Special Interview 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM x Honda Gold Wing

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』 監督・福田 己津央が語る バイク Gold Wingが駆ける未来
『機動戦士 ガンダムSEED FREEDOM』 監督・福田 己津央が語る バイク Gold Wingが 駆ける未来

新時代のガンダムとして2002年からTV放送が始まった「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」。その最新エピソードとして2024年1月26日から映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開されている。劇中では、主人公キラ・ヤマトとラクス・クラインがゴールドウイングでツーリングをするシーンが丁寧に描かれている。主人公の愛車としてゴールドウイングをピックアップしたのは、自身もバイク好きである福田己津央監督だったという。
なぜゴールドウイングだったのか。そして、未来の世界でバイクはどうなっているのか──福田監督に話をうかがった。

text=SHIGEKI UENO 
photography=SEIICHIRO KITAMURA

福田己津央(ふくだ・みつお)

福田己津央(ふくだ・みつお)

1960年10月28日生まれ。アニメーション監督、演出、脚本家。1979年に株式会社日本サンライズ(現・株式会社バンダイナムコフィルムワークス)へ入社し設定制作に携わり、その後フリーランスとなり演出など経験を重ねる。TVアニメ『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』で初監督。TVアニメ『機動戦士ガンダムSEED』、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』に続き、映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の監督も務める。
ライディングウエアを着ていることからもわかるように、取材当日はバイクでスタジオに来ていた福田監督。雨が降っていてもバイクでスタジオ通いをする日もあるという。

バイクという乗り物が象徴するもの

劇中では主人公カップルが悩みを打ち明けつつ真剣に語り合う……という場面でゴールドウイングが登場しています。そうした重要なシーンでバイクがポイントとなるのは、アニメーション作品、実写作品を問わず珍しい気がします。クルマの車内というのは定番かもしれませんが。

福田:

バイクって自由の象徴だと思っているんです。まさに映画のタイトルなんですけど(笑)。キラとラクスって若いにも関わらず人類の命運を担う重大な任務に就いていて、落ち着いたカップルのような感じに見えますが、本当は2人とも個人の自由というものを大事にしています。
クルマだと安定とか……イメージするものが違うと思うんです。クルマは一軸的というか平面的な動きに感じますが、バイクはロール方向の動きもあるから、より解き放たれたフィーリングがある。キラとラクス、2人が渇望する自由を象徴する意味で、バイクはふさわしい乗り物だと思っています。

キラとラクスがバイクに乗るシーンではヘルメットやウエアも新規に設定され、描き下ろされた
キラとラクスがバイクに乗るシーンではヘルメットやウエアも新規に設定され、描き下ろされた

キラとラクスがバイクに乗るシーンではヘルメットやウエアも新規に設定され、描き下ろされた

「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」の舞台は宇宙で暮らし、遺伝子調整で優れた能力を手に入れた人類もいる「コズミック・イラ」という時代です。こうした未来の世界では、バイクはどんな乗り物として位置づけられているのでしょうか?

福田:

地球はニュートロンジャマーという装置によって原子力が使えないので、世界中で電力不足になっている。一方、スペースコロニーでは太陽光発電をしている、という設定です。コロニーの中では生活の足として主に電気自動車が走っているんですが、趣味の乗り物であるバイクには内燃機関が残っていると考えました。
ただ、燃料は水素に置き換わっているイメージです。地球には石炭、石油が残っているかもしれませんが、宇宙に運ぶのはコストが見合わない。だから、キラたちが乗っているゴールドウイングはレシプロエンジンであるのは間違いない。そのためリアリティを追求するうえで、本物の水平対向6気筒エンジンの音を、ゴールドウイングを走らせて収録しています。
個人的に内燃機関は未来に絶えず残ってほしいと考えています。技術は一度途切れてしまうと、戻すことが難しいと思うので。

*「コズミック・イラ」のモビルスーツは一部を除き基本的にバッテリーによる電力で駆動している。

制作チームからの要請を受け、走行シーンのエンジン音は本田技研工業が収録に協力した

制作チームからの要請を受け、走行シーンのエンジン音は本田技研工業が収録に協力した

作中のゴールドウイングは現在のものと変わりないように見えますが、未来の世界にあるバイクを考えたとき、こんな機能があったらと思うものはありますか?

福田:

とにかく「倒れないバイク」じゃないですか? バイクって楽しい乗り物ですが、ちょっとハードルが高くないですか? でも本来バイクは生活に根ざした乗り物であるとも思うんです。だから、体力や年齢に限らずそこがサポートされると、バイクはもっと普及するはず。これからはAI技術もありますし、どんどんデータを集めていけば、運転する人のレベルにあわせて制御の内容を変えていくこともできるでしょうし。

福田監督は1975年に世に出た初代ゴールドウイング「GL1000」(黄色い模型)もご存知だった

福田監督は1975年に世に出た初代ゴールドウイング「GL1000」(黄色い模型)もご存知だった

ゴールドウイングは「最高のデートバイク」

ここまでのお話でバイクへのこだわりがヒシヒシと感じられましたが、福田監督ご自身にとって、バイクを好きになる原体験は何だったのでしょう?

