Honda 0 α
Japan Mobility Show 2025 展示車両

Honda 0シリーズ新SUV「Honda 0 α」のプロトタイプを世界初公開

Japan Mobility Show 2025に登場する新たなEV

――2050年に「Hondaの関わるすべての製品と企業活動を通じたカーボンニュートラル」の実現を目指す中、クルマづくりの原点に立ち返り、ゼロから独創的な発想で開発に挑む「Honda 0シリーズ」。開発アプローチ「Thin, Light, and Wise.」のもと、厚くて重いという従来のイメージを覆す新たなEVシリーズです。

10月29日から11月9日にかけて開催される「Japan Mobility Show 2025」(一般公開日:10月31日~11月9日)では、そんなHonda 0シリーズのゲートウェイモデルとなる新SUV「Honda 0 α」のプロトタイプを世界初公開します。

Honda 0 α
左:エクステリアデザインのプロジェクトリーダーである福井拓、右:デザイナーのPark・Sungjin
左:エクステリアデザインのプロジェクトリーダーである福井拓、右:デザイナーのPark・Sungjin

――目指したのは、初めてEVを選ぶ人やスマートなライフスタイルを重視する人にもフィットするクルマ。モデル名であるαには「最初」「始まり」――多くの人に手が届く存在でありたいというHondaの意志が込められています。

2027年から日本やインドを中心にグローバル展開する「Honda 0 α」の開発について、エクステリアデザインのプロジェクトリーダーを務めた福井拓と、デザイナーのPark・Sungjin(パク・ソンジン)に話を聞きました。

コンパクトでありながらもエネルギッシュに

――「Honda 0 α」のターゲットである「初めてEVを選ぶ人」。そこには自分のクルマをまだ持ったことがない若年層も含まれます。そうした、まさにこれから未来を切り開こうと活気に満ちた層にも満足してもらえるよう「ただコンパクトなだけでは面白くない」「ユーザーの想像を超えたい」という野望をチームで共有したと、2人は振り返ります。

福井拓(左)、Park・Sungjin(右)
福井拓(左)、Park・Sungjin(右)

――デザインをスタートさせるにあたって、福井はまずマーケットの一つであるインドへ向かうことに。「グローバルに展開するクルマのデザインを、日本の価値観だけで完結させてはいけない」。そこで世界の中でも成長が著しいインドの都市や、そこで暮らす人々に対する解像度を高めるべく現地でリサーチをしたといいます。

インドでは、経済成長によってクルマが爆発的に増加。一方で、公共交通機関や道路インフラの整備が追いついておらず、決して良いとはいえない道路環境が問題視されています。クルマやバイクがぎゅうぎゅうに走る中で、視覚的に安心感を与えるために運転手を守るようなボリュームが重要だと考えました。そのため「Honda 0 α」ではHonda 0シリーズの洗練された世界観を壊さずにタフネスや力強さを加えることを検討しました。

――また、インド都市部に住むIT企業で働く若い世帯の家庭をいくつか訪れ、彼らのライフスタイルも調査。インドでは、マイカーを背景にして家族写真や結婚写真を撮影する慣習があり、クルマが依然として、ステータスや自己表現のツールになっていることを感じたといいます。

福井
エネルギッシュな存在でありたくて、力強さを凝縮させたようなデザインを提案したいと考えていました。具体的には、ボディーの内から外に向かう塊の力を、フェンダーやバンパーの塊が外側でがっちり受け止める構成を常に意識して、どこから見ても緊張感と力強さを感じてもらえるような造形がしたいと思いました。

福井拓
福井拓(左)、Park・Sungjin(右)

福井
インドの都市は、街を走るクルマや歩く人の服装も色とりどりで、現地の若者には、今日より明日は必ず良くなると信じているような目の輝きやポジティブなオーラを感じました。インドで感じ取ったその勢いや未来へのエネルギーを、「Honda 0 α」にそのまま落とし込もうというのがデザインの出発点です。

数ミリの妥協も許さず生まれたエクステリアデザイン

加飾が好まれる市場に
ミニマルなインパクトを提示

――重要なインプットを日本に持ち帰った後、あえて引き算の美学で提示してみるという方向で、「Honda 0 α」の開発が始まりました。ミニマルで洗練された美しさを提示することで、加飾が好まれる市場の美的基準に新たなインパクトを与えたいというのが狙いです。

