CB Stories
CBシリーズ最小排気量のスーパースポーツ

若者たちにとって50ccのモデルは、エントリーバイクとして広く愛用されてきました。
Hondaの50ccスポーツモデルのルーツは、1960年発売のスポーツカブ 110まで遡ります。エンジンは、スーパーカブで定評の4ストローク・OHV単気筒で、最高出力は5PSを発揮しました。スポーティーなスタイリングで高い人気を誇りました。

1960年 スポーツカブ 110
1967年には、さらに精悍さを増したベンリイ SS50を発売。このSS50には、スーパーカブシリーズの4ストローク・OHC単気筒エンジンを搭載し、クラス初の5速ミッションを採用しました。
SS50のフレームは、ビジネス車のCD50と共通のプレスバックボーンタイプを採用していました。ライバル他社の50ccロードスポーツもこのようなバックボーンフレームを採用していますが、エンジンに大きな違いがありました。
Hondaの50ccは4ストロークエンジン。耐久性や燃費で高い性能を生み出してきました。一方他社の50ccは2ストローク。機構の特徴を生かした開発が進み、最高出力や加速力において、SS50に匹敵するバイクが出てきたのです。こうして1960年代には、2ストロークエンジンの高性能化によってHondaの絶対的な優位性に影が差すようになってきました。
このような背景から、Honda内で1970年代にふさわしい新感覚のロードスポーツが求められ、登場したのがベンリイ CB50です。

ベンリイ CB50
ベンリイ CB50は、SS50の後継モデルでありながらエンジンもフレームも新設計。
4ストロークエンジンは、1970年発売のCB90と同じく直立タイプとし、マフラーは他のCBシリーズと同じダウンタイプのメガホンマフラーを採用しました。
フレームは、軽快でスポーティーなスタイリングにも寄与するパイプ構成のダイヤモンドタイプを採用しました。パイプ構成のフレームは、他社の50ccロードスポーツにも大きな影響を与えました。
またロング形状のタンクやクラス初採用のタコメーター(回転計)など、当時の若い人たちが憧れを抱くスタイリングと装備を備えました。
こうしたスタイリングのカッコよさと、上級機種のCB90と同じ高性能の直立エンジンの採用によって、たちまち人気モデルになりました。
1971年 ベンリイ CB50のカタログ
車体色と同じカラーリングのヘルメットを純正用品としてPR。当時の日本では、二輪車乗車時のヘルメット着用規制は無かったが、CB50にはCB500 FOURに続いてヘルメットホルダーを装備するなど、車両装備やPR面でヘルメットの着用を積極的に推進した
1973年、スポーティーなシートカウルを装備し、フロントにメカニカルタイプのディスクブレーキを装備したベンリイ CB50JXをタイプ追加しました。
1976年発売のベンリイCB50JX-Iでは、タンク形状やシートカウル、フロントフェンダーなどを変更し、さらに熟成が図られました。
ベンリイ CB50は、1981に発表されたモデルが最終となりました。1971年の発売から10年以上にわたり、若者たちのバイクライフを支えたロングセラーモデルになりました。

1981年 CB50S CB50の最終モデル ※このモデルにはベンリイがつきません
もう1台のCB50
1980年代前期にCB50の販売が終了しました。50ccのロードスポーツはその後、1982年に登場した水冷2ストロークエンジン搭載のMBX50が継承していきます。
1980年代から1990年代のHondaのスポーツモデルは、小排気量帯は2ストローク、大排気量帯は4ストロークという棲み分けがある程度出来ていました。
そのような中、1996年に開催された東京モーターショーに、世界最小の4ストローク・DOHC単気筒50ccエンジンを搭載したドリーム50が参考出品されると、驚きの反響と同時に発売を望む声が高まりました。その反響を受けて、翌1997年に夢のようなハイメカニズムと1960年代のレーシングマシンをほうふつとさせるスタイリングのドリーム50が発売されました。
製品名はドリーム50ですが、Honda社内の機種呼称はCB50と名付けられました。
CB50の名称は、4ストロークエンジンにこだわる人たちによって、16年後に引き継がれたのでした。

1997年 ドリーム50