福田:

僕らの世代だとバイクという乗り物を初めて意識するのって、子どものころに観たTVの特撮ヒーローですよね。それに当時、周りの大人たちはバイクに乗っている人が多くて、身近に感じていたと思います。あとはマンガの影響……世代的に『バリバリ伝説』ですね。

これまでどのようなバイクに乗ってきたのでしょうか?

福田:

若いうちはクルマが買えないからバイクに乗っていたというのもありましたが、本格的にスクーター以外のバイクに乗るようになったのは、50歳を過ぎて大型二輪免許を取ってからですね。NC700、NC750、X-ADVに乗って、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の制作が佳境になったつい最近、Rebel 1100を買ってしまいました。今日もそうですが、スタジオにはほとんど毎日バイクで通っています。

2020年に発売したRebel 1100(必ずしも福田監督の機種・カラーと同じではありません)

2020年に発売したRebel 1100(必ずしも福田監督の機種・カラーと同じではありません)

愛車遍歴を聞いて福田監督がかなりのホンダファンだったことが明らかになったわけですが、数あるバイクのなかから、キラ・ヤマトの愛車としてゴールドウイングを選んだ理由を教えてください。

福田:

ゴールドウイングは一度だけ乗ったことがあるんですが、車重が400kgくらいあるのに、意外と取り回しや旋回性がいい。エンジンは吹け上がりがいいのに静かで下手なクルマより振動が無いし、乗っていて心地いい。オーディオの音質もすごいですよね。
あと、何より後席がめちゃくちゃ快適。時間がない若いカップルが2人の時間を楽しむのに最高のバイクだと思ったんです。トランクにサイドケースと荷物を入れるスペースも十分にあるから、テントやお弁当を詰めたバスケットも持っていけるわけです。

*劇中、キラとラクスは国際機関の高官として多忙な日々を送っている。

人物との対比もあり、アニメーションでバイクを描くのは「乗り物として様にするのが難しい」という

人物との対比もあり、アニメーションでバイクを描くのは「乗り物として様にするのが難しい」という

ゴールドウイングの走行場面は作画枚数に換算すると約300枚となったそう

ゴールドウイングの走行場面は作画枚数に換算すると約300枚となったそう

バイクを描くのはモビルスーツより難しい!?

モビルスーツをはじめとして劇中にはたくさんのメカが登場しますが、アニメーションでバイクを表現するのは難しいのでしょうか?

福田:

はっきり言って、バイクは描きづらいです。圧倒的に線が多いのと、立体面が複雑で。下手するとモビルスーツ1機描くより、手間がかかるかもしれません。なのでHondaさんに「ゴールドウイングのCADデータいただけませんか?」と言ってしまったくらい(笑)。
結局それは実現しなかったので、ゴールドウイングの絵は走っているシーン含め、しっかりコチラで起こしています。

「ダブルウィッシュボーンサスペンションもゴールドウイングの好きなポイント」と福田監督。劇中でも忠実に描かれている

「ダブルウィッシュボーンサスペンションもゴールドウイングの好きなポイント」と福田監督。劇中でも忠実に描かれている

キラの自室に貼られた思い出の写真。その中の1枚にはHAWK 11にまたがるラクスの姿が

キラの自室に貼られた思い出の写真。その中の1枚にはHAWK 11にまたがるラクスの姿が

最後に、福田監督は「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」以外にも多くのロボットアニメを手掛けていらっしゃいますが、やはりそうしたロボットやメカとバイクに通ずる要素はあるのでしょうか?

福田:

基本的に、昔からロボットアニメの主人公はみんなバイクに乗ってきたんですよ。それに、ロボットやメカが好きな人は、乗り物も好きだと思います。どちらも「機械」って呼べるもので、動く理屈が見てわかるもの。特にバイクはサスペンションやブレーキ、配線などが見えているじゃないですか。そうしたところは自分でチェックできるし、洗車機に入れるわけにいかないから洗車も自分でする。愛着が出ますよね。クルマより身近に感じられるツールというか、人が主役の乗り物という感覚が強いと思います。
ちなみにラクスがバイク(HAWK 11)にまたがっている写真が出てくるんですが、あれは彼女のバイクが納車されたときに撮ったものというイメージです。ラクスもバイクに乗るという設定を先に作ったことで、最終決戦で彼女が乗るメカのコクピットをバイク型にしようとアイディアを思いついたんです。

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』

C.E.(コズミック・イラ)――遺伝子を調整し、生まれながらにして優れた身体能力や頭脳を持つ人類(コーディネイター)と自然のままに生まれた人類(ナチュラル)が存在する時代。「機動戦士ガンダムSEED シリーズ」は、このC.E.を舞台にコーディネイターとナチュラルの間の戦いを描いた作品。
C.E.71〜を描いた『機動戦士ガンダムSEED』(2002〜2003年TV放送)、C.E.73〜を描いた『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』(2004〜2005年TV放送)に続き、C.E.75を完全新作ストーリーで描いたファン待望の劇場版。2024年1月26日から日本全国で上映開始。56の国と地域で順次公開予定。

C.E.75、戦いはまだ続いていた。

独立運動、ブルーコスモスによる侵攻……
事態を沈静化するべく、ラクスを初代総裁とする世界平和監視機構・コンパスが創設され、キラたちはその一員として各地の戦闘に介入する。

そんな折、新興国・ファウンデーション王国から、ブルーコスモス本拠地への合同作戦を提案される。

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