Parkは開発初期のイメージスケッチから「引き算」と「凝縮」の同居を意識し、扱いやすいボディーであってもしっかりとした力強さを宿すことを目指しました。全長はHonda 0シリーズの中では抑えていながらも、ミニマルなキャラクター線と面の張りや塊感の構成で力強さを際立たせたParkのイメージスケッチ。それが初めにあったことでデザインチーム全員がゴールの共有をできたといいます。

Honda 0 α
Park・Sungjin

Park
若々しさとSUVの力強さを表現するために、リアフェンダーの表現には特にこだわりましたね。開発途中でスケッチのイメージに近づけようと苦労していた時に福井から「リアフェンダーのボリュームをもっと出してみたらどうか?」とアドバイスをもらったんです。試行錯誤したうえで設計とも相談し、結果的にトレッドを広げることで魅力を引き出しました。

福井
ボディーサイドのHonda 0シリーズ特有の面質とハイライトの調整にも神経を使いました。「Honda 0 α」はHonda 0シリーズの中でも全長を抑えたボディーのため、同じ感覚で面をつくると狙ったハイライトが生み出せませんでした。そこでハイライトが表れるポイントを前方へ移し、さらにリアフェンダーを利用して幅広方向に面を動かすことで、Honda 0シリーズらしいダイナミックな面の動きを生み出しています。

Honda 0 α
Park・Sungjin

面質と手仕事──デジタルモデリングとクレイモデリングの融合

――「Thin, Light, and Wise.」の「Wise」が示すように、知能化にも力を注ぐHonda 0シリーズ。車両に先進技術を搭載する予定ですが、デザインのプロセスにおいてはデジタルとアナログの両輪で進めていきました。Hondaではデジタルツールの有効性を認めつつも、人の手で立体に落とし込むという、現物での判断を大事にしているためです。

数ミリの調整が全体の印象を左右する現場で、デザインと設計各領域のプロフェッショナルが連携することが、高品質なデザインを生み出すカギ。それを象徴するモデルの一つが、この「Honda 0 α」なのです。

Park
「Honda 0 α」の面と線は密接な関係で構成されています。0.数ミリの差がボディーのボリュームを大きく左右するため、チームで朝・昼・晩と何度も、つくり直した面に対して線を引き直しました。イメージスケッチで描いた微かなハイライトや線のリズムは、デジタルツールだけでは再現できない質感があるんです。

Park
今はデジタルツールの進化でクレイを使わなくてもかたちをつくれます。しかし、このクルマは「デジタルによって拡張した表現力」と「アナログが備える手作業による繊細さ」といった両方の特性を生かしつつ、微調整を重ねて熟成しました。大変でしたが、最終的には狙い通りに内から外に向かう塊の力を表現できたと思います。デザイン性と実用性の観点から、「Honda 0 α」が多くの人にHondaの提供価値を届ける役割を担ってくれることを期待しています。

――Japan Mobility Show 2025に出展する「Honda 0 α」は、凝縮された力強さとミニマルで洗練された美しさを際立たせたデザインにしています。

プロトタイプでは若手の新しい感性とベテランの確かな経験が一体となり、チーム全体で高い完成度を目指しました。デザインと設計の各領域が密に連携し、スケッチのニュアンスを忠実に立体へと反映。かたちが狙い通りに具現化した瞬間、チーム全体に大きな達成感が広がりました。

Honda 0 α
Japan Mobility Show 2025 展示車両
Hondaブース完成予定図

――「Honda 0 α」は、デジタルとアナログの融合によって得た創造力を多くの人に感じ取ってほしい一台です。Japan Mobility Show 2025の会場では、未来のモビリティを象徴するモデルとして展示します。Hondaブースは我々が掲げる人中心の哲学と未来を落とし込んだ空間の中で写真や映像だけでは伝わりにくい細部のこだわりを感じてもらえるようにしました。ぜひお楽しみください。

Profiles

福井拓

福井 拓

オートモービル
プロダクトデザイナー

Park・Sungjin(パク・ソンジン)

Park・Sungjin(パク・ソンジン)

オートモービル
プロダクトデザイナー