CB Stories
フェアリング標準装備の走り
日本初の750ccフェアリング・ロードスポーツ

今では多くの市販車ロードモデルに標準装備されているフェアリングですが、日本においては長らく規制されていました。1980年代前半頃は社会的にスピード違反が取りざたされており、風洞実験などの研究にもとづいて設計されたフェアリングは「スピードを出すことを助長する」として禁止されていたのです。
一方欧州では、多くの市販のロードスポーツバイクにフェアリングが標準装備されていました。Hondaも1981年にCB900Fにフェアリングを装備したCB900F2 BOL DO’R (ボルドール)を発売しました。このフェアリングはハイスピードを出すために用意したパーツではありません。ライダーへの走行風を整流することで、疲労を軽減し快適なツーリングに寄与する効果がありました。

1981年 CB900F2 BOL DO’R (欧州仕様)
より快適なツーリングを楽しむことができる装備による効果を、日本のライダーにも体感して欲しいという願いをHondaの開発陣は胸に抱いていました。
そこで1981年、鈴鹿8時間耐久ロードレースで勝利したHondaは、優勝記念モデルとしてCB750F BOL D’OR 2を限定販売しました。標準装備ではなくディーラーオプションとしてフェアリングを用意。これはCB900F2 BOL D’ORのフェアリングをベースとしたものでした。

1981年 CB750F BOL D’OR 2
左上の写真が、ディーラーオプションのフェアリングを装着した状態
資料協力:東京エディターズ
そんな中、日本でもようやくロードスポーツのフェアリング機能に対する正しい認識が得られるようになり、標準装備のフェアリングが認可されました。
そこでHondaは1982年7月、日本で初めてフェアリングを標準装備したCBX400F インテグラを発売しました。
このモデルに採用されたのは、ハーフタイプの車体と一体化したフェアリングでした。スクリーン部は、通常の乗車姿勢でもライダーが風の影響を受けにくいよう上端を立てて、走行中の風の流れをスムーズにライダー上方に流すアップ型を採用しました。

1982年7月発売 CBX400F インテグラ
CBX400F インテグラにつづき、同年8月にCB750F インテグラを発売しました。日本で2番目となるフェアリング標準装備車です。
スクリーンはCBX400F インテグラと同様に、上端を立てたアップ型にしています。なお、フェアリングにはレッグシールドを採用することで、足元の走行風にも対応しました。
Hondaは、こうした車体と一体化(インテグレート)されたフェアリングを標準装備したモデルに「インテグラ」の名称を与え、その後も次々と世にインテグラシリーズのバイクを送り出しました。


1982年制作のカタログ

スピードメーターの上部に時計を、タコメーター上部にはバッテリーの充電状態を確認できるボルトメーターを採用
(写真は1982年のCB900F2。時計、ボルトメーター以外の仕様はCB750F インテグラとは異なる)
CB750F インテグラの登場以降、各メーカーからフェアリングを標準装備したモデルが続々と誕生しました。
インテグラシリーズ(日本)

1982年10月発売 CBX550 インテグラ
CBX400F インテグラと同じくハーフタイプのフェアリングを装備

1983年6月発売 VT250F インテグラ
水冷・4ストローク・V型2気筒エンジンを搭載したVT250Fにフルフェアリングを装備

1983年6月発売 MBX80 インテグラ
水冷・2ストローク単気筒80ccのMBX80がベース。インテグラシリーズ最小排気量

1984年1月 VF400F インテグラ
水冷・4ストローク・V型4気筒のVF400Fにフルフェアリングを装備