバックグラウンドを持った人材が集まっているため、思いもよらなかった視点を得られることが多いです。また上層部との距離が近く、事業にスピード感があると感じます。
釘屋
私は他の大企業に比べて、ボトムアップのカルチャーを強く感じます。提案に対して社長はときに反対意見を出しはしても、「やめろ」とは一度も言ったことがありません。それどころか、「自分の言うことを鵜呑みにするな」と社員に伝えているくらいで。自分がお客様のためになると感じる取り組みを、貫きやすい環境です。
稲葉
新しい企画はとても提案しやすいですよね。自分が手を挙げて提案し上層部のOKさえもらえれば、推進できる環境が整っています。
働き方の面ではどんな特徴がありますか?
釘屋
スーパーフレックスかつ副業もOKで、かなり自由度は高いですね。最近はシェアオフィスが導入されました。子育て世代が多く、私も約1ヶ月育休をいただく予定です。
稲葉
風通しも良いですね。役職関係なくフラットに、言いたいことを言い合える環境です。オンラインコミュニケーションが多い環境ですが、全く不安は感じません。
ベンチャーに匹敵するスピード感で事業を推進
改めて、お二人が所属する第2ソリューション部のミッションや役割は、どのようなものなのでしょうか。
稲葉
簡単に言えば、自動運転サービス以外のモビリティサービス全般を手掛ける事業部です。「総合モビリティサービスカンパニー」として、全てのユーザーにとって使いやすいモビリティを幅広く提供することをミッションとしています。
とはいえ、基本的に車両の販売は行いません。長期間ではリース、月単位ではサブスク、短期間ではシェアリングという手法を提供します。四輪、二輪は問いません。場合によってはHonda以外の商材を提供するケースもありますね。
どのような体制で事業に取り組まれているのでしょうか。
稲葉
四輪、二輪、新規事業開発にチームが分かれてはいますが、メンバー全員が複数のプロダクトを兼務して担当するという体制です。
現在は、カーシェア事業に最も注力しているところですね。カーシェア事業は、一度の利用時間が短く、1台の車をどのように高回転させるかが重要になりますが、そこで考慮する要因はリピーター数、立地、車種、人口密度など様々であり、コントロールが難しくかつオペレーションも煩雑になることが多々あります。
モビリティサービスとしてはビジネス構造的に一番難しい領域だからこそ、メインの柱に据えています。
実際に事業を立ち上げた事例について簡単に教えてください。
稲葉
フードデリバリー配達員向けに立ち上げた、バイクサブスクリプションサービスの事例は面白かったですね。彼らは基本的に自転車で配達をしていましたが、徐々にバイクを利用するケースが増えてきたことに着目した事業です。
もともとカーシェア事業の基盤とシステム・商材(Honda製バイク)が揃っていたため、「ノウハウ、システムを活用し、1ヶ月単位でバイクを貸し出しできるサブスクサービス」をリリースしたんです。フードデリバリーの配達員は一時的に働いている方も多いですし、自転車からバイクに変えて大丈夫かという不安もあります。そこでバイクをお試しで使えるようなサービスを個人配達員向けに提供したところ、上手く空白地帯に入り込めて軌道に乗りました。
釘屋
稲葉さんを中心とした数名で、半年ほどで立ち上げた事例ですね。ベンチャーの中でも早いと言えるスピード感だったと思います。
先駆者に追随しながらも独自の価値提供を行う必要がある
事業部内において課題を感じているのはどんな部分ですか?
稲葉
モビリティサービスを広く取り扱おうとしている当部(第2ソリューション部)自体は、まだまだ「課題だらけ」ですね。
釘屋
MaaSといっても、実際に市場が成立し始めているのはカーシェア事業ぐらいのものです。今は長い歴史の中で、ようやくトップランナーの企業がビジネスを確立しはじめた、という段階ですから、当社はそこに追随しながらも独自の価値提供を行い、会社としてのポジショニングをより明確化していかなければなりません。
カーシェア市場はリアルが強い企業が多いので、当社が目指したいのはメーカー系の持つ”リアル”の強さに加えて、ITプラットフォーマーのように”デジタル”でシームレスにサービスが完結する、これまでにない新しい体験価値を提供することです。
そのために、今はどんな要素が不足していますか?
釘屋
デジタルの知見は今後更なる強化が必要ですね。たとえば他のIT企業ではデジタル上で高速にPDCAを回していますが、当社はシステム開発において自社で完結できない領域もあるので、なかなか高速・高効率に改善を繰り返せるような基盤が完全には整っていません。ここは基本に立ち返り見直していく必要もあるかもしれません。
これまで「車を売る」という部分に着目してきたHondaだからこそ、シェアリングビジネスのような新しいビジネスモデルにおいては、自動車販売とは異なる独自のマーケティング手法の開発も必要です。顧客のLTVを気にするなど、従来の事業形態とマーケティング手法がどのように異なるのか、しっかり学んでいかなければなりません。
安心・安全を守りながら、顧客ニーズに広く応えられるような展開を検討
課題もまだまだ多い中で、お二人が目指したい事業像や提供したい価値はどのようなものですか?
稲葉
「Honda」ブランドを背負っているからこそ、安心・安全に関わる価値は、今後もしっかり守っていきたいです。センシング機能をはじめ、親会社の技術とも連携し信頼性の高い安全装備を提供するのも、価値の一つになると思います。
釘屋
カーシェア自体は免許保有人数に比較して、まだ2~3%程度のユーザーにしか使われていません。今は特定のニーズを持った方だけが使用しているサービスなんです。
そんな中でHondaのEveryGoの特徴は、月会費が無料なこと。まずは登録だけしておき、「急に雨が降ってきて車での送迎が必要になった」など、特定のタイミングでシンプルに使っていただいている状態です。しかし、今後サービスが浸透すれば、用途はもっと広がっていくはずです。そういう未来を見据えて、例えばペットも同乗できるなど、多様なニーズに応えられるようなサービス提供をしていきたいと考えています。
これは、カーシェアに限りません。先日、電動キックボードが免許不要で乗れるようになりましたが、海外にはビジネスとして成立している事例もあります。法規も含めた社会情勢が変化していく長い時間軸を見ながら、時代に合わせたサービスを提供できるように常に備えておきたいですね。
このように、「まだまだ確立していない」領域だからこその面白さがMaaSにはあると思います。
主体性を持ちながら会社とともに成長できる人材が求められる
ホンダモビリティソリューションズが今後どんな組織になっていくと良いと考えていますか?
稲葉
親会社のHondaはメーカーですから、やはり最終的にはHondaの製品をさまざまなモビリティサービス事業者が使うようになるのが理想です。その中でホンダモビリティソリューションズは、まずは「モビリティサービスが使いやすい状態」をきっちり提供していくという存在意義があると思います。市場を面で捉えて、Honda製品の普及の一助を担う存在になれれば良いですね。
内部的な話でいうと、自走できる方をどんどん増やして上手く事業を成長させていきたいです。ボトムアップカルチャーがあり、経営層からこまごまとした指示をされるようなことはないからこそ、主体性を重視しながら組織を成長させられると良いのかなと思います。
釘屋
稲葉さんが言うように「メーカーとしてのHonda」の視点も大事ですし、個人的には、やはり「モビリティサービスを提供するホンダモビリティソリューションズ」として会社を進化させ、Hondaとして製造からモビリティサービスの提供までを一気通貫で提供していきたい気持ちが強いですね。
組織に関しては、大企業とベンチャー企業の良いところを併せ持った形にしていきたいなと。現状は大企業とベンチャーのハイブリッドという新しい会社形態であるからこそ課題も少なくないですが、主体的に変化を起こしたい人にジョインしていただきたいですね。
では、第2ソリューション部にマッチするのは、どんな人材なのでしょうか。
稲葉
2パターンありますね。一つは、ゼネラリスト的に組織全体を見られる方。もう一つは、各領域のスペシャリストの方です。スペシャリストの方々をゼネラリストが上手く束ねながら、事業推進ができれば理想です。
とはいえ、本当に必要なのは「会社と一緒に自分を成長させていきたい人」だとも感じます。モビリティサービスに寄与できるような知見がまだ不足しているとしても、ホンダモビリティソリューションズという会社の中でさまざまな経験を積み、事業とともに自分をレベルアップさせたい……そんなマインドを持った方がマッチしやすいと感じます。
釘屋
そういう意味では、チャレンジ精神のある方や難しい課題が好きな方は向いているかもしれませんね。