CB Stories
「ヒラリ、ヒラリ」の走りを実現した
CB初の250cc単気筒ロードスポーツ

Hondaの250ccロードスポーツは、1960年に登場したドリームCB72 スーパースポーツから20年にわたり、4ストローク直列2気筒エンジンを搭載していました。
またフレームについては、Hondaは250cc独自の車体を開発することがしばらくの間ありませんでした。これは日本における250ccモデルが、車検制度が無い経済的なクラスとして高い人気を誇っていたことに関係します。大型バイクのエントリーモデルにもなる250ccのバイクをお客様に安価で届けるために、より大きな排気量を前提に開発した車体を再活用することが多かったのです。
たとえば1968年のドリームCB250は、上級モデルのドリームCB350と共通の車体を採用。HAWKシリーズも例外ではなく、250Tと400Tの車体サイズはほぼ同じで、車両重量も400Tの181kgに対して250Tは178kgと同等レベルでした。
このようにロードスポーツの250ccクラスにおいては開発や製造コストの上昇を抑えるために、専用設計はごくわずかでした。
一方、オン・オフロードモデルは軽量であることと扱いやすさが求められるため、250ccにおいても専用に開発したモデルが人気でした。
1978年に発売したXL250Sは、徹底的に軽量化を追求し、新開発のエンジンと車体の採用で大ヒットモデルとなり、250ccクラスの人気に拍車がかかりました。

1978年 XL250S
新開発の4ストローク・OHC・4バルブ単気筒エンジンを搭載
このような背景から、ロードスポーツにおいても250cc専用設計のモデルを求める声が大きくなりました。その声に応えるために世に出されたのが、CB250RSです。
エンジンもフレームも専用設計を基本としたCB250RSは、“simple is best”を開発思想とし、軽量とスリムさを徹底的に追求しました。XL250Sで定評のある単気筒エンジンをダイヤモンドフレームに搭載し、始動方式はキックだけにするなど、各部で思い切った軽量化を図ったのです。
この結果、車両重量は2気筒のHAWK CB250Tの178kgに対して39kg軽い139kgとなりました。
軽量化は軽快な走りに大きく寄与しました。開発メンバーは、ライダーが自分の意志で自由にコントロールできるスポーツ車を「ヒラリ、ヒラリ」という言葉で表現していました。CB250RSは、軽量で充分なパフォーマンスをもち、軽快なハンドリング、重心位置の集中、深いバンク角などにより、まさに「ヒラリ、ヒラリ」という走り味を実現したのです。
こうしてCB250RSは、CBシリーズとして初めて単気筒エンジンを搭載した250ccロードスポーツとして誕生しました。




1980年制作のカタログより
タンク、サイドカバー、リアカウルを一体化し、流れるようなスピード感あふれるインテグレーテッド・ストリームラインを採用。バランサーを搭載したエンジンは、単気筒特有の振動を低減し、快適な走行フィーリングを実現。
CBシリーズの250ccクラスの変遷 日本仕様
1981年 CB250RS-Zをタイプ追加
CB250RSは、軽量で足着き性にも優れていたため、女性ライダーにも支持されました。セルで簡単に始動できるZタイプを追加しました。

1983年 CBX250RS 新エンジンを搭載し名称を変更
CB250RSの軽量・スリムな単気筒ロードスポーツの基本を継承しながら、新開発のエンジンを搭載。4ストローク・DOHC・RFVC(Radial Four Valve Combustion Chamber放射状4バルブ方式燃焼室)というHonda独自技術を駆使したエンジンは、最高出力30PSを誇る高性能を発揮しました。

1985年 CBX250S 最も軽量な250ccロードスポーツを発売
取り回しやすさを追求した軽量・コンパクト設計で、乾燥重量は115kgを達成しました。エンジンはRFVCを継承しています。

このように変遷を重ねて市場に出つづけたCB250RSでしたが、1982年に登場したV型2気筒エンジンのVT250Fが、Hondaの4ストローク250ccにおける圧倒的人気モデルになりました。
このVTシリーズの人気も影響しCBシリーズの250ccモデルの再登場は、2008年のCB223Sまで長く待たなければならない状況となったのでした。
※1980年 CB250RSの走行動画です