CES 2025でHonda 0シリーズがワールドプレミア 新モデル「Honda 0 SUV」が移動体験を新たな次元へ導く

Honda Design Talk

CES 2025でHonda 0シリーズがワールドプレミア
新モデル「Honda 0 SUV」が移動体験を新たな次元へ導く

2026年前半より北米市場から投入を開始する「Honda 0シリーズ(ホンダ・ゼロシリーズ)」の第1弾となる、中型SUVのプロトタイプ「Honda 0 SUV」が、米国・ラスベガスで開催された「CES 2025」で世界初公開されました。これと合わせて、車内空間での体験を彩るUI/UXについても最新の開発状況を発表。エクステリア、UI/UXのデザイナーに、この発表に込めた想いを聞きました。

UI/UX担当の山口 彰太(左)とエクステリア担当の佐藤 駿太郎(右)

UI/UX担当の山口 彰太(左)とエクステリア担当の佐藤 駿太郎(右)※UI/UX…ユーザーインターフェイス/ユーザーエクスペリエンスのことで、UIは製品やサービスとユーザーとの接点、UXは製品・サービスを通じてユーザーが得られる体験を指す

「Thin, Light, and wise.」の本質を追求したデザイン

──Honda 0シリーズとしては、「SALOON」「SPACE-HUB」のお披露目から約1年を経て、Honda 0 SUVが発表されました。シリーズに共通するデザインコンセプトは「The Art of Resonance」ですが、お二人はどのように捉えていますか?

Honda 0 SUV

佐藤

「The Art of Resonance」とは、「本質の追求」だと捉えています。今回は、デザインの本質を追求する中で、見る人や使う人に直感的に響くものを作りたいと考えました。具体的には、このモデルが持つ居住空間や自由さといった部分を、一目見ただけで直感的に感じ取れるような形に表現することを意識しました。これについてはチーム全体で議論を重ね、「クルマを見るだけで新しい体験が想像できる」形を目指しました。

山口

UI/UXの面では、わかりやすい機能伝達を通じて、ユーザーが視覚的に豊かな体験を得られるグラフィック・インタラクションを目指しました。Hondaとして、「瞬間認知」と「直感操作」を実現するUI/UXを目指しており、情報がただの数値やアイコンにとどまらず、空間全体で共鳴するような表現を追求しました。

佐藤 駿太郎

──さらに、昨年のHonda 0シリーズお披露目の際、新たなEV開発アプローチとして「Thin, Light, and wise.(薄い、軽い、賢い)」が掲げられています。「The Art of Resonance」と合わせて、今回のHonda 0 SUVではどのように表現されているのでしょうか?

佐藤

「Thin」や「Light」の視点でいくと、このクルマは街中を軽快に走り抜け、他とは一段上の次元を演出する存在であるべきだと考えました。

ワンモーションに流れるラインを作ることに注力し、エクステリアで開放的なキャビンと荷室の存在が明確にわかるようにしました。従来のクルマには見られないような滑らかなプロポーションを実現するため、骨格そのものを見直し、特にリアのデザインでは、グラフィックと骨格が調和することで、ユーザーに新しい価値観を届けることができると考えました。こうしてボディーラインをシンプルにしつつも、ルーフやグラフィックの配置で軽やかさを表現しました。

佐藤 駿太郎

山口

操作体系や情報表示をシンプルかつ軽快にすることが『Light』の実現に繋がると考えました。また、単に機能的であるだけでなく、ユーザーに賢さを感じさせる『Wise』の要素として、ユーザーの所作に応じて、心地よくグラフィックが連動するアニメーションを心掛けました。従来のクルマでは、メーターの表示は速度や燃料残量を針で示すアプローチが中心ですよね?その表現に対して、もっとわかりやすく、アクセルワークと一体感のある表現があるのではないかと考え、今回のデザインでは、発光体がアクセルの踏み込みに連動して明るさが変化し、ガラスへ反射することで、踏み込み量を画面全体で認知できるようにしています。これにより、ユーザーが直感的にクルマの挙動を理解でき、心地よく操作できるUI/UXを提供できると考えました。実現に向けては、アクセル操作やタッチ操作と連動してアニメーションを検証できる環境を構築し、プロトタイプを通じてグラフィックを磨きこみました。

山口 彰太

佐藤

エクステリアでは、グリルが「Wise」の表現として特徴的だと思います。マルチセグメントで構成されたヘッドライトが、連動して発光する動きを取り入れ、ただ光るだけでなく、まるでクルマ自体が生き物であるような印象を与えるようにしました。従来のクルマでは、グリルが冷却機能を担う要素でしたが、EVではその役割が変わってくるので、光の演出によって動きや深みを感じさせる工夫を施し、「Wise」を象徴する部分になっています。

Honda 0 SUVで表現したのは、浮遊するように走る軽快感

──コンセプトを丁寧にデザインに落とし込んでいく苦労が伝わってきます。こうして生まれたHonda 0 SUVは、どんなクルマと言えるでしょうか?

佐藤

今回は、クルマのデザインに新たな価値観を与えることを目指していました。特に、自由で開放的な居住空間を直感的に伝えることを重視し、見る人に“新しい可能性”を感じさせるデザインになったと思います。

山口

ドライバーが何をするべきかを迷わず理解し、さらに車内にいることが楽しいと感じられるインターフェースを提供することができたと感じています。

Honda 0 SUV デザインスケッチ

──具体的にはどんなポイントにそれらが表現されているのでしょうか?

佐藤

エクステリアでは「浮遊感」を演出するため、視覚的な工夫を多く取り入れました。ホイールデザインでは軽量感を意識しながら、ボディーのサイドパネル断面やカラー構成などと合わせて、車体が路面から浮いているような印象を与えるよう工夫しました。また、黒色でまとまった車体下部の上にソリッドで滑らかなボディーが載ることで、重心を上げて軽快さを表現しています。ヘッドライトからリアエンドまで流れるようなラインによって、前後で一つの芯が通っているような印象を明確になっています。

車体全体を1つの層として捉え、その層を視覚的に上げることで「階層を1つ上げた」印象を作り出しています。この手法により、街中でも一目で他のクルマと異なる存在感を放つデザインが完成しました。

ホイールなどの細部にもこだわり、スポークを細く見せる一方で、立体的なデザインを取り入れ、光が当たった際に動きのある印象を与えるようにしました。この工夫によって、クルマが止まっている状態でも、走行中のような躍動感を演出していると思います。

Honda 0 SUV デザインスケッチ

山口

こうした浮遊感や軽快さを、車内空間を通じても感じられるように工夫しています。例えば、情報の表示を単なる数値やアイコンだけでなく、空間的な広がりを感じさせるよう、車内の照明なども連動させてデザインしました。画面の中のグラフィックも、光が奥行きを持って、無限に広がっていくように動くことで、ユーザーに感覚的な心地よさを提供することにつながっています。

山口 彰太

モビリティの新たな価値を創出したい

──こうして生まれたHonda 0 SUVは、どんな価値をもたらす存在を目指しましたか?

佐藤

クルマとしての魅力を超え、人々がもっと外に出たくなるようなモチベーションを生み出す存在になってくれたらうれしいです。移動という体験そのものを新しい価値として提示し、ユーザーの日常にポジティブな変化をもたらすことを目指しました。

車内には開放的な居住空間が広がっていて、キャビンや荷室の使い方にも拡張性があって、自由にやりたいことができると思います。コンセプトの話題でも話しましたが、そうした自由な移動ができるクルマであることを、見た目からも感じられるデザインに仕上がったと思います。

山口 彰太

山口

クルマが単なる道具ではなく、ユーザーのライフスタイルに寄り添う“相棒”のような存在を目指してUI/UXを作り上げました。例えば、日常の習慣に合わせて柔軟に変化するインターフェース。朝の運転では車内の照明が活力を与えるような明るいトーンになり、ユーザーが新しい一日の始まりを心地よく感じられたり、夕方にはリラックスを促す柔らかなトーンの照明に切り替わり、長時間運転後のユーザーが落ち着いて車内で過ごせる環境が整えられたり、といった工夫を盛り込んでいます。

ドライバーにとってストレスを感じさせない操作性が特徴です。このクルマは、移動をより楽しく、よりパーソナルなものに進化させることで、ユーザーに新しい体験価値を提供できると思います。

また、運転中だけでなく、駐車中には車内が瞑想や仕事の空間になるよう、照明や音響を調整し、集中できる空間を提供することもできます。これによって、クルマが移動手段から多機能な生活空間へと変化する可能性を追求しました。

山口 彰太

──今後も新たなクルマがどんどん生み出されていくと思いますが、今回の経験をどのように活かしていきたいとお考えでしょうか?

佐藤

シンプルさを突き詰めていくと、置物のような静的なデザインになってしまいがちです。しかし、クルマはモビリティであり、動くものですから、そういったクルマ本来の躍動感や、機能という部分はしっかりと表現していきたいと思います。

山口

UI/UX領域においては、情報やグラフィックのリアルタイム生成技術がどんどん進化しています。クルマというのは乗っている中でさまざまな情報が出てくるものなので、お客様のニーズに寄り添い、その時々で必要な情報を的確な見え方、感じ方で理解してもらえるようなUI/UXをデザインしていきたいですね。

山口 彰太(左)と佐藤 駿太郎(右)

プロフィール

佐藤 駿太郎

佐藤 駿太郎

本田技術研究所 デザインセンター
デザイナー

山口 彰太

山口 彰太

本田技術研究所 デザインセンター
UI/UXデザイナー